著者
力石 嘉人 高野 淑識 小川 奈々子 佐々木 瑶子 土屋 正史 大河内 直彦
出版者
日本有機地球化学会
雑誌
Researches in Organic Geochemistry (ISSN:13449915)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.3-11, 2011-09-30 (Released:2017-04-13)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Recent evidences have suggested that compound-specific stable isotope analysis (CSIA) of amino acids has been employed as a new powerful method with that enables the estimation of trophic level of organisms in not only aquatic but also terrestrial food webs. This CSIA approach is based on contrasting the 15N-enrichment with each trophic level between two common amino acids: glutamic acid shows significant enrichment of +8.0‰ with each trophic level, whereas phenylalanine shows little enrichment of +0.4‰. These 15N-enrichments are well consistent in both aquatic and terrestrial organisms. The trophic level of organisms can be estimated within a small error as 1σ=0.12 for aquatic and 0.17 for terrestrial food webs, employing the eq.: [Trophic level]=(δ15Nglutamic acid-δ15Nphenylalanine+β)/7.6+1, where β represents the isotopic difference between these two amino acids in primary producers (-3.4‰ for aquatic cyanobacteria and algae, +8.4‰ for terrestrial C3 higher plants, and -0.4‰ for terrestrial C4 higher plants). Here, we briefly review this new method (i.e. CSIA of amino acids) and its application to natural organisms in terrestrial environments.
著者
大河内 直彦 力石 嘉人 小川 奈々子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.430-434, 2012-06-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
15

生体中に含まれるアミノ酸の窒素安定同位体比を精密に測定することによって,自然界に暮らす生き物の栄養段階を推定する方法が開発された.この手法を用いれば,各種生態系の解析に役立つだけでなく,環境変化が生物の食性に及ぼしてきた影響や,過去の人類の食性など,さまざまな応用研究が可能になる.
著者
黒田 潤一郎 谷水 雅治 堀 利栄 鈴木 勝彦 小川 奈々子 大河内 直彦
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.398-398, 2008

白亜紀のAptianからTuronianにかけて、海洋底に有機質泥が堆積する海洋無酸素イベントOceanic Anoxic Event (OAE)が繰り返し発生した。その中でも、前期AptianにおきたOAE-1aは汎世界的に有機質泥が堆積する最大級のOAEである。このOAE-1aの年代(約120 Ma)は地球最大の洪水玄武岩であるオントンジャワ海台の形成時期(123~119Ma)に近く、このため両者の関連が注目されてきた。オントンジャワ海台の火山活動とOAE-1aの関連を調べることで、大規模な火成活動と地球表層環境変動とのリンクを理解することができる。しかし、両者の時間的関連や因果関係について未解明の問題が多く、前者については年代学的・層序学的精査が、また後者については数値モデル実験などを用いた検討が必要である。本研究では、Aptian前期にテチス海や太平洋で堆積した遠洋性堆積物の炭素、鉛、オスミウム同位体比を測定し、OAE-1aの層準の周辺でオントンジャワ海台の形成に関連した大規模火山活動の痕跡が認められるかどうかを検討し、両者の同時性を層序学的に評価した。用いた試料はテチス海西部の遠洋性堆積物(イタリア中部ウンブリア州)、太平洋中央部の浅海遠洋性堆積物(シャツキー海台のODP198-1207Bコア)および深海遠洋性堆積物(高知県横波半島の四万十帯チャート;庵谷ほか、印刷中)の3サイトの遠洋性堆積物を使用した。これら3サイトにおいて、微化石および炭素同位体比変曲線からOAE-1aの層準を正確に見出した。横波半島の四万十帯チャートは、OAE-1aのインターバルを含む数少ない太平洋の深海底堆積物である(庵谷ほか、印刷中)。イタリアセクションのOs同位体比はOAE-1aの開始時およびその数10万年前の2回、明瞭なシフトが認められ、同位体比の低いOsの供給が増加したことが明らかになっている(Tejada et al., submitted)。特にOAE-1aの開始時に起きたOs同位体比のシフトは極めて大きく、数10万年間続くことから、オントンジャワ海台の形成に関連したマントルからの物質供給でのみ説明可能である。今回、低いOs同位体比が横波チャートにも認められることが明らかになった。先に述べたOs同位体比の変動は地球規模のものと結論付けられる。一方、海洋での滞留時間の短いPbはOsと異なり、サイト間で同位体比が異なる。イタリアのセクションでは当時のユーラシア大陸地殻に近いPb同位体比を示し、同位体比の大きな変動は認められない。これに対し、横波チャートのPb同位体比はオントンジャワ海台玄武岩の同位体比にほぼ一致し、オントンジャワからの物質供給が活発であったことを示している。シャツキー海台の堆積物のPb同位体比はイタリアセクションと横波チャートの中間的な値を示す。また、シャツキー海台の堆積物には、OAEが開まる時期にオントンジャワ海台からの物質供給が増加したことを示唆するPb同位体比の変化が認められた。このように、Pb同位体組成には当時の古地理(オントンジャワ海台からの距離、深海/浅海)に対応した違いが認められた。本発表では上記の新知見に加えて、3サイトのPb同位体比と古地理分布からオントンジャワ海台からの物質供給プロセスなどを検討する。
著者
木庭 啓介 木下 桂 大西 雄二 福島 慶太郎 尾坂 兼一 松尾 奈緒子 舟川 一穂 瀬古 祐吾 目戸 綾乃 平澤 理世 小川 奈々子 兵藤 不二夫 由水 千景
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.291-299, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
17
被引用文献数
2

微量試料での炭素窒素安定同位体比を測定可能とする連続フロー型元素分析計連結式安定同位体比質量分析計(EA-IRMS)への改良について検討を行った。通常使用されている反応管の口径を小さくするなどの簡易的な改良を実施することで,通常の約1/5の試料量(約6 µg窒素,10 µg炭素)で十分な精度と確度を得られることが明らかとなった。
著者
宮地 俊作 對馬 孝治 伊藤 絹子 川端 淳 小川 奈々子 力石 嘉人 大河内 直彦
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

カタクチイワシ,マイワシは,胃内容物観察では前者は,主に動物プランクトン食といわれてきたがδ15N値には大きな変異があり,栄養段階(TL)は明確ではなかった.後者は主に植物プランクトン食といわれてきた.海洋食物網におけるKey speciesであるこれらのTLを決定することは,海洋生態系の生物多様性の保全と漁業管理において重要である.bulk法によるTLの推定は不確かなことがあった.近年,TL決定のために,一次生産者を採捕/分析せずに捕食者だけのアミノ酸毎のδ15Nを調べる方法が開発された.グルタミン酸とフェニルアラニンの窒素安定同位体比の比較から,生物のTLを決定した.δ15Nが著しく幅広い変異を示したカタクチイワシはどちらの個体でもTLは3であった.これを基にその食源を復元した.これらの食物網構造について検討する.
著者
山崎 敦子 渡邊 剛 川島 龍憲 小川 奈々子 大河内 直彦 白井 厚太朗 佐野 有司 植松 光夫
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.406-406, 2008

サンゴ骨格の窒素同位体比を用いて過去の海洋表層の栄養塩濃度とその起源を復元し、新たな古環境指標としての可能性を検討するため、外洋の沖ノ鳥島と石垣島轟川河口からサンゴ骨格試料を採取し、その成長方向に沿って窒素同位体比・総窒素量を1ヶ月の分解能で測定した。また比較のため、それぞれの窒素同位体比の測線に平行して沖ノ鳥島サンゴではBa/Ca比、Mn/Ca比を、石垣島サンゴではMn/Ca比を測定した。その結果、窒素同位体比・総窒素量の平均値は共に石垣島の方が高く、沿岸の方がサンゴの窒素同化が盛んであることを示した。さらに石垣島サンゴでは、河川からの流入物質の影響が窒素同位体比、総窒素量とMn/Ca比に反映し、沖ノ鳥島サンゴでは、海洋の鉛直混合や湧昇に伴う深層からの栄養塩の供給と海洋表層の窒素固定が窒素同位体比の変動要因として考えられる結果となった。今後、サンゴ骨格の窒素同位体比は海洋の栄養塩の挙動を復元する指標となることが期待できる。
著者
羽生 毅 小川 奈々子 大河内 直彦
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

炭素を含む揮発性成分の地球表層とマントルの間の循環過程はよく分かっていない。マントルに地球表層由来の炭素が存在するかどうかを検証するために、火山岩に含まれる炭素濃度と同位体を分析する技術開発を行った。二酸化炭素は火山岩が噴出するときに容易に脱ガスするため、ガスを保持していると考えられる海底噴出急冷ガラス試料を対象とした全岩分析と、火山岩中の斑晶に含まれるメルト包有物を対象とした局所分析を行った。この手法をマントル深部由来の海洋島玄武岩に応用した結果、一部の海洋島玄武岩には地球表層由来の炭素が含まれている可能性が示唆された。