著者
西山 友貴
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.25-27, 2007-03-20 (Released:2010-12-08)
参考文献数
11

航空機内でドクターコールを4同経験した。 (1) 70歳代の男性, トイレで気分不良となる。便通が迷走神経反射を誘発, 脱水が加わり起立性低血圧, 徐脈になったと判断。機内にペンライトがなかった。 (2) 60歳代の男性, 意識低下, チェーンストークス様呼吸, 縮瞳, 脈拍触知不能, 直ちに心肺蘇生行うも反応しなかった。気管挿管の道具無く, 客室乗務員の補助も得られなかった。 (3) 15-20歳のアジア系女性の呼吸困難と不穏, ヒステリーによる過呼吸症候群と判断。 (4) 40-50歳の日本人男性の気分不良。脱水と気圧低下によるものと判断。これらの症例を経験し, 医師は要請に応じるべきであり, 客室乗務員のさらなる訓練, 教育が必要と思われた。
著者
西山 友貴
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生: 日本蘇生学会雑誌 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.19-20, 2018

<p>麻酔導入時や緊急気道確保時にはマスクで用手換気する必要があるが,患者が義歯を外した場合や,患者の顔の形状1)によっては,漏れが生じて換気困難となる場合がある。特に顔面の手術後の場合は換気困難となりやすい2)。さらに患者の体格によってマスクのサイズを使い分けなければならない。近年,麻酔用マスクはクッション部分に空気を注入して顔面に密着させる形状のものが主流となっている。これらはクッション部分の材質,形状などが異なり密着性に差がある3, 4, 5)。Nandalanら3)は歴史が長い再利用可能な黒いゴム製の空気注入クッション部分を有するマスク(従来のゴム製マスク)がクッション部分にポリ塩化ビニルなどを使用した使い捨てマスクより漏れが少なく換気しやすいと報告している。一方,使い捨てのマスク,再利用可能なマスク4種類の間でインターサージカル社製使い捨てマスクが最も漏れが少ないという報告もある4)。Ballら5)も従来のゴム製マスクよりインターサージカル社製使い捨てマスクで漏れが少ない結果を得ている。今回,クッション部分を空気注入するカフ状から空気を入れない一枚ものの形状にしたマスク(クアドラライト麻酔用マスクTM,インターサージカル社,英国,図1)を使用する機会を得た。これは以前用いていた黒いゴム製の硬いクッション部分を有するマスクに近い形状であるが,このクッション部分にI-gelTMの先端部分と同じ熱可塑性エラストマーを用いている。クアドラライト麻酔用マスクTMは他のマスク同様1(最小)から4(最大)まで4サイズあり,今回,サイズ3(幅約108mm,縦約81mm,高さ約70mm)のマスクを2017年3月1日から5月31日まで著者自身が行った全身麻酔症例全症例に連続使用した。すべて整形外科症例で,年齢平均71歳(範囲15歳-89歳),男21例,女45例の計66例,身長156cm(134cm-182cm),体重58歳(37.4kg-89kg),Body Mass Indexは24.1 kg・m-2(15.9kg・m-2-42.7kg・m-2),総義歯15例(全例術前に取り外し),部分入義歯24例(2例以外は術前に取り外し),義歯なし27例であった。マスクは市販品であり,介入研究は行っておらず,当院倫理委員会の承認を得ており,患者のデータ使用に関する承諾は麻酔の承諾時に得ている。今回の連続した66例すべて酸素6L/分で換気を行ったが,漏れ(マスクと顔の間からの漏れ,バックのふくらみの減少)によりマスク換気が困難であった症例は1例もなく,すべてサイズ3のマスクで顔面の形によく合い換気は容易だった。従来のクッションに空気注入するタイプのマスクでは多くが女性にサイズ3,男性にサイズ4を用い,さらに漏れが生じて換気困難になる症例を経験していた。今回用いたクアドラライト麻酔用マスクTMではサイズ3のみで漏れを生じず,女性,男性を含め幅広い患者に適応できると考えられた。このため,特に緊急時の気道確保で,患者によってマスクを選択する時間が省け,とりあえずサイズ3のマスクを用意しておけば幅広い症例に緊急対応可能となるので有用と考えられた。従来の黒いゴム製の硬いクッション部分を有するマスクはクッション部分が硬く顔面の形状に合わないことも多かった。クアドラライト麻酔用マスクTMは形状がそのマスクに似ていることから敬遠されがちであるが,クッション部分の材質が熱可塑性エラストマーであるために,顔面の形に合いやすい。今回の使用経験から,クアドラライト麻酔用マスクは麻酔導入時の換気,緊急時の気道確保時に,1サイズのマスクで幅広い症例に対応でき,漏れを生じることが少なく,有用である可能性が考えられた。</p>
著者
西山 友貴
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.12, 2017-04-01 (Released:2017-04-08)
参考文献数
16

4年間の集中治療記録から,成人の脳挫傷,脳出血に対する手術後初回痙攣発作時にミダゾラムを投与した症例を抽出し,ミダゾラムの痙攣抑制効果を調査した。28例の痙攣発作時にミダゾラム静注を行い痙攣が消失した。4例でフェノバルビタール筋注が,8例でチアミラール静注が,7例でジアゼパム静注が各々無効,ミダゾラムで痙攣が消失した。3例でミダゾラム静注が無効,チアミラールで痙攣が消失した。ミダゾラム単独投与では昇圧薬を必要とする循環抑制は生じなかった。以上からミダゾラム静注は脳挫傷,脳出血手術後の痙攣抑制に有用と考えられた。
著者
宮本 純輔 西山 友貴 神田 大輔
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.428-431, 2013 (Released:2013-07-13)
参考文献数
8

腸骨筋膿瘍は敗血症などを合併する危険性があり早期診断が重要である.今回,膿瘍と反対側半身の激痛により診断に難渋した症例を経験した.症例は67歳女性,関節リウマチを有する.発熱と一時的な右臀部痛で発症,項部硬直と左半身激痛で来院した.白血球数20,600/μl,CRP 30.6mg/dlと炎症反応高値を認めたが,尿,髄液,胸部X線,胸腹部骨盤CTで異常所見を認めなかった.入院後1週間,症状の改善を認めず,再度胸腹部骨盤CT検査を行ったところ,右腸骨筋内の陰影を認めた.手術困難部位であったため,抗生剤治療を継続し膿瘍は消失,症状の改善を認めた.本症例は関節リウマチの非定型的症状と考えられる膿瘍と反対側の激しい痛みが出現したため診断に難渋した.
著者
西山 友貴 藤原 康嗣
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.163-166, 2016-03-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
19

カルベジロールとプロパフェノンの過量摂取によると考えられる心停止蘇生症例を経験した。80歳の女性が心停止で搬送された。高血圧,発作性心房細動,アルツハイマー型認知症の既往を有していた。胸骨圧迫,アドレナリン投与,人工呼吸で心拍再開したが,高度徐脈(10~20 /min)となり,アドレナリン持続投与を必要とし,一時的ペーシングを開始したが頻回に機能不全を生じた。約10時間後に徐脈は改善(70 /min)し,アドレナリン,ペーシングは不要となった。後にカルベジロール,オルメサルタン,アゼルニジピン,プロパフェノンを過量摂取したことが判明した。後日薬物血中濃度が判明したが,プロパフェノンとその代謝産物が高濃度であった。心停止,高度徐脈,ペーシング不全の原因は,カルベジロール,プロパフェノンの過量摂取と考えられた。高齢者ではプロパフェノン中毒が生じやすく心停止に至る危険性が大きい。