- 著者
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足立 重和
- 出版者
- 環境社会学会
- 雑誌
- 環境社会学研究 (ISSN:24340618)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.6-19, 2017-12-20 (Released:2020-11-17)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
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現代において「環境」という視点はあまりにも自明なことであり,言説レベルでは多くが語られている。だがその一方で,自然利用のアンダーユースによる獣害問題,高度な科学技術による人工化した食の問題など,現在の人と自然の距離は,かつてに比べて疎遠になっていたり,いびつであったりするのではないだろうか。そこで問われるべきは,「人と自然のインタラクション」である。そこで本稿は,このテーマに即してこれまでの環境社会学を概観した後,近年の文化人類学における人と動物のインタラクション研究や郡上八幡でのフィールドデータをたぐり寄せながら,今後の環境社会学が探求すべき人と自然のインタラクションとはどのようなものか,その一端を示してみた。より直接的かつ対面的なインタラクションに注目していえるのは,(1) 自然は,積極的に“人に働きかける”というインタラクションの一方の重要な項=行為者である,(2)人と自然のあいだになんらかの競合やトラブルが生じたとき,人間は,インタラクションの性格上,相手の出方を見越して手を打たなければならない,という点である。そのうえで,これらの延長線上には,人工的環境に馴らされたわれわれが漠然といだく自然観を鍛え上げるだけでなく,自然環境の豊かさを取り戻す際には,「自然の視点」を人間の内側に取り込んだうえで,あくまでも人間の暮らしを考える,という人間と自然が入れ子になった政策論がみえてきた。