著者
堀 利栄
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.159, pp.562-586, 1990-09-30
被引用文献数
22

西南日本のチャート及び泥岩からなる連続層序断面において放散虫化石の垂直分布を調査し, 4群集帯と4亜群集帯を最上部トリアス系から中部ジュラ系下部の間に設定・記載した。記載した化石帯は, 下位よりParahsuum simplum群集帯及びその4亜群集帯(Subzones I-IV)と, Mesosaturnalis hexagonus群集帯(新提唱), Parahsuum (?) grande群集帯, Hsuum hisuikyoense群集帯である。アンモナイト化石帯と直接対応のつく北米やトルコのデータとの比較により, 各群集帯の年代は, Rhaetian/HettangianからBajocianまでの間にそれぞれ位置づけられる。新たに設定したMesosaturnalis hexagonus群集帯は, Parvicingula属(広義)の出現や多様な小型塔状Nassellariaの産出で特徴づけられ, 西南日本だけでなく北米においても本群集帯に対応する化石帯が識別される。
著者
黒田 潤一郎 谷水 雅治 堀 利栄 鈴木 勝彦 小川 奈々子 大河内 直彦
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.398-398, 2008

白亜紀のAptianからTuronianにかけて、海洋底に有機質泥が堆積する海洋無酸素イベントOceanic Anoxic Event (OAE)が繰り返し発生した。その中でも、前期AptianにおきたOAE-1aは汎世界的に有機質泥が堆積する最大級のOAEである。このOAE-1aの年代(約120 Ma)は地球最大の洪水玄武岩であるオントンジャワ海台の形成時期(123~119Ma)に近く、このため両者の関連が注目されてきた。オントンジャワ海台の火山活動とOAE-1aの関連を調べることで、大規模な火成活動と地球表層環境変動とのリンクを理解することができる。しかし、両者の時間的関連や因果関係について未解明の問題が多く、前者については年代学的・層序学的精査が、また後者については数値モデル実験などを用いた検討が必要である。本研究では、Aptian前期にテチス海や太平洋で堆積した遠洋性堆積物の炭素、鉛、オスミウム同位体比を測定し、OAE-1aの層準の周辺でオントンジャワ海台の形成に関連した大規模火山活動の痕跡が認められるかどうかを検討し、両者の同時性を層序学的に評価した。用いた試料はテチス海西部の遠洋性堆積物(イタリア中部ウンブリア州)、太平洋中央部の浅海遠洋性堆積物(シャツキー海台のODP198-1207Bコア)および深海遠洋性堆積物(高知県横波半島の四万十帯チャート;庵谷ほか、印刷中)の3サイトの遠洋性堆積物を使用した。これら3サイトにおいて、微化石および炭素同位体比変曲線からOAE-1aの層準を正確に見出した。横波半島の四万十帯チャートは、OAE-1aのインターバルを含む数少ない太平洋の深海底堆積物である(庵谷ほか、印刷中)。イタリアセクションのOs同位体比はOAE-1aの開始時およびその数10万年前の2回、明瞭なシフトが認められ、同位体比の低いOsの供給が増加したことが明らかになっている(Tejada et al., submitted)。特にOAE-1aの開始時に起きたOs同位体比のシフトは極めて大きく、数10万年間続くことから、オントンジャワ海台の形成に関連したマントルからの物質供給でのみ説明可能である。今回、低いOs同位体比が横波チャートにも認められることが明らかになった。先に述べたOs同位体比の変動は地球規模のものと結論付けられる。一方、海洋での滞留時間の短いPbはOsと異なり、サイト間で同位体比が異なる。イタリアのセクションでは当時のユーラシア大陸地殻に近いPb同位体比を示し、同位体比の大きな変動は認められない。これに対し、横波チャートのPb同位体比はオントンジャワ海台玄武岩の同位体比にほぼ一致し、オントンジャワからの物質供給が活発であったことを示している。シャツキー海台の堆積物のPb同位体比はイタリアセクションと横波チャートの中間的な値を示す。また、シャツキー海台の堆積物には、OAEが開まる時期にオントンジャワ海台からの物質供給が増加したことを示唆するPb同位体比の変化が認められた。このように、Pb同位体組成には当時の古地理(オントンジャワ海台からの距離、深海/浅海)に対応した違いが認められた。本発表では上記の新知見に加えて、3サイトのPb同位体比と古地理分布からオントンジャワ海台からの物質供給プロセスなどを検討する。
著者
堀 利栄 藤木 徹 樋口 靖
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.43-59, 2000-01-21
参考文献数
74
被引用文献数
3

付加体中に頻繁に含有される層状チャートの化学組成や同位体比は, チャートが堆積した場の環境や続成過程, また過去の大陸表面の化学組成や付加後のテクトニックなイベントを反映している.本論では層状チャートの化学組成や同位体比の解析例を示し, その問題点や将来性について議論した.REEやいくつかの主成分元素組成は, 層状チャートの珪質部と泥質部が濃度の差こそあれ同起源物質を含有していることを示しており, 珪質部は泥質部がSiO_2で希釈された部分とみなされる.さらに珪質部は, Sr同位体比による解析の結果, より初生的な情報を保持し易いことが示唆された.特に堆積場の酸化・還元状態は, 珪質部における一部の元素組成やS同位体比を用いることで解析可能であり, その一例としてFe^<2+>, Fe^<3+>の量比, AlやTi濃度で規格したMn, U, V比やS含有量をあげた.このような付加体堆積岩の環境解析において欠けてならない点は, 地球科学的な制約条件との整合性であり, 地球化学だけでなく他分野との総合的な議論が必要である.
著者
藤井 麻緒 堀 利栄 大藤 弘明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

放散虫とは、オパール(SiO₂+nH2O)やSrSO₄からなる鉱物質の内殻を持つ海洋性動物プランクトンのことである。現生の放散虫類はオパールの殻をもつコロダリア目、ナセラリア目、スプメラリア目、SrSO₄から成る骨格をもつアカンタリア目、そしてタクソポディア目の5目に分類されている。本研究では、放散虫の内骨格形成過程の観察のため、黒潮表層海域の放散虫を採取し室内における飼育実験を実施した。殻の成長観察については、蛍光試薬を用いオパールの付加成長部位を発光させる手法(Ogane et al., 2010)を用いた。その結果、従来SiO₂成分が含まれていないと考えられてきたアカンタリア目の生体骨格にも Siが含有される可能性が示されたのでそれについて発表する。検討に用いた現生放散虫は、黒潮海域であり放散虫が多種生息する高知県柏島近海にて採取した。プランクトン採集は2015年の7月12日、11月30日、2016年1月11日の全3回行い、採取した放散虫を目別に数個体ずつピックアップし、専用の飼育装置に入れて飼育を行った。飼育の際、水温を常に27℃に保ち、12時間LEDライトの照射、消灯を相互に行なった。飼育装置にて24時間静置した後、HCK-123蛍光試薬を投薬し、24時間~30時間経ったものをスライドに封入した。蛍光試薬を入れてから生体内に試薬が取り込まれその部分を蛍光発光させる事で、SiO₂を含む骨格の付加成長が起きた部分と生体内でのSi元素分布を知ることができる。作成したスライドは愛媛大学理学部設置の共焦点レーザースキャン顕微鏡(Carl Zeiss LSM510)を用いて観察した。スライドには波長488nmのArレーザー光を照射し、HCK-123蛍光試薬投薬後の蛍光発光を観察した。また、Siの含有についての真偽を検討するため、さらにアカンタリア骨格のFE-SEMおよびWDS分析を行った。採集した放散虫類の内、今回は4個体のアカンタリア目の結果について報告する。蛍光試薬投薬後Acanthometra muelleri (個体番号:20150712A-1)、Amphilonche complanata (個体番号:20151130A-1)は24時間飼育、Acanthostaurus conacanthus (個体番号:20160111A-1)、Acanthometron pellucidum (個体番号:20160111A-2)は30時間飼育し、スライドに封入した。各個体を共焦点レーザースキャン顕微鏡にて観察したところ、Acanthometra muelleriは表層の骨針と中央部、Amphilonche complanataは骨針の根元と中央の一部、Acanthostaurus conacanthusは骨針の根元の表層部、Acanthometron pellucidumは折れた骨針と新しく成長中の骨針の一部にSiO₂の付加が確認できた。更に、アカンタリア目Amphilonche complanataの異なる個体でFE-SEMおよびWDS分析を行った。アカンタリア目の主成分はSrSO₄なので、今回はSr、S、Oと、今回注目しているSiについて元素マッピング分析を行った。主成分であるSr、S、Oは骨格全体に広く含まれていたが、その中に部分的にSiの分布も確認できた。殻周辺の付着物以外でSiの反応が確認できた箇所を拡大して分析したところ、骨針の先端表層部分に集中してSiが含まれていることが確認できた。以上の蛍光試薬を用いた飼育実験結果および生体骨格の元素マッピング分析により、従来骨格にSiO₂を含まないと考えられてきたアカンタリア目は、生きている状態においては部分的にSiO₂を含有する事が示された。またそれは、殻の成長活発な部位において顕著で、アカンタリア目の骨格形成においてSiO₂成分が重要な役割を果たす事を示唆している。
著者
榊原 正幸 井上 雅裕 佐野 栄 堀 利栄 西村 文武
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,カヤツリグサ科ハリイ属マツバイなどの有害金属に対する重金属超集積植物を用いたファイトレメディエーション技術を実用化するため,スクリーニング調査,ラボ実験,室内・温室栽培実験,フィールド実験およびエンジニアリング設計ならびに経済性評価を行った.その結果,マツバイを用いたファイトレメディエーションが重金属汚染された土壌・水環境の浄化に有効であることが明らかになった.