著者
谷 賢太朗 伊藤 尚 前田 義信
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J98-A, no.3, pp.274-283, 2015-03-01

災害時に教室から多数の生徒が避難する場合,被害を小さくするには全員が避難を終えるまでの時間(避難完了時間)を最小にすることが重要である.そのための方法は,1)避難者自身の行動方法を変えること,2)教室の空間構造を変えること,の2点である.本研究では,前者の観点から避難者が進路を譲り合うことを考慮し,理論計算によって2人の避難者の衝突状態が解消されるまでの時間を最小にする譲り合い確率が=-1であることを示した.続いてマルチエージェントシミュレーションによる2人以上の避難者の教室からの避難について考察し,避難完了時間が最小となるのが近傍であることを示した.更に後者の観点から教室の出口の広さや数を2ヶ所に変えた場合についても調べ,避難時間が短縮されることを示した.出口の数を2ヶ所にした場合,出口間の距離が近すぎると避難時間が増加することが示唆された.
著者
伊藤 尚 前田 義信 谷 賢太朗 林 豊彦 宮川 道夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.117-130, 2012 (Released:2013-03-18)
参考文献数
12
被引用文献数
2

ジニ係数は標本間格差を評価する代表的な指標のひとつである.しかし,ジニ係数は全標本が非負であることを前提としているため,負の標本を含む標本間格差を評価することは出来ない.Chenらはこの場合でも標本間格差を評価できるようにするためジニ係数の拡張を試みた.しかし彼らの提案した拡張ジニ係数は全標本の合計が0以下である場合において標本間格差を評価することが不可能であった.そこで本論文では,負の標本を含む場合および全標本の合計が0以下の場合においても標本間格差を評価するために,ジニ係数の幾何的表現の拡張を提案する.提案された拡張ジニ係数では負の標本を含む場合および全標本の合計が0以下の場合においても標本間格差を評価することが可能であり,全標本が非負である場合において拡張ジニ係数は従来のジニ係数と一致する.さらに,拡張ジニ係数の代数的表現を検討し,得られた代数的表現から本論文で提案する拡張ジニ係数が母集団原理と拡張移転原理を満たすことを示す.
著者
浅井 愛 村山 尚紀 谷 賢太朗 前田 義信 新川 拓也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CAS, 回路とシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.377, pp.37-42, 2012-01-12

視覚障害者のQOLを向上させるための支援技術の開発が望まれている.我々は視覚障害者と晴眼者が対等に遊戯できるテーブルゲームに着目し,視覚を必要とせず音声のみでプレイできるゲーム開発を行ってきた.本稿では,居合い切りを題材とした音声出力ゲーム「The 10-1(ザトウイチ)」を用いて,視覚障害者1名と晴眼者12名を3〜4名ずつのグループに分けてプレイしてもらい,Csikszentmihalyiによって提案されたFlow State Scaleを用いてゲームへの没入感を評価した.その結果,自己目的的体験に関しては全てのプレイヤが"あてはまる"を選んだ,因子分析からは6つの因子が抽出された.そのうちの主な2つの因子は"活動への注意集中"と"統制感覚"であり,視覚障害者の因子得点は晴眼者のそれに比べて大きな値を示した.よって,視覚障害者の方が音声出力ゲームを楽しんでいた可能性が示唆された.
著者
前田 義信 伊藤 尚 谷 賢太朗 佐藤 輝空 加藤 浩介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.58, pp.63-68, 2011-05-13
参考文献数
27
被引用文献数
1

社会問題のひとつである"いじめ"は強者から弱者に対して行われる従来型の一方的な攻撃から,対等な他者との間で加害者と被害者が流動的に入れ替わる双方向の攻撃へとその性質を変容させつつある.当事者はいつ自分が被害者になるか予想することもできない不安を常に持ち,それゆえ対等な他者からの承認を常に必要とする"フラット"な関係が築かれるようになった.また流動性ゆえに,教育者をはじめとする支援者も対策に頭を悩ませている.そこではどのような事態が生じているのか?本稿では,エージェント,価値,エージェントが起こす行動,相互作用で構成される形式的な人工学級モデルを提案し,マルチエージェントシミュレーションによってその現象を調べる.相互作用を繰り返すことによって自分が見出す価値数がゼロになった経験を有するエージェント(いじめ被害者)と,他のエージェントから反感性の行動を連続的に受け続けたエージェント(いじめ被害者の候補=潜在的いじめ被害者)を定義し,その状況を調べた.その結果,交友関係における対立回避i,相補性やべき乗分布に従ういじめの特性が観察され,支援者によるいじめ発見の困難さとの関連性を考察した.