著者
黒田 潤一郎 谷水 雅治 堀 利栄 鈴木 勝彦 小川 奈々子 大河内 直彦
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.398-398, 2008

白亜紀のAptianからTuronianにかけて、海洋底に有機質泥が堆積する海洋無酸素イベントOceanic Anoxic Event (OAE)が繰り返し発生した。その中でも、前期AptianにおきたOAE-1aは汎世界的に有機質泥が堆積する最大級のOAEである。このOAE-1aの年代(約120 Ma)は地球最大の洪水玄武岩であるオントンジャワ海台の形成時期(123~119Ma)に近く、このため両者の関連が注目されてきた。オントンジャワ海台の火山活動とOAE-1aの関連を調べることで、大規模な火成活動と地球表層環境変動とのリンクを理解することができる。しかし、両者の時間的関連や因果関係について未解明の問題が多く、前者については年代学的・層序学的精査が、また後者については数値モデル実験などを用いた検討が必要である。本研究では、Aptian前期にテチス海や太平洋で堆積した遠洋性堆積物の炭素、鉛、オスミウム同位体比を測定し、OAE-1aの層準の周辺でオントンジャワ海台の形成に関連した大規模火山活動の痕跡が認められるかどうかを検討し、両者の同時性を層序学的に評価した。用いた試料はテチス海西部の遠洋性堆積物(イタリア中部ウンブリア州)、太平洋中央部の浅海遠洋性堆積物(シャツキー海台のODP198-1207Bコア)および深海遠洋性堆積物(高知県横波半島の四万十帯チャート;庵谷ほか、印刷中)の3サイトの遠洋性堆積物を使用した。これら3サイトにおいて、微化石および炭素同位体比変曲線からOAE-1aの層準を正確に見出した。横波半島の四万十帯チャートは、OAE-1aのインターバルを含む数少ない太平洋の深海底堆積物である(庵谷ほか、印刷中)。イタリアセクションのOs同位体比はOAE-1aの開始時およびその数10万年前の2回、明瞭なシフトが認められ、同位体比の低いOsの供給が増加したことが明らかになっている(Tejada et al., submitted)。特にOAE-1aの開始時に起きたOs同位体比のシフトは極めて大きく、数10万年間続くことから、オントンジャワ海台の形成に関連したマントルからの物質供給でのみ説明可能である。今回、低いOs同位体比が横波チャートにも認められることが明らかになった。先に述べたOs同位体比の変動は地球規模のものと結論付けられる。一方、海洋での滞留時間の短いPbはOsと異なり、サイト間で同位体比が異なる。イタリアのセクションでは当時のユーラシア大陸地殻に近いPb同位体比を示し、同位体比の大きな変動は認められない。これに対し、横波チャートのPb同位体比はオントンジャワ海台玄武岩の同位体比にほぼ一致し、オントンジャワからの物質供給が活発であったことを示している。シャツキー海台の堆積物のPb同位体比はイタリアセクションと横波チャートの中間的な値を示す。また、シャツキー海台の堆積物には、OAEが開まる時期にオントンジャワ海台からの物質供給が増加したことを示唆するPb同位体比の変化が認められた。このように、Pb同位体組成には当時の古地理(オントンジャワ海台からの距離、深海/浅海)に対応した違いが認められた。本発表では上記の新知見に加えて、3サイトのPb同位体比と古地理分布からオントンジャワ海台からの物質供給プロセスなどを検討する。
著者
町田 嗣樹 折橋 裕二 マルコ マニアーニ 根尾 夏紀 サマンサ アンスワース 谷水 雅治 玉木 賢策
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.318, 2011

中央インド洋海嶺の南緯20°-18°付近は、典型的な中央海嶺-ホットスポット相互作用の場所である。しかし、南緯20°から15°にかけての中央海嶺より採取された玄武岩の化学組成の変化は、レユニオンマントルプルームによる上部マントルの汚染とは関連しないことが判明した。つまり、上部マントル中のリサイクルされた過去のプレート物質が、ホットスポットからの熱によって大量に融解している場所であると解釈される。
著者
吉村 寿紘 谷水 雅治 川幡 穂高
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.24-24, 2011

本研究では,近年測定可能となったMg同位体比(δ26Mg)を用いることで,陸棚堆積物と間隙水の反応における詳細なMg 動態を解明することを目的とした。試料はIODP Exp317の掘削サイトU1351ならびにU1352で得られた間隙水と堆積物を用いた。試料は陽イオン交換樹脂を用いてMgを分離した後,多重検出器型ICP-MSでMg同位体比の測定を行った。Mg同位体比は海水標準試料IRMM BCR403に対する千分率偏差(‰)として表す。U1351の間隙水のδ26Mgは-1.8~-0.1‰,U1352は-2.2~1.0‰を示した。陸棚と陸棚斜面のプロファイルの違いは海水準変動に起因する堆積履歴の違いに由来すると考えられる。U1352の上部200mではδ26Mgが1.20‰増加し,200~350mでは1.25‰減少した。このことはコア上部200mでは有機物の分解に伴うドロマイトの沈殿反応が卓越するが,コア深度の増加に伴ってMgの除去源がドロマイトから粘土鉱物が卓越する反応に移行することを示唆する。