- 著者
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西原 京子
堀内 成子
内田 直
- 出版者
- (財)東京都医学研究機構
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1997
本研究では、産褥期うつ状態の母親の睡眠を知るためには、産褥期に適応している母親の睡眠の構造を検討する必要があった。適応群の睡眠の特徴は、以下のとうりである。1、産褥早期(1週から6週)では、母親の平均睡眠時間は、322分であり、睡眠率は77%と低いが、それは子供の世話による覚醒時間の増加によるもので、中等度の深さの睡眠が減少するが、深い睡眠やREM睡眠は減少せず、効率のよい睡眠をとっていることが明確となった。さらに、母親の中途の覚醒は、子供の動きとよく同期していた。2、子供の概日睡眠覚醒リズムができる9,12週では、Interrupted sleepとNon-interrupted sleepが存在した。、Interrupted sleepは、産褥早期の睡眠に類似するが、Non-interrupted sleepは、非妊娠女性と比べると大差がなく、むしろ深い睡眠が増加し、Interrupted sleepからくる断眠の回復睡眠をとっていた。すなわち適応している産褥婦は、眠れる時には良質の睡眠をとっていた。一方、産褥期うつ状態の生理学的研究は、症状が出ている時に患者から同意を得ることは、かなり困難であったが、睡眠ポリグラフィで1名、アクティグラフィで1名の協力を得られた。共通の知見として、第1点は、眠っていても睡眠の自覚的評価は低いこと、2点目は、子供の動きへの対応が遅いことであった。これらの所見は、例数が少ないので今後さらに例数を増やして検討する予定である。本研究でもう少し睡眠ポリグラフィに協力を願えるかと推測したが状況は厳しく、途中より方法を検討した結果、actiwatchを母子に装着する方が簡易で、被験者の協力を得ることができた。アクティグラフィが、今後、産褥期うつ状態の精神生理学的研究の有力な武器になるであろう。