著者
舟越 光彦 田村 昭彦 垰田 和史 辻村 裕次 西山 勝夫
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.235-247, 2003 (Released:2004-09-10)
参考文献数
34
被引用文献数
9 8

タクシー運転手の腰痛の実態と腰痛に関わる労働要因を明らかにするために, 福岡市内某タクシー事業所の男性運転手を対象に1999年 (n=280名, 以下第1回調査) と2001年 (n=284名, 以下第2回調査) に腰痛と労働実態に関する質問紙調査を実施した. 調査は, 1) 第2回調査時における腰痛の有訴率と腰痛に関わる労働要因についての断面研究と, 2) 第1回調査で腰痛の既往がなく, かつ, 腰痛の訴えがなかった運転手で, 第2回調査時に「最近1年間の腰痛あり」と新規に回答した者を腰痛の罹患例とし, 腰痛の罹患率と腰痛罹患にかかわる第1回調査時点の労働要因について検討した縦断研究である. この結果, タクシー運転手の腰痛の有訴率は45.8%で, 腰痛多発が報告されている他の職業運転手と同様に高率であり, タクシー運転手にとって腰痛が重要な問題であることが示された. また, 2年間の腰痛の罹患率は25.9%と推定された. 断面研究と縦断研究の結果, 腰痛と有意な関連を認めた労働要因は, 「運転席座面 (以下, 座面) の適合性」, 「車両の延べ走行距離」, 「全身振動」, 「職務ストレス」および「タクシー運転手としての乗務経験年数」であった. さらに, 腰痛と「車両の延べ走行距離」の間には有意な量反応関係を認めた. 以上より, タクシー運転手の腰痛に「座面」の人間工学的問題と「全身振動」および「職務ストレス」が関与していることが示唆された. また, 「車両の延べ走行距離」が腰痛に関与しているとの報告例はなく, 「車両の延べ走行距離」が腰痛発症に関与する機序について今後の検討が必要であると考えられた. さらに, 「全身振動」の影響の評価のため, 実車両を対象とした曝露振動の実態把握が必要と考えられた.
著者
白星 伸一 垰田 和史 辻村 裕次 北原 照代
出版者
佛教大学保健医療技術学部
雑誌
保健医療技術学部論集 (ISSN:18813259)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-12, 2017-03-01

滋賀県理学療法士協会員のうち,滋賀県内の医療機関,福祉・保健施設,教育,行政機関などに勤務する理学療法士611名を対象として,無記名自記式による質問紙調査を実施した. 腰痛の既往率は78%と高率であり腰痛のリスクが高い職業であるといえる.就労後2年以内に腰痛を発症する率が高く,業務の特性を考慮した独自の取り組みが必要である.また,腰痛に関する知識がある故に自らの判断で対策を講じる傾向が見受けられた.さらに,腰痛予防に関する教育機会の提供が十分とは言い難く,職場の意識改革に基づく総合的な予防策を講じる必要がある.職業性腰痛理学療法士質問紙調査
著者
舟越 光彦 田村 昭彦 峠田 和史 辻村 裕次 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.235-247, 2003-11-20
被引用文献数
5 8

タクシー運転手の腰痛の実態と腰痛に関わる労働要因を明らかにするために,福岡市内某タクシー事業所の男性運転手を対象に1999年(n=280名,以下第1回調査)と2001年(n=284名,以下第2回調査)に腰痛と労働実態に関する質問紙調査を実施した.調査は,1)第2回調査時における腰痛の有訴率と腰痛に関わる労働要因についての断面研究と,2)第1回調査で腰痛の既往がなく,かつ,腰痛の訴えがなかった運転手で,第2回調査時に「最近1年間の腰痛あり」と新規に回答した者を腰痛の罹患例とし,腰痛の罹患率と腰痛罹患にかかわる第1回調査時点の労働要因について検討した縦断研究である.この結果,タクシー運転手の腰痛の有訴率は45.8%で,腰痛多発が報告されている他の職業運転手と同様に高率であり,タクシー運転手にとって腰痛が重要な問題であることが示された.また,2年間の腰痛の罹患率は25.9%と推定された.断面研究と縦断研究の結果,腰痛と有意な関連を認めた労働要因は,「運転席座面(以下,座面)の適合性」,「車両の延べ走行距離」,「全身振動」,「職務ストレス」および「タクシー運転手としての乗務経験年数」であった.さらに,腰痛と「車両の延べ走行距離」の問には有意な量反応関係を認めた.以上より,タクシー運転手の腰痛に「座面」の人間工学的問題と「全身振動」および「職務ストレス」が関与していることが示唆された.また,「車両の延べ走行距離」が腰痛に関与しているとの報告例はなく,「車両の延べ走行距離」が腰痛発症に関与する機序について今後の検討が必要であると考えられた.さらに,「全身振動」の影響の評価のため,実車両を対象とした曝露振動の実態把握が必要と考えられた.
著者
冨岡 公子 北原 照代 峠田 和史 辻村 裕次 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.45-54, 2004-03-20
被引用文献数
1

本実験の目的は,手話通訳者における音声言語に誘発された頸肩腕部の筋緊張の有無を確認することである.解析対象者は,インフォームドコンセントを得た「人の話を聞いていると頸・肩・腕が痛くなる」症状を訴えていた職業的手話通訳者8名(ケース群)と手話末学習者8名(コントロール群)である.コントロール群は,性・年齢・喫煙習慣を調整した.安静座位の間,左右の僧帽筋上部と上腕二頭筋から表面筋電図を記録した.この間,全被験者は,日本語の講演を聴くこと,および日本語が全く含まれていない音楽を聴くことの,2つの課題を与えられた.各課題終了直後に,自覚症状を尋ね質問した.表面筋電図の解析方法は,各課題ごとに,100 ms ごとの実効値を算出した.独自の判定基準として3.8μVの閾値を1秒以上超えている部分を筋緊張と判定し,筋緊張を確かめた.その結果,講演を聴いている時に上腕二頭筋や僧帽筋に筋緊張が認められたのは,ケース群では8名中5名,コントロール群では8名中1名であった.僧帽筋の筋緊張が講演を聴いている時に認められ,かつ音楽を聴いている時には認められなかった事例は,ケース群には3名,コントロール群ではみられなかった.これらの結果におけるケース・コントロール群問の差は有意ではなかった.手話通訳者で講演を聴いた際に認められた筋緊張は日本語の音声言語により引き起こされた可能性がある.筋緊張は,手話通訳によって形成された反応なのか,病的反応なのか,今後さらに検討する必要がある.手話通訳者にとっては,日本語の音声言語を聴くことが筋負担となる可能性があり,日本語の音声言語のない環境下で休憩することが筋肉を休息させるために必要と考えられる.(産衛誌2004; 46: 45-54)
著者
中村 賢治 垰田 和史 北原 照代 辻村 裕次 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.225-233, 2007-11-20
被引用文献数
2 2

我々は,健常な非喫煙女性20名を対象に,精神的ストレスが,僧帽筋内のHb動態に及ぼす影響について調べた.被験者に,1分間の立位での両上肢の側方水平位保持(身体的課題),またはStroop's Color Word Test(精神的課題),またはその両方を同時に与える課題を,5分間の休憩をはさんで行わせた.心拍数,および筋内ヘモグロビン(酸素化Hb:OxyHb,脱酸素化Hb:DeoHb,総Hb:TotHb)濃度と表面筋電図(いずれも右僧帽筋で測定)を測定した.各課題によるHb濃度の安静時からの変動量(ΔOxyHb,ΔDeoHb,ΔTotHb)を算出し,身体的負荷時と身体的および精神的負荷時を比較した.身体および精神的負荷時のΔDeoHbは身体的負荷単独時より有意に小さく(p=0.013),ΔOxyHb,ΔTotHbには有意な差は認められなかった(p=0.281,p=0.230).本実験の結果は,精神的ストレスが僧帽筋内のΔDeoHbに影響を及ぼしたことを示唆しており,可能性のある機序の一つとして,精神的ストレスによる僧帽筋の酸素消費量の減少が考えられた.今後,長時間の負荷による影響について検討する必要がある.