著者
吉水 守 笠井 久会 西澤 豊彦 高見 生雄 大迫 典久 呉 明柱
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究で実用化を目指した「ds-RNA型」ワクチンは,申請者らが開発してきた「mRNA型」ワクチンを発展させたものであり,ds-RNA接種により産生されるインターフェロンを利用した簡便かつ実用的な魚類ウイルスに対する免疫方法である。Poly(I:C)をニジマス,マハタ,ヒラメに投与し,魚を一過性の抗ウイルス状態とし,それぞれ伝染性造血器壊死症,ウイルス性神経壊死症,ウイルス性出血性敗血症原因ウイルスで攻撃して生存率を対照と比較した。3例共にワクチン効果が確認でき,この間に養殖環境中に存在する病原ウイルスに暴露させることでウイルスに対する特異免疫を誘導することもできた。さらに実用化に向け,魚毒性の心配がない用法・容量を定めることができた。
著者
西澤 豊彦 吉水 守
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-5, 2016 (Released:2017-04-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1

Infectious hematopoietic necrosis (IHN) is a disease of salmonid fishes, mainly Oncorhynchus spp., including rainbow trout O. mykiss and Atrantic salmon Salmo salar. IHN causes serious economic losses. It was initially known as endemic in sockeye salmon fry O. nerka and chinook salmon fry O. tschawytscha in West Coast of North America since the 1950s. However, it was spread to Japan, Korea and Taiwan in the 1970s. It was spread to Italy and France in the 1990s. Currently, IHN can be found in many parts of the world, including Russia and South America. Mortality due to IHN in fish with ≤ 0.5 g of body weight can reach 60% to 100%. Mortality caused by IHN will reduces when fish grow bigger. However, the onset of IHN has also increased recently in fish with larger. Here, we describe the molecular epidemiology and virulence changes of IHN virus (IHNV) in Japan, and the detection and identification methods for IHNV. Furthermore, we will discuss the future prospects of IHNV researches.
著者
和田 新平 倉田 修 畠山 仁 山下 亜純 高木 修作 西澤 豊彦 横山 博
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.7-15, 2014-03

2008年に南西海域で養殖されていたカンパチ稚魚に,死亡を伴う疾病が発生した。病魚は左右非対称な腹部膨大と鰓の褪色を呈し,頭腎,体腎,脾臓は腫大して褪色していた。既知の主要な病原体の検出を目的とした微生物学的および分子生物学的検査の結果はすべて陰性であった。病理組織学的に,本疾病は増殖性間質性腎炎および脾炎を特徴とし,増生している単核性細胞の細胞質内に微小な類円形構造が認められた。病魚の腎臓を用いた人為感染試験で病徴が再現されたことから,本疾病は何らかの感染症であり,感染因子として微小な類円形構造が最も疑わしいと考えられ,これらは未報告の真核性微生物であることが強く示唆された。
著者
高見 生雄 粉川 愉記 西澤 豊彦 吉水 守
出版者
日本魚病学会 = Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-34, 2007-03-15
被引用文献数
2 2

Kuchijirosho (snout ulcer disease) is an infectious disease of tiger puffer Takifugu rubripes in Japan and Korea. Little is known about detailed characteristics on the causative agent of kuchijirosho, except it is a filterable agent. In the present study, kuchijirosho associated proteins (KAPs) with molecular weight of 100-120 kDa were detected in brain tissues of tiger puffer by western blot analysis with sera of tiger puffer which survived kuchijirosho, but not in the kidney or spleen tissues. Interestingly, KAPs existed in brain tissues of tiger puffer with no history of kuchijirosho, however, the KAPs were not recognized by those healthy fish sera. KAPs were fractionated in supernatant of brain tissue homogenate containing the kuchijirosho agent by ultra-centrifugation, while pathogenicity of the kuchijirosho agent was observed in the precipitated fraction rather than the supernatant. These results suggest that KAPs are not structural proteins of the kuchijirosho agent, and could be brain tissue proteins antigenically altered by infection of the kuchijirosho agent. It is also considered that the causative agent could be low in antigenicity to host fish because structural proteins of the causative agent was never recognized by host fish sera.
著者
吉水 守 田島 研一 西澤 豊彦 澤辺 智雄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

牡蠣の汚染による衛生上の問題に関しては、腸チフス等18世紀から報告があり、我が国でも1924年熊本県不知火での規模な腸チフスの発生が知られている。1950年に『食品衛生検査指針』により貝類の衛生基準が定められた。牡蠣は1日当たり2トンもの海水を吸入し、餌料生物を接種し、同時に細菌やウイルスを濃縮する。しかし清浄海水で飼育すると蓄積した細菌やウイルスを放出する。いかにして、清浄海水を確保するかに関しては、坂井(1953,1954)、河端(1953)の研究により、現在の浄化法の基礎が築かれ、広島・宮城県から全国に普及していった。平成9年5月31日付けの食品衛生法の一部改正により、食中毒原因物質として新たに小型球形ウイルスとその他のウイルスが追加された。小型球形ウイルス(SRSV;現在、ノロウイルス)は電子顕微鏡像での形態が類似する直径27〜38nの球形ウイルスの総称であり、1972年に米国オハイオ州で起きた非細菌性集団胃腸炎の患者糞便より発見されたNorwalkウイルスがその原型である。ノロウイルスは培養細胞や実験動物を使用して増殖させることが困難であり、現在行われている紫外線やオゾンを用いた循環型浄化装置では、ウイルスが不活化されていてもRT-PCR法では陽性となり、製品の出荷ができない。本研究は、牡蛎のノロウイルス浄化法を培養可能なネコカリシウイルスを代替えウイルスとして検討したものであり、得られた成果は以下のとおりである。1.電解海水を用いることにより牡蠣の大腸菌浄化が可能であることを示した。2.ネコカリシウイルス(FCV)を用いた場合、FCVは紫外線に抵抗性を示したが、海水電解水に高い感受性を示した。3.FCVは高水温下で不安定であったが、低水温下では安定であった。3.FCVは半数以上の牡蠣の消化管内容物で不活化された。4.FCVは牡蠣の脱殻条件、40℃・800気圧で90%以上不活化された。これらを組み合わせることによりカキのノロウイルス浄化は可能となると考えられる。今後はノロウイルスの感染性を評価する系を作る必要性があると改めて認識された。