著者
櫻井 健一 片山 恵里 茂手木 宏美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.323-328, 2015-05-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
20

症例は72歳女性.2型糖尿病経過中にシタグリプチン50 mgを開始し,血糖コントロール良好(HbA1c5 %台)となるも,その後低血糖と思われる症状が出現した.数日間の体調不良・食思不振の後,低血糖性昏睡(血糖値31 mg/dl)にて入院となった.この時の血清インスリンが9.24 uIU/mlと高値であり,インスリンの不適切分泌が疑われた.各種検査により,シタグリプチンとシベンゾリンの併用による薬剤性低血糖が疑われ,両薬を中止したところ低血糖は改善した.シベンゾリンは膵β細胞に対しSU薬と同様にKATPチャネルに作用し,インスリン分泌を促すことが知られている.本症例は高齢であり,腎機能障害を有しており,シタグリプチンとの併用によりインスリン分泌作用が増強したと考えられた.DPP4阻害薬をIa群抗不整脈薬と併用する際には相互作用による重症低血糖に十分留意する必要があると考えられた.
著者
松尾 定憲 天野 定雄 櫻井 健一 榎本 克久 阿部 英雄 小倉 道一
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.175-178, 2006-04-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

症例は16歳女性。15歳頃より神経性食思不振症を指摘され, 拒食と過食を繰り返していた。過食し, 通常は自ら嘔吐していたが, 来院前日過食後は嘔吐できず腹痛出現したため, 近医受診し加療目的に当科へ紹介受診となった。来院時, 腹部は著明な膨満を認め圧痛, 腹膜刺激症状を認めた。腹部単純レントゲン, 腹部CT検査では大量の残渣のため骨盤腔まで拡張した胃を認め, 少量の腹水も認めた。経鼻胃管を挿入するも内容の吸引が不十分であった。以上より急性胃拡張, 胃穿孔の疑いにて緊急手術を施行した。開腹所見としては残渣による著明な胃の拡張を認め, 広範囲に筋層の断裂を認めた。胃内容をドレナージし, 筋層の断裂は漿膜筋層縫合にて修復した。術後経過良好なため術後16日目に経口飲水開始し, 術後25日目より経口摂取開始した。その後も全身状態良好で術後32日目に退院となった。
著者
大竹 悠介 近藤 勝俊 藤田 恵美 小垣 哲也 櫻井 健一
出版者
一般社団法人 日本風力エネルギー学会
雑誌
風力エネルギー学会 論文集 (ISSN:24363952)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.23-30, 2021 (Released:2021-12-15)

A downwind turbine whose rotor surface is located on the leeward side with respect to the tower is expected to operate with high efficiency in up-flow wind. In addition, it is expected that a large amount of up-flow wind will be shown in mountainous areas that are common in Japan. Therefore, the wind conditions around the downwind turbine installed in the mountainous area were measured by Doppler LiDAR, and the wind turbine performance in the up-flow wind was evaluated. As a result, it was confirmed that the power of the wind turbine tends to improve as the flow inclination angle becomes larger and closer to the wind turbine tilt angle.
著者
金塚 東 三村 正裕 篠宮 正樹 橋本 尚武 栗林 伸一 櫻井 健一 鈴木 弘祐
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.671-680, 2012 (Released:2012-11-08)
参考文献数
15
被引用文献数
2

千葉県における日本糖尿病学会会員と専門医,日本糖尿病協会登録医および一般医による診療の実態を調査した.17病院と67診療所における専門医25名,学会員と登録医計15名,一般医50名が参加した.総症例数は3930症例,専門医はより若年,一般医はより高齢の世代を診療した(p<0.001).専門医は32 %,一般医は10 %の症例をインスリンで治療した(p<0.001).HbA1c(JDS値)6.5 %未満は,専門医で32 %,一般医で50 %である一方,8 %以上は各23 %, 11 %であった(p<0.001).2357症例(60 %)に降圧薬が処方され,専門医は39 %にアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),34 %にカルシウム(Ca)拮抗薬,一般医は各34 %, 38 %に処方した(p<0.001).アルブミン尿が未測定であった1266症例中,専門医で162症例,一般医で597症例が早期腎症診断のためアルブミン尿測定の対象となる尿蛋白-,±あるいは+であった(p<0.001).インスリン療法で専門医の役割は大きいが,多くの症例で血糖コントロールは不良であった.専門医はARB,一般医はCa拮抗薬をより多く処方した.専門医は診療している10 %,一般医は37 %の症例で早期腎症を診断するためにアルブミン尿の測定が適用と思われた.
著者
三宅 加奈 高士 祐一 松澤 陽子 北本 匠 櫻井 健一 齋藤 淳 大村 昌夫 西川 哲男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.714-721, 2014-09-30 (Released:2014-10-07)
参考文献数
18

症例は64歳女性.未治療のB型肝炎・肝硬変(Child-Pugh分類A)の精査時,食後数時間での低血糖症状が判明し当科紹介.HbA1c(以下NGSP値)5.7 %だが,75 gOGTTで90-120分後に高血糖と高インスリン血症,300分後に著明な低血糖(44 mg/dl)が誘発された.25 gIVGTTで5分後頂値の高血糖,10-90分後に高インスリン血症,225分後に低血糖(50 mg/dl)が誘発された.絶食時に低血糖はなく,インスリノーマの可能性は低かった.画像上脾腎シャントと肝のA-P(arterioportal,動脈門脈)シャント病変を認めた.分食とα-グルコシダーゼ阻害薬で食後高血糖と反応性低血糖は改善.【考察】本例では75 gOGTTで血糖上昇遅延及び遅延性インスリン分泌を認めた.シャント血流による血行動態変化及び肝硬変による肝での糖・インスリン代謝の変化が原因として疑われた.
著者
柴山 一仁 貴嶋 孝太 森丘 保典 櫻井 健一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.18120, (Released:2019-07-05)
参考文献数
19
被引用文献数
2

The present study aimed to define the phases of the 110m hurdle race and to clarify the relationship between the race pattern and performance of elite hurdlers. Seventy-six male hurdlers (groups: G1, 12.94–13.38 s, n = 24; G2, 13.40–13.68 s, n = 26; G3, 13.70–14.16 s, n = 26) participating in official competitions were videotaped using high-speed video cameras panning from start to finish (239.76 or 299.70 Hz). The landing step after hurdling was defined as the first step, and the take-off step was defined as the fourth step. The timing of each step and each interval (from touchdown on the landing step to the next landing step) were calculated. Intervals were divided into the acceleration phase (G1: from 1st to 2nd, G2 and G3: 1st), maximum velocity phase (G1: from 3rd to 5th, G2 and G3: from 2nd to 5th) and deceleration phase (G1, G2 and G3: from 6th to 9th). The results obtained were as follows: 1) Faster hurdlers sprinted with a shorter time and a larger mean interval velocity in all phases; 2) G1 had longer acceleration segments and larger acceleration from the acceleration phase to maximum velocity phase than G2 and G3 because of the larger increase in the frequency of the second step; however, deceleration from the maximum velocity phase to the deceleration phase showed no significant difference according to performance; and 3) the pattern of change in the mean interva3l velocity during the race was similar between G2 and G3. These results indicate that athletes in G2 need to improve their race pattern to achieve a larger acceleration in the 2nd interval by sprinting with a larger increase in the frequency of the second step. Improvement of the race pattern is less important for G3. Additionally, G2 and G3 need to improve their sprinting velocity to obtain a higher frequency at the fourth step.
著者
櫻井 健一 小笠原 茉衣子 芳沢 昌栄 岸田 杏子 奥山 貴文 増尾 有紀 秋山 敬 榎本 克久 天野 定雄 藤崎 滋 槙島 誠
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.179-182, 2015-08-01 (Released:2016-01-25)
参考文献数
10

リンパ節転移を伴った甲状腺微小癌を経験した.症例は68 歳,女性.甲状腺腫瘍を指摘され来院した.超音波検査で甲状腺に多発する腫瘍を認めた.穿刺吸引細胞診を施行したところ左葉の直径5 mm の腫瘤のみがClass IV の診断であった.甲状腺亜全摘術+リンパ節郭清術を施行した.病理組織診断は多発する腺腫様甲状腺腫と直径5 mm のpapillary carcinoma であり,左気管傍リンパ節に転移を認めた.微小癌の予後は良好とされるが,今後の慎重な経過観察が必要であると考えられた.
著者
鈴木 周平 櫻井 健一 安達 慶太 増尾 有紀 長島 沙樹 原 由起子 榎本 克久 天野 定雄 野田 博子
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.304-307, 2015-12-01 (Released:2016-01-25)
参考文献数
9

症例は95 歳女性.50 年前にパラフィン注入法による豊胸術が施行されていた.左乳房腫瘤を自覚して来院した.左乳房AC 領域に直径7 cm の腫瘤を触知した.針生検の結果,浸潤性乳管癌と診断された.閉塞性換気障害のため全身麻酔は危険と判断され,局所麻酔下乳房切除術を施行した.豊胸術後の乳癌は異物注入により多様な臨床像を呈すため発見が困難であり進行例が多い.患者が高齢であれば手術方法も制限される可能性もあり,豊胸術後の定期的な検査が必要であると考えられた.