著者
進矢 正宏
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.116-123, 2017-09-05 (Released:2017-10-31)
参考文献数
28

一定のターゲットを狙って投球した場合,感覚運動系のノイズや運動野の背景活動の揺らぎにより,実際の投球は狙ったターゲットからの誤差を伴い分布する.運動系が最適な運動意思決定を行うためには,誤差の大きさや向きといった確率的構造を定量的に知る必要がある.本研究では,野球の投手の投球する際に生じる投球誤差分布を,二次元正規分布モデルと等確率楕円を用いて解析することにより定量した.特に,これまで考慮に入れられていなかった投球誤差分布の向きに着目し,それが投球フォームによって決定されているということを示した.また,このような投球誤差分布が,最適な投球位置を選ぶ過程で大きなインパクトを持つということを,シミュレーションによって示した.
著者
進矢 正宏
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.98-103, 2016-09-05 (Released:2016-10-31)
参考文献数
11

ヒトや実験動物の行動・運動を研究する研究者にとって,モーションキャプチャーは最も基本的な計測ツールである.しかしながら,従来の光学式モーションキャプチャーには,マーカーの貼付やキャリブレーションの手間など,自動計測を行う上での難点があった.Microsoft社が2010年に家庭用ゲームデバイスとして発売したKinectは,その価格の安さと簡便さで,運動計測分野に革命をもたらした.本稿では,Kinectセンサーからの深度情報と画像処理を組み合わせて実験動物の行動推定を行った事例と,リハビリテーション分野を中心に骨格情報を用いた事例を,過去の文献からレビューするとともに,著者らが行ったこどもの静止立位動揺測定の事例を紹介する.
著者
瀧山 健 進矢 正宏
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.112-122, 2016-09-05 (Released:2016-10-31)
参考文献数
20

多くの運動学習実験は実験室環境にて行われてきた.実験パラダイムとしてしばしば,巨大で高価なマニピュランダムが必要となる腕の到達運動と外乱学習が用いられる.すなわち,運動学習実験を行うためには,巨額の資金と広い実験スペースが必要不可欠である.被験者もまたマニピュランダムが設置された実験室へ移動する負担を課せられる.この負担は特に,感覚運動疾患患者(脳卒中患者など)を対象とした実験を行う際に大きな問題となる.本研究では無料で利用できるゲーム開発エンジンUnity3Dを用いて,スマートデバイス(スマートフォン・タブレット端末等)上で運動学習実験を行う新たなアプリケーション,Portable Motor Learning Laboratory(PoMLab)を開発した.人口の7割以上が所有しているスマートデバイスを利用することで,安価に,被験者の都合が良い時間・場所にて,実験室への移動という負担を強いることなく,いつでもどこでも運動学習実験を行うことが可能となる.加えて,Unity3DではAndroid,iOS,Windowsなどオペレーティングシステムに依存しないマルチプラットフォームアプリケーションの開発が容易であり,所有しているスマートデバイスを用いていつでもどこでも運動学習実験を行うことが可能となる.本研究ではPoMLabの開発,そして性能評価を行った.実験室にてPoMLabを用いた運動学習実験を行った後に,PoMLabの場所依存性・時間依存性を検証するため,スポーツサイエンスの授業中に実験データを取得した.その結果,場所依存性・時間依存性は認められず,PoMLabを用いていつでもどこでも運動学習実験データを取得できる可能性を支持する結果を得た.そして従来の運動学習実験との関係を検証するためにマニピュランダムを用いた実験とPoMLab を用いた実験との比較を行った.より統制された実験環境であるマニピュランダムを用いた実験ではデータのばらつきが少なく,より多くの運動学習効果を獲得できることが判明した一方,PoMLabを用いた実験ではいつでもどこでも被験者への負担が少なく運動学習実験データを取得可能であり,加えて被験者は実験設定に気づくことなく運動学習が進むことが判明した.したがって,マニピュランダムを用いた実験系とPoMLabを用いた実験系とでは異なる利点を有する,互いに相補的な実験系であると言える.以上の結果は,マルチプラットフォームアプリケーションであるPoMLabを用いることで,いつでもどこでも負担少なく運動学習実験を行うことができる可能性を支持している.