著者
西川 哲男 齋藤 淳 松澤 陽子 伊藤 浩子 大村 昌夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.708-710, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
3
被引用文献数
3 2 7

副腎不全は副腎から分泌されるステロイドの絶対的または相対的欠乏により発症する病態である.副腎不全は特異的な症状発現が少ない.非特異的な全身症状や精神症状,消化器症状のため見逃され易い.悪心,嘔吐,発熱といった症状は高頻度に副腎不全にみられるが急性腹症,感冒などと誤診され治療が遅れて,命を落とすことになるので充分な注意が必要である.プライマリ・ケアの日常診療でも本疾患を念頭において病歴,身体所見より誤診しないことが大切である.
著者
三宅 加奈 高士 祐一 松澤 陽子 北本 匠 櫻井 健一 齋藤 淳 大村 昌夫 西川 哲男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.714-721, 2014-09-30 (Released:2014-10-07)
参考文献数
18

症例は64歳女性.未治療のB型肝炎・肝硬変(Child-Pugh分類A)の精査時,食後数時間での低血糖症状が判明し当科紹介.HbA1c(以下NGSP値)5.7 %だが,75 gOGTTで90-120分後に高血糖と高インスリン血症,300分後に著明な低血糖(44 mg/dl)が誘発された.25 gIVGTTで5分後頂値の高血糖,10-90分後に高インスリン血症,225分後に低血糖(50 mg/dl)が誘発された.絶食時に低血糖はなく,インスリノーマの可能性は低かった.画像上脾腎シャントと肝のA-P(arterioportal,動脈門脈)シャント病変を認めた.分食とα-グルコシダーゼ阻害薬で食後高血糖と反応性低血糖は改善.【考察】本例では75 gOGTTで血糖上昇遅延及び遅延性インスリン分泌を認めた.シャント血流による血行動態変化及び肝硬変による肝での糖・インスリン代謝の変化が原因として疑われた.
著者
濱田 篤郎 奥沢 英一 川淵 靖司 西川 哲男
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.1283-1288, 1998

発展途上国在留日本人の腸管寄生虫感染状況を明らかにするため, 途上国の都市部に在住している日本人を対象に糞便の寄生虫検査を実施した. 検査の対象地域はアジア, 中近東, アフリカ, 東欧, 中南米で, 1995年の被検者数は981名, 1996年は1, 275名である.現地で採便後, 日本に持ち帰りホルマリン・エーテル法で検査を行った.<BR>その結果, 腸管寄生虫感染率は1995年3.0%(29名), 1996年2.4%(30名) であった.地域別ではアフリカ (1995年5.7%, 1996年4.7%), アジア (1995年3.8%, 1996年3.0%) の在留日本人で感染率が高く, 中近東, 東欧, 中南米で低かった.検出された寄生虫種では, Giardia, lambliaが計17例と最も多く, <I>Trichuris trichiura</I>14例, <I>Ascaris lumbricoides</I> 11例, <I>Heterophyes heterophyes</I> 7例と続いている.年齢別では小児よりも成人の方が感染率は高く, また滞在期間が長くなるほど感染率は高い傾向にあった.腸管寄生虫感染者のうち, 消化器症状を訴える者は36.8%と比較的高率であった.さらに, 感染者の既往疾患として, 胃十二指腸疾患をもつ者が28.1%に認められた.<BR>途上国在留日本人の腸管寄生虫感染率は, 現地の住民に比べると低い数値であるが, 日本国内居住者に比べると高率であり, 今後も腸管寄生虫感染予防のため一層の努力が必要である.