著者
藤広 満智子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.43-55, 1993-02-20 (Released:2010-11-18)
参考文献数
31
被引用文献数
4 3

揖斐総合病院皮膚科外来を訪れた足白癬患者183例と正常人102例を対象に, 足からの白癬菌散布の頻度, 量, 臨床との相関を検討した.対象となった患者に, 素足で10分間表面塩化ビニール製のスリッパを着用させ, ニチバン製セロファン粘着テープでスリッパの足底の接する面全体から試料を採取し, Actidione, chloramphenicol添加ペプトングルコース寒天平板培地にて白癬菌の分離培養を行った. その結果118例 (64.5%) の白癬患者のスリッパ169個からTrichophyton rubrumまたはTrichophyton mentagrophytesが分離された. 1個のスリッパ当たりの集落数別に検討したところ, 5集落以下のスリッパが最も多く112個 (66.3%), 6~10集落22個 (13.0%), 11~15集落12個 (7.1%), 16~20集落5個 (3.0%), 21~25集落3個 (1.8%), 26~30集落6個 (3.6%) および31集落以上9個 (5.3%) であった. 菌種による散布頻度, 散布量の差は認められなかった. 散布群と非散布群間で, 病型, 原因菌種, KOH所見, 鱗屑, 小水疱, 趾間の浸軟, 〓痒, 発赤, 足底の乾燥状態および爪白癬の合併の有無に関して比較したところ, 趾間の浸軟, 足底の湿潤が散布群により多くみられた. コントロールとした正常人102例中2例のスリッパからT. mentagrophytesが各1集落分離された. また20例の足白癬患者の足底をセロテープ®で剥離し, そのセロテープ®を20%KOH処理して観察したところ, 14例 (70%) に白癬菌と思われる菌要素を確認した.
著者
藤広 満智子
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.298-302, 2007-07-15 (Released:2009-03-13)
参考文献数
2

主として仙骨部褥瘡に対し、台所用穴あきポリ袋を用いたOpen Wet-dressing Therapy (OWT) を行ったところ、褥瘡の急速な改善を認めた。方法は、褥瘡を微温湯で洗浄し、適当な大きさに切った穴あきポリ袋を貼った紙オムツをするという簡単なものである。状態に応じて、デブリートメント、抗生剤軟膏ガーゼ処置の後に行った。その特長は1) 傷が治るのに不可欠な湿潤環境を保つ、2) 穴があるので適度にドレイナージができる、3) ずれによる皮膚障害を防ぐ、4) 皮膚にテープを貼らないためテープかぶれを起こさない、5) ガーゼのような厚みがないので圧迫がない、6) 短時間に実施できる、7) 痛みが少ない、8) 感染をおこさない、9) 安価で入手が容易、ということである。すでに200例以上をこの方法で処置し、その手軽さと治癒の早さから患者、看護師の評価は高く、現在は褥瘡患者の9割をこのOWTで治療している。褥瘡報告書の転帰を集計した結果、OWT導入前78例と導入後の118例の転帰は、治癒の割合が30.8%から51.7%と有意に上昇した。当科ではこの経験から下腿潰瘍などの褥瘡以外の難治性潰瘍にもOWTを用いているが、その有用性は医療用ドレッシング材に劣らないと評価している。(オンラインのみ掲載)
著者
藤広 満智子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.46, 2006

演者は流行が確認された2002年より、東海地方の皮膚科医に協力を呼びかけ、疑わしい患者の病巣の鱗屑や毛を貼り付けたセロテープを郵送してもらい、患者の早期発見に努めてきた。その結果58例の検体が集まり、うち41例から <I>T.tonsurans</I> が分離された。そのうちわけは、男性36例、女性5例、高校生30例、中学生以下6例、大学生以上5例であった。競技別ではレスリング21例、柔道19例、柔道部員の母親1例と、レスリングが多いのが東海地方の特徴と思われた。またそのプロトコールにより、1)部内に患者がなく対外試合で感染したケースでは1週間後に発症する。2)再発の多いケースは高校3年間に4回発症を繰り返した。3)頭部白癬は丸刈りにして初めて気づく。4)体部から採取したセロテープに毛内に寄生した胞子を認めた。5)1ヶ月テルビナフィンを内服した後でも培養は陽性になる。6)柔道場の畳に長時間正座した後の下腿の病巣から分離されたのは <I>T.rubrum</I> であった。7)セロテープに貼り付けた毛は1年7か月後に培養できる。という情報を得ることができた。
著者
藤広 満智子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.191-195, 2008-07-30
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

<I>Trichophyton tonsurans</I> 感染症は,東海地方では2000年秋に岐阜県で第1例が確認され,急速に広がっている.このタイプの白癬はKOH鏡検だけでなく,真菌培養がその診断に必要である.著者はセロファン粘着テープを真菌検査に用いることを推奨し,この5年間に東海地方の皮膚科医からテープ検体を郵送してもらい,この感染症を診断している.75例すべてKOH法陽性で,うち61例から<I>T. tonsurans</I> が得られた.その内訳は,男54例,女7例,競技別では柔道32例(52%),レスリング24例(39%),相撲2例,家族・友人3例であった.年齢別では高校生46例(75%),大学生・成人9例(15%),中学生以下6例(10%),ほとんどの症例で顔面,頚部,頭部に病巣を認め,手の爪白癬例の高校レスリング部員例もあった.体部白癬からの検体の数枚に,生毛内に寄生する菌糸が認められた.今回の流行では報告されている患者は氷山の一角と考えられる.私たちは岐阜県柔道協会の医科学委員と協力し,啓蒙に努め,大会前のブラシ検査などの要望にもこたえられる体制を作りつつある.今後このシステムを継続し,<I>T. tonsurans</I> の水際での蔓延防止に役立てたいと考えている.
著者
藤広 満智子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.25-32, 1994-01-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

病院環境から白癬菌の分離を試み,その分離菌について検討した.検体の採取にはセロファン粘着テープを用い,Actidione,chloramphenicol添加ペプトンぶどう糖寒天平板培地上で培養を行った.その結果,外来患者用スリッパ,水治療法室更衣室マット,浴室の床,足拭きマットなどからTrichophyton mentagrophytes 98集落(89.9%),Trichophyton rubrum 6集落(5.5%),Microsporum canis 5集落(4.6%),Trichophyton sp. 1集落(0.9%)の計110集落の白癬菌が分離された.分離された集落数を平板数で割った数値で検討したところ,水治療法室更衣室マットと病棟浴室の床,マットが白癬菌に強く汚染されていた.また病院内での白癬菌感染の可能性を,1986年1月から1990年12月までの5年間に,入院リハビリ中に発症したと考えられた足白癬患者11人を対象に検討した.リハビリ開始から足白癬発症までの期間は7日から120日,平均45.9日であった.基礎疾患は脳血管障害3人,整形外科疾患8人であり,片麻痺の患者3人は麻痺側に病巣が認められた.菌種別患者数はT.mentagrophytes 7人,T.rubrum 1人,T.mentagrophytesとT.rubrumの連続感染2人,菌種不明1人であった.したがって公共の環境から高頻度に分類されるT.mentagrophytesは,感染源となっている可能性が高いと考えられた.
著者
藤広 満智子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.107-110, 2013 (Released:2013-06-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1