著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.101-103, 1987

During the period between 1968 and 1987 there were 27 records of <i>Nyctea scandiaca</i> from Hokkaido, northerhmost island of Japan. Some of them were observed in summers. More birds were recorded in 1977 and 1983-84 than in other years. In 198344 more owls wintered also in Kamchatska. These facts suggest that a part of owls wintering in Kamchatska and Hokkaido in 1983-84 remained there in 1984.
著者
藤巻 裕蔵
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1-6, 2010

1976〜2009年の4月下旬〜7月上旬(高標高地では7月下旬)に北海道中部・南東部の823区画(5km×4.5km),調査路928か所でシジュウカラとゴジュウカラの生息状況を調べた.シジュウカラが出現したのはそれぞれ505区画(61%),548か所(59%),ゴジュウカラが出現したのは333区画(40%),359か所(39%)であった.シジュウカラの生息環境別の出現率は常緑針葉樹林53%,針広混交林52%,落葉広葉樹林77%,カラマツ林71%,農耕地・林68%,農耕地43%で,住宅地71%であった.ゴジュウカラの出現率はそれぞれ67,63,60,50,33,16,14%であった.標高別の出現率はシジュウカラについては200m以下では60%,201〜400mでは65%,401〜600mでは61%,601〜800mでは40%,801m以上では12%,ゴジュウカラについてはそれぞれ33,47,68,36,24%であった.調査路2km当たりの平均観察個体数は,シジュウカラでは常緑針葉樹林0.5±0.5(平均値±標準偏差),針広混交林0.8±1.1,落葉広葉樹林1.0±1.1,カラマツ林1.0±1.1,農耕地・林0.8±1.2,農耕地0.3±0.8,住宅地0.8±0.8.ゴジュウカラではそれぞれ0.5±0.9,0.6±0.9,0.5±0.9,0.1±0.3,0.2±0.4,0.04±0.23,0.03±0.17であった.
著者
笹岡 久美子 藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.25-32, 1990

1) 1987&bull;88年に人工飼料によりエゾライチョウ幼鳥を飼育し,摂食量,成長,生存率を調べた.<br>2) 飼料の成分組成は幼鳥の成長に伴って変化し,粗蛋白9.5-21.0%,粗脂肪2.1-17.2%,粗繊維1.5-4.8%で,総エネルギーは2,034-3,881kcal/kgであった.<br>3) 摂食量は乾重で2日齢の1.5g/日/羽から46日齢の24.8g/日/羽まで増加し,50日齢以降は平均22.1g/日/羽であった.<br>4) ふ化直後の体重は11.4gで,98日齢で300g近くなった.大きさは40日齢ころまでにほぼ成鳥と同じくらいになった.<br>5) 日齢(X)と体重に対する摂食乾重量(Y)との間にはY=-0.0941+15.34の関係が見られた.<br>6) 生存率は35日齢で90%,112日齢で65%で,42日齢以降の主な死亡要因はアスペルギルス症と腹膜炎であった.<br>7) 摂食量にもとづいて,エゾライチョウ幼鳥用の飼料給与表を作成した.
著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.37-38, 1988

The White Stork <i>Ciconia ciconia boyciana</i> has ceased to breed in Japan since 1965. However, between 1972 and 1988 there were 23 records of wintering or migrant storks from Hokkaido, northernmost island of Japan. Some of these records may probably represent the same individuals. Thus, at least 12 birds have occurred in Hokkaido since 1972. Although this species also sporadically occurs in Honshu southwards, there is no evidence that the birds observed in Hokkaido flew from the south through Honshu.
著者
藤巻 裕蔵 羽田 恭子 百武 充 松岡 茂 柳沢 信雄
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.24, no.97, pp.63-65, 1975

According to the Checklist of Japanese Birds (fifth and revised edition) published in 1974 <i>Accipiter nisus</i> is a common summer visitor in Hokkaido. However, <i>A. nisus</i> has been occasionally observed in winter in different areas of Hokkaido. As part of avifaunal studies at Tomakomai (Tomakomai Experiment Forest of the Hokkaido University), Bibai, Sapporo and Ebetsu (Nopporo Forest Park), data were obtained on occurrences of <i>A. nisus</i> from November to March of next year. Study areas were covered with snow from early December to mid-March. A total of 50 birds were recorded. In most cases they were seen flying above residental of wooded areas. On rare occasions birds were seen attempting to catch <i>Parus major</i> or <i>Turdus naumanni</i>. Based on information derived from the present study and reports published previously, <i>A. nisus</i> observed in winter is not late remaining or early arrived birds, but wintering ones.
著者
藤巻 裕蔵 羽田 恭子
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.276-281, 1976

日本鳥類目録(第5版)によると,北海道でヘラシギが記録されているのは函館だけである。しかし,われわれは石狩と鵡川におけるシギ&bull;チドリ類の観察で,これまでにヘラシギを9回記録した。またこれ以外にもいく例かの観察記録もある。さらに北海道大学付属博物館に保管されているヘラシギの標本20個体中13個体は北海道(石狩,小樽内川,銭函,勇払,浜中)で採集されたものである。<br>これらの記録から,北海道におけるヘラシギの渡りは秋,とくに9月に多く,春には極めて少ないといえよう。<br>なお同博物館に保管されているブラキストン標本中の2個体のヘラシギはYamashinaほか(1932)によって報告されており,その採集地はそれぞれ&lceil;Yufutsu&rceil;と&lceil;Hakodate&rceil;となっている。しかし一方の標本につけられているラベルのうち,一番最初につけられたと思われるものには採集地が&lceil;Hamanaka,E.Yezo&rceil;(浜中)と記されていた。したがって&lceil;Hakodate&rceil;は&lceil;Hamanaka&rceil;の誤りであろうと考えられる。
著者
馬場 芳之 藤巻 裕蔵 小池 裕子
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.47-60, 1999
被引用文献数
3

日本産エゾライチョウの遺伝的多様性と系統関係を調べるためにミドコンドリアDNAコントロール領域レフトドメイン428bpの塩基配列を決定した.塩基配列の決定に用いた試料は北海道産126試料,ヨーロッパ-ボヘミア産2試料,ロシア-マガダン産11試料の計139試料であった.塩基配列の比較の結果32ヵ所の塩基置換部位が検出され47個のハプロタイプに分別された.<br>エゾライチョウの47のハプロタイプにミヤマライチョウをアウターグループとして加え,近隣接合法による系統樹を作成したところ,種内の差異の検定値が低く,エゾライチョウが全体に連続した大きなクラスターを形成していることが示された.さらに実際の塩基置換部位を介してつなぐネットワーク分析を行ったところ,北海道内のハプロタイプはそのほとんどが1塩基置換で他のハプロタイプとつながっており,ハプロタイプのつながりがよく保存され,最終氷期中から安定した個体群を維持していることが示された.<br>系統樹から推測されるエゾライチョウの分岐時期は,約4万年前と推測され,北海道のエゾライチョウは系統樹で示され,系統が地域間で重複して分布していた.北海道内のエゾライチョウの地域間での遺伝的交流を調べるために,北海道を12地域に分画してそのハプロタイプの共有率を計算したところ,日高山脈と阿寒から知床半島にある1,000m以上の山地が続いている地域がエゾライチョウの移動を妨げていることが示唆された.また12地域のうち試料数が10以上の地域のハプロタイプ多様度を計算したところその全てが0.8以上の高い値を示し,遺伝的多様性が高かった.しかし近年人間活動の広がりとともに生息地の分断や減少が続いており,今後個体群の遺伝的な多様性を保持できるような個体群管理が求められる.
著者
藤巻 裕蔵
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-6, 2015

<p>1976~2014年の4月下旬~7月上旬(高標高地では~7月下旬)に北海道中部・南東部の900区画(4.5km×5km),調査路1009か所でコゲラ<i>Dendrocopos kizuki</i>とコアカゲラ<i>D. minor</i>の生息状況を調べた.出現した区画数と調査路数は,コゲラで239区画(30%),285か所(28%),コアカゲラで26区画(3%),27か所(3%)で,前者で有意に多かった.コゲラがおもに山間部に生息するのに対し,コアカゲラは平野部と平野から山間部にかけて生息する.生息環境別の出現率は,コゲラでは常緑針葉樹林で33%,針広混交林で54%,落葉広葉樹林で56%,カラマツ人工林で20%,農耕地・林で22%,農耕地で5%,住宅地で2%であった.コアカゲラでは落葉広葉樹林で1%,農耕地・林で7%,農耕地で2%で,それ以外の環境では観察されなかった.コゲラの標高別出現率は,200m以下で23%,201~400mで37%,401~600mと601~800mで50%,801m以上で14%で,コアカゲラでは200m以下で4%,201~400mで2%であった.各生息環境における2km当りの平均観察個体数は,コゲラでは0.02~0.6羽で,コアカゲラでは0.01~0.1羽と少なかった.</p>
著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.22, no.93, pp.30-32, 1973
被引用文献数
3

The nightjar, <i>Caprimulgus indicus</i>, was found incubating eggs at the young plantation of <i>Abies sachalinensis</i> at Toma-cho, Kamikawa Province on 15 June, 1971 and at the cut-over area dominated by <i>Sasa paniculata</i> at Bibai, Sorachi Province on 22 June, 1971. The clutch size was 1 and 2, respectively. In the latter case young hatched on 8 July and their development was recorded till 22 July, 15 days after hatching. Thereafter they disappeared from the nesting site. It is said that adults feigen get hurt or threaten by their queer posture when predators approach them. During the present study, however, these behaviors were rarely observed.
著者
藤巻 裕蔵
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.245-252, 1998-06

1976〜1997年の4月下旬〜6月下旬(高標高地では7月下旬)に北海道中部・南東部の調査路460か所でコムクドリとムクドリの生息状況を調べた。コムクドリとムクドリの生息環境は主に農耕地域で,一部住宅地も含み,これら2種の分布が重なる傾向が見られた。コムクドリは,いずれのタイプの森林でも観察されず,出現率は農耕地・林で19%,農耕地で20%,住宅地で14%であった。ムクドリは,森林では落葉広葉樹林だけで観察されたが,出現率は3%と低く,それ以外の環境における出現率は農耕地・林23%,農耕地36%,住宅地21%であった。両種とも標高400m以下に分布していた。調査路2km当りの観察個体数(平均値±SD)は,コムクドリでは農耕地・林0.3±0.7羽,農耕地0.3±0.9羽,住宅地0.4±0.9羽,ムクドリでは落葉広葉樹林0.1±0.4羽,農耕地・林0.7±2.8羽,農耕地1.0±2.2羽,住宅地0.3±0.9羽であった。農耕地ではコムクドリの方がムクドリより少なかったが,農耕地・林と住宅地では両種の生息状況に違いがなかった。
著者
藤巻 裕蔵 松岡 茂
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.21, no.91, pp.316-324, 1972

ウトナイト沼とその周辺で,1967~1972年の秋と冬(10月から翌年3月まで)に鳥類の観察を行なった(この調査の一部は,日本鳥類保護連盟の依頼で行なった鳥獣保護事業基本調査である)。この調査で記録した鳥類は65種である。これらの種類の季節変化を明らかにし,このうち水鳥類,ワシタカ類については個体数も調べた。またおもなものについては,種ごとに詳しい観察結果をつけ加えた。
著者
竹内 正人 大島 義広 藤巻 裕蔵
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.p157-165, 1987-06

日高山脈の中部と北部の72か所で,1978-1983年の6年間に,1,145個体のネズミ類を採集し,これらの分布について調べた。種数と捕獲指数,種多様度は高山帯の低木群落では少なくまたは小さく,低標高の森林で多くまたは高くなった。高山帯の低木群落ではヤチネズミ属のネズミ類が優占し,森林ではアカネズミ属のネズミ類が優占していた。ミヤマムクゲネズミとエゾヤチネズミは,高山帯の低木群落から低標高の森林にいたるまで捕獲されたが,湿性高山植物群落や川沿いの森林では前者が多かった。ミカドネズミは様々な環境で捕獲されたが,少なかった。ヒメネズミとエゾアカネズミは森林,とくに針葉樹林以下で多くなった。カラフトアカネズミは非常に少なかった。
著者
藤巻 裕蔵
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-6, 2014

<p>1976~2013年の4月下旬~7月上旬(高標高地では~7月下旬)に北海道中部・南東部の887区画(4.5km×5km),調査路996か所でマミジロ<i>Zoothera sibirica</i>とトラツグミ<i>Zoothera dauma</i>の分布を調べた.これらが出現した区画数と調査路数は,マミジロで45区画(5%),48か所(5%),トラツグミで260区画(29%),279か所(28%)で,後者で有意に多かった.マミジロが山地だけに生息するのに対し,トラツグミは山地と一部平野にも生息する.生息環境別の出現率は,マミジロではハイマツ林で0%,常緑針葉樹林で7%,針広混交林で21%,落葉広葉樹林で6%,農耕地・林で1%,それ以外の環境では0%であった.トラツグミではハイマツ林で0%,常緑針葉樹林で60%,針広混交林で54%,落葉広葉樹林で46%,カラマツ人工林で44%,農耕地・林で22%,農耕地で11%,住宅地で2%であった.マミジロの標高別出現率は,200m以下で1%,201~400mで7%,401~600mで17%,601~800mで25%,801m以上で17%で,トラツグミの標高別出現率はそれぞれ25,42,30,10,17%で,マミジロの方が高標高に生息する.</p>
著者
小林 茂雄 藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.57-63, 1985
被引用文献数
3

(1)帯広市岩内の落葉広葉樹天然林とカラマツ人工林で1983,1984両年の繁殖期に森林構造と鳥類群集との関係を調べた.<br>(2)天然林は多層構造をもつが,人工林は樹種,森林構造ともに単純であった.<br>(3)天然林の鳥類は21種,14.8つがいで,多様度指数は,3.300であったが,人工林ではそれぞれ12種,11.0つがい,2.084であった.<br>(4)天然林ではアオジ,ハシブトガラ,ヤブサメなど樹上で採餌し,樹洞や樹枝上で営巣する鳥類が優占し,人工林ではホオジロやウグイスなど低木や地上で採餌,営巣する鳥類が優占した.<br>(5)天然林と人工林の鳥類群集の類似度指数は,0.42であった.