著者
垰田 和史 中村 賢治 北原 照代 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.246-253, 2005-11-20
被引用文献数
1 4

新医師臨床研修制度導入以前の研修医の労働や生活の実態を検討する目的で, 国立大学附属病院に所属する102名の研修医について, 連続した4週間の生活時間調査を行った.調査対象とした2,722人日のうち76%の有効回答をえた.平日の平均睡眠時間は5.7時間, 土曜・祝日の平均睡眠時間は6.8時間だった.研修医の40%は睡眠時間が6時間未満で5時間未満の者が17%おり, 外科に所属する研修医の睡眠時間は特に短かった.研修医の睡眠不足は健康を脅かすだけでなく医療の安全性を低下させることから, 新医師臨床研修制度のもとで, 研修医の睡眠時間を含む生活が適切に保たれるよう, 追跡検証する必要がある.
著者
原田 清美 西田 直子 北原 照代
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.164-173, 2015-08-20 (Released:2016-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は,看護師の看護作業による腰痛への効果的な予防対策を講じるために,腰痛の有無と看護作業との関連を明らかにすることである. 平成24年10月に,A大学病院に勤務する看護師320人を対象とし,無記名自記式質問紙調査を実施した. 調査項目は,腰痛の状況,身体的につらい看護作業,移乗・移動介助方法など計32項目である.腰痛の有無別,ベッドから車椅子への移乗,体位変換やベッド上での移動介助方法の比較には,フィッシャーの直接確率検定を用いた. その結果, 「現在腰痛がある」 と回答した看護師は144人 (54.3%) であった.腰痛あり群は,なし群にくらべ,多くの看護作業が身体的につらいと感じていた.腰痛あり群は,移乗および移動介助を 「一人で実施している」 と回答した割合が高く,移動介助では有意な差を認めた (P =0.012).また両群ともに 「道具を使う」 と回答した看護師の割合は低かった.これらのことにより,移乗・移動介助を一人で行わないことや道具を活用するなどの腰痛予防対策を取り組む必要性が示唆された.
著者
白星 伸一 垰田 和史 辻村 裕次 北原 照代
出版者
佛教大学保健医療技術学部
雑誌
保健医療技術学部論集 (ISSN:18813259)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-12, 2017-03-01

滋賀県理学療法士協会員のうち,滋賀県内の医療機関,福祉・保健施設,教育,行政機関などに勤務する理学療法士611名を対象として,無記名自記式による質問紙調査を実施した. 腰痛の既往率は78%と高率であり腰痛のリスクが高い職業であるといえる.就労後2年以内に腰痛を発症する率が高く,業務の特性を考慮した独自の取り組みが必要である.また,腰痛に関する知識がある故に自らの判断で対策を講じる傾向が見受けられた.さらに,腰痛予防に関する教育機会の提供が十分とは言い難く,職場の意識改革に基づく総合的な予防策を講じる必要がある.職業性腰痛理学療法士質問紙調査
著者
冨岡 公子 北原 照代 峠田 和史 辻村 裕次 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.45-54, 2004-03-20
被引用文献数
1

本実験の目的は,手話通訳者における音声言語に誘発された頸肩腕部の筋緊張の有無を確認することである.解析対象者は,インフォームドコンセントを得た「人の話を聞いていると頸・肩・腕が痛くなる」症状を訴えていた職業的手話通訳者8名(ケース群)と手話末学習者8名(コントロール群)である.コントロール群は,性・年齢・喫煙習慣を調整した.安静座位の間,左右の僧帽筋上部と上腕二頭筋から表面筋電図を記録した.この間,全被験者は,日本語の講演を聴くこと,および日本語が全く含まれていない音楽を聴くことの,2つの課題を与えられた.各課題終了直後に,自覚症状を尋ね質問した.表面筋電図の解析方法は,各課題ごとに,100 ms ごとの実効値を算出した.独自の判定基準として3.8μVの閾値を1秒以上超えている部分を筋緊張と判定し,筋緊張を確かめた.その結果,講演を聴いている時に上腕二頭筋や僧帽筋に筋緊張が認められたのは,ケース群では8名中5名,コントロール群では8名中1名であった.僧帽筋の筋緊張が講演を聴いている時に認められ,かつ音楽を聴いている時には認められなかった事例は,ケース群には3名,コントロール群ではみられなかった.これらの結果におけるケース・コントロール群問の差は有意ではなかった.手話通訳者で講演を聴いた際に認められた筋緊張は日本語の音声言語により引き起こされた可能性がある.筋緊張は,手話通訳によって形成された反応なのか,病的反応なのか,今後さらに検討する必要がある.手話通訳者にとっては,日本語の音声言語を聴くことが筋負担となる可能性があり,日本語の音声言語のない環境下で休憩することが筋肉を休息させるために必要と考えられる.(産衛誌2004; 46: 45-54)
著者
中村 賢治 垰田 和史 北原 照代 辻村 裕次 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.225-233, 2007-11-20
被引用文献数
2 2

我々は,健常な非喫煙女性20名を対象に,精神的ストレスが,僧帽筋内のHb動態に及ぼす影響について調べた.被験者に,1分間の立位での両上肢の側方水平位保持(身体的課題),またはStroop's Color Word Test(精神的課題),またはその両方を同時に与える課題を,5分間の休憩をはさんで行わせた.心拍数,および筋内ヘモグロビン(酸素化Hb:OxyHb,脱酸素化Hb:DeoHb,総Hb:TotHb)濃度と表面筋電図(いずれも右僧帽筋で測定)を測定した.各課題によるHb濃度の安静時からの変動量(ΔOxyHb,ΔDeoHb,ΔTotHb)を算出し,身体的負荷時と身体的および精神的負荷時を比較した.身体および精神的負荷時のΔDeoHbは身体的負荷単独時より有意に小さく(p=0.013),ΔOxyHb,ΔTotHbには有意な差は認められなかった(p=0.281,p=0.230).本実験の結果は,精神的ストレスが僧帽筋内のΔDeoHbに影響を及ぼしたことを示唆しており,可能性のある機序の一つとして,精神的ストレスによる僧帽筋の酸素消費量の減少が考えられた.今後,長時間の負荷による影響について検討する必要がある.
著者
岩切 一幸 外山 みどり 高橋 正也 木口 昌子 平田 衛 樋口 重和 北原 照代 垰田 和史 久永 直見
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.255-265, 2008 (Released:2009-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本稿では,介護労働において安全衛生上大きな問題となっている介護者の腰痛を取り上げ,その発生状況や予防対策を紹介するとともに,著者らが作成した「介護者のための腰痛予防マニュアル~安全な移乗のために~」を解説する.このマニュアルは,介護機器を活用する際の参考資料として厚生労働省通達の「職場における腰痛発生状況の分析について」で引用されており,介護機器を利用した介護者の腰痛予防教育などに利用できる.