著者
岡島 純子 谷 晋二 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.201-211, 2014-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
4

本研究では、通常学級に在籍し、仲間との関係がうまくもてない自閉症スペクトラム障害(ASD)児に対して社会的スキル訓練(SST)を実施し、般化効果、維持効果について検討した。その際、(1)機能的アセスメントの実施、(2)標的とされた社会的スキルに関する概念的理解を深めるために、ASDの特性に合わせた教示の実施、(3)標的とした社会的スキルを行動リハーサルする機会を十分に設定するために保護者とリハーサルをするためのホームワークを行った。機能的アセスメントから特定された標的スキルは、働きかけに反応するスキル、エントリースキル、主張性スキル、感情のコントロールスキル、問題解決スキルであり、10セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、社会的スキル得点が向上し、放課後に友達と遊びに行く割合が増え、1ヵ月後も維持していた。
著者
谷 晋二
巻号頁・発行日
1998

筑波大学博士 (心身障害学) 学位論文・平成10年7月24日授与 (乙第1429号)
著者
仲上 恭子 中鹿 直樹 谷 晋二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-025, (Released:2022-11-29)
参考文献数
14

在宅リハビリテーションでは、高齢者特有の心理状態により目標設定が不明確となっていると指摘されている。本研究では、在宅リハビリ患者に対する価値に関する介入が、生活の質と目標設定に及ぼす効果について、単一事例を通して検討した。患者は慢性腰痛を抱える男性であり、腰痛による活動性低下と、運動の拒否が生じていた。介入は、週に2回計12回の介入セッションと、2週間後のブースターセッション1回を実施した。結果、心理的柔軟性と生活の質が向上し、運動の拒否行動が減少した。価値に基づく行動として将棋を行い、痛みがあっても活動できることに気づき、運動が価値に関連づけられたことで拒否行動が低減したと考える。また、本研究では患者本人の心理的問題だけでなく、家族やリハビリ担当者との関係性とその問題を扱うことで、さらに介入の有効性を高めることができたと考えられる。
著者
谷 晋二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.147-158, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究はACTに基づく心理教育を先延ばし行動を持つ大学生に対して実施した症例報告である。成果の検討のために、先延ばししている課題の遂行状況の自己記録、GPS、AAQ-II、FFMQが用いられた。ACTの心理教育は、先延ばし行動の機能の分析と体験の回避についての学習、体験の回避を促進している言語的な関係からの脱フュージョン、体験の回避に変わる代替行動としてのマインドフルネス・エクササイズの実施、価値の明確化と価値に基づく行動の実施という四つのステップで提供された。学習会修了後、先延ばししていた課題が継続して遂行され、GPSの得点(pre: 55, post: 39, −6 points)、AAQ-II(pre: 29, post: 24, −5 points)、FFMQの得点の変化(pre: 127, post: 156, +27 points)が見られた。これらの結果について関係フレーム理論から分析を行い、先延ばし行動を持つ大学生へのACTの適用が有効であることが考えられた。初年次教育やキャリア教育への適用の可能性について議論を行った。
著者
伊藤 久志 谷 晋二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.105-115, 2011-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究は、導尿スキルの習得が困難であった特定不能の広汎性発達障害を合併する二分脊椎症の男児 に対して導尿スキル訓練を実施した事例の報告である。介入を進めるにあたって、まず課題分析を実施 し、導尿スキル訓練時には課題分析表の提示、所要時間のフィードバック、強化価の高い強化子の設定 をすることを母親に提案し、それに基づき母親が導尿スキル訓練を実施した。その結果、対象児は以下 の標的行動を習得することができた。(1)カテーテルを持って、ゼリーをつける、(2)カテーテルを チューブから抜いて、カテーテルを持つ、(3)カテーテルを尿道に入れる、(4)カテーテルを尿道の奥 まで入れる。さらに、学校では、対象児が習得した下位行動以外の部分については教師と看護師の援助 を受けることで、導尿を実行することができるようになった。考察では、「援助付き導尿の確立」と 「合併する障害の特性への配慮」という観点から検討した。
著者
谷 晋二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.97-109, 2002-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、発達障害をもつ19名の子どもの家族に早期家庭療育として、行動理論に基づく指導を実施した結果を検討した。指導は、谷(1998,2001)の方法によって行い、発達指数の変化、言語理解、言語表出領域の発達年齢の変化、言語獲得に関するチェックリスト、小児自閉症評定尺度(CARS)、および家庭療育に関するアンケートの結果をデータとして収集した。その結果、11名の子どもで基礎的な言語理解、命名、マンドが獲得され、8名の子どもでDQの上昇がみられ、そのうちの5名ではDQ 75以上を示した。言語領域では、言語理解で10か月以上の発達がみられたものが17名、言語表出では12名みられた。CARS得点が30得点を超える自閉症児群ではDQの変化とCARSとは負の相関があり、CARSの得点が高いほどDQの変化は少なくなる傾向がみられた。また、家庭での療育時間はほとんどの家庭で20時間以内であった。本研究で用いられた方法は、言語発達に関しては自閉症かどうかにかかわらず有効であるが、自閉症児の全体的な発達を促進するには不十分であると考えられた。本研究で報告した実践をもとに、早期家庭療育の重要性と家族支援のあり方について論じた。
著者
谷 晋二 大尾 弥生
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.171-182, 2011-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

ABA知識理解到達度テスト(TestofKnowledgeofAppliedBehaviorAnalysis;以下TK-ABA)を、行動論的知識を測るためのテストとして開発した。TK-ABAは行動の原理や強化、プロンプトなどの行動論的知識を問う41問の選択式テストである。行動論的知識の学習経験のない未学習群、学生群、専門家群に対してTK-ABAを実施した。すべての群間には有意な差がみられた(専門家群>学生群>未学習群)。行動論的知識の学習経験によって得点が増加すると考えられた。特別支援にかかわる教員と施設指導員17名に行動論的知識を学習する講義を実施し、実施前後のTK-ABAおよびKBPAC(Knowledge of Behavioral Principles as Applied to Children;以下KBPAC)の得点の変化を比較した。講義後に両テストともに得点が有意に増加した。TK-ABAの18の質問に対する解答が講義後に有意に変化し、KBPACの五つの質問に対する解答が変化した。これらの結果から、研修による行動論的知識の変化を測定するテストとしてTK-ABAはKBPACよりも敏感なテストであると考えられた。
著者
谷 晋二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.111-119, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
41

本論文は、特別支援分野における認知行動療法の概観と今後の課題についてまとめている。特別支援教育分野は、障害の特性や対象者の年齢によって、支援の目的や用いられる技法が異なってくるので、障害のある人への直接支援、家族支援、そして支援に関わる支援者支援という三つの領域から検討を行い、公認心理師が身につけておくべき技法や態度を要約した。次に、特別支援領域に共通すると考えられる求められる役割について述べ、最後に、この分野での期待される今後の研究について意見を述べた。
著者
岡島 純子 谷 晋二 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.201-211, 2014-09-30

本研究では、通常学級に在籍し、仲間との関係がうまくもてない自閉症スペクトラム障害(ASD)児に対して社会的スキル訓練(SST)を実施し、般化効果、維持効果について検討した。その際、(1)機能的アセスメントの実施、(2)標的とされた社会的スキルに関する概念的理解を深めるために、ASDの特性に合わせた教示の実施、(3)標的とした社会的スキルを行動リハーサルする機会を十分に設定するために保護者とリハーサルをするためのホームワークを行った。機能的アセスメントから特定された標的スキルは、働きかけに反応するスキル、エントリースキル、主張性スキル、感情のコントロールスキル、問題解決スキルであり、10セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、社会的スキル得点が向上し、放課後に友達と遊びに行く割合が増え、1ヵ月後も維持していた。
著者
谷 晋二 高木 俊一郎
出版者
大阪教育大学養護教育教室
雑誌
障害児教育研究紀要 (ISSN:03877671)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.127-138, 1984-03-31

本研究は、第1報で提起した問題の1つである保護抑制に関する実験報告である。実験は4名の自閉児を被験児として行ない、刺激に対する反応としてGSRを用いた。実験要因は、実験室要因(プレイルーム、シールドルーム)と刺激強度要因(1000Hz-80db, 1000Hz-20db)である。各実験要因のGSRに対する影響を個人内で比較したところ、4名の被験児で一貫した傾向はみられず、保護抑制の関与を推測させるものが3名あった。結果を条件反射学の立場から考察し、今後の研究の方法論についても論じた。This report is experimental report about central defensive inhibition, which is one of some works we proposed to study hereafter in our 1'st report. deffensive inhibition is preventative of exhaustion of central nerve cell. In this report, Experiment was conducted with 4 autistic children as subject, and GSR is used as measures of responses to stimuli. Experimental factors are Experimental Room Factor (playroom or sealedroom) and Stimulus Strength Factor (80 horn or 20horn). Effects, each experimental factor have upon GSRs, were compared with intra-subject. That effects were not consistent among 4 subjests. In 3 subjects, defensive inhibition was speculated, but, a kind of stimuli, caused defensive inhibition, was not same. We discussed these findings based on Pavlovian Conditioning Theory and speculated about Physiological Bases of Autism.