著者
伊藤 一成 辻 麻衣子 三宅 剛史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.670-677, 2015 (Released:2018-05-21)
参考文献数
14

現在普及している速醸?や生もと系酒母の原型とされる菩提もとは,速醸もとの技術が全国に普及したのと同時に姿を消したとされている。近年,奈良県において菩提もとの製造メカニズムが解析され,菩提もとを用いた清酒が再現復活している。これと同時期に岡山県内の蔵元において,独自の方法で製造したそやし水を使用するもと造りが確立されていた。本稿では,このそやし水の解析から明らかになったことを解説していただいた。
著者
荻野 弘之 佐良土 茂樹 辻 麻衣子 中村 信隆
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

(1)幸福主義の源泉であるアリストテレス倫理学研究の進展。複数の倫理学書を総攬することで「包括主義」対「卓越主義」の論争に対して調停的な読解の可能性を探った。(2)ヘレニズム時代とローマ期ストア哲学の幸福論の読み直し、特にエピクテトスの現代的読解の可能性を開拓した。(3)1980年代以降の徳倫理学の隆盛は哲学史的研究の深化と連動しているが、コーチングを哲学的に基礎づける新しい試みを開拓しつつある。(4)「人生の意味」を問題とする倫理学の傾向に対して、幸福の概念を幸福感という主観的要素に還元しようとする前提の妥当性を検証した。(5)これは昨今経済学で言及される「幸福度」の指標の批判に通じる。
著者
辻 麻衣子
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

当該年度に実施した研究の主な成果は、以下の2点である。1. 『純粋理性批判』(以下、『批判』)超越論的演繹論(以下、演繹論)において統覚概念と並んで重要である構想力概念を、以下の2つの側面から詳細に考察した。(1)『批判』刊行の直前期の形而上学講義や草稿を用いて、構想力概念についての分析および『批判』第1版との比較を行った。当時のカントにとって構想力概念は、経験心理学の中で語られる能力であったが、超越論哲学という新たな軸を打ち出した『批判』に至って、この概念の性格もまた変更されざるをえなかった。このような移行の中で、構想力概念もまた両者の狭間で揺れ動いていることを、上記テキストおよび『批判』の精査を通じて明らかにした。(2)能力論における「カントの先駆者」と呼ばれるヨハン・ニコラウス・テーテンスによるテキストを精査し、カントの構想力概念に与えた影響に関する発表を行った。両者が考えた構想力概念の体系には確かに相違点も多くあるが、同時代の他の哲学者には見られないような、特異な共通点もまた存在する。この共通点を両者のテキストから析出し、これまで省みられることの少なかった構想力概念におけるテーテンスとカントとの関係に焦点を当てた。2. 『批判』演繹論における、統覚を中心とした自己意識論から強い示唆を受けて成立したフィヒテの知識学講義を精読し、そこでの自己意識論をカントによるものと比較した。1790年代末に行われた講義をまとめたものである『新たな方法による知識学』を基本テキストとし、そこで「五重の総合」という名称で展開されるフィヒテの自己意識論に着目した。フィヒテがカントの統覚概念をさらに発展させ、理論的認識という側面においてのみならず、実践的側面においても自己意識の統一を第一原理としたことを明らかにした。