著者
牧平 清超 二川 浩樹 里田 隆博 弓削 類 寺田 善博 篠原 義憲
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

抗NHA2モノクローナル抗体を用いて破骨細胞におけるNHA2の機能解析を行った。その結果、NHA2は未成熟な破骨細胞同士の融合に深く関与していることを見いだした。また、顎骨は咬合力をはじめとした様々な外的刺激を受けることから、メカニカルストレスを負荷した状況をシミュレートし、この刺激下での抗NHA2モノクローナル抗体の破骨細胞と骨芽細胞への影響について検討したが、結論に至るまでの十分なデータを得ることはできなかった
著者
天野 仁一朗 里田 隆博
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々はラットの前交連尾側端レベルの線条体中央部に、微小電気刺激および徹小化学(受容体)刺激によって開口筋と舌突出筋には同側優位の顕著なEMG活動を誘発するが、閉口筋,舌後退筋または顔面筋には何の活動も誘発しない線条体顎領域striatal jaw regionを発見した(Neurosci. Lett.,253:79-82,1998;Brain Res.893:282-286,2001)。平成14年度は本研究課題の最終段階として、解剖学者と共同して線条体顎領域SJRニューロンの線維連絡について形態学的解析を行った。1本の電極で微小電気刺激と微量トレーサ注入が同時に行なえる微小シータガラス管電極(θ管電極;先端直径25〜65μm)で誘発EMG活動を指標にSJRを同定し、SJRにコレラトキシンサブユニット(CTb)を電気泳動的に注入した。CTbの注入部は、前交連の最尾側のレベルにおいて、線条体のほぼ中央部に限局していた。逆行性標識神経細胞体は、主として、(1)大脳皮質の運動野、体性感覚野、島皮質、(2)視床の内側中心核(NCM)と束傍核、(3)扁桃体外側基底核、(4)黒質緻密部に分布していた。大脳皮質からSJRへの投射線維は主としてV層とVI層から起り、その起始領域には二つの中心が認められた。すなわち、感覚運動野顔領域と島皮質領域である。これらの皮質領域は、連続刺激によってそれぞれ異なるタイプの連続顎運動が誘発される領域である。なお、順行性終末標識を淡蒼球外節、脚内核、黒質網様部に認めた。以上の生理学実験は研究代表者・天野一朗が担当し、解剖学実験は研究分担者・里田隆博(広島大学歯学部)が担当した。なお、研究結果はNeurosci. Lett.,322:9-12,2003に報告した。
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

ラット孤束核への入力系を調べるため,孤束核を目標にWGA-HRPを注入した.小脳に対する損傷を最小限にするため,後頭骨の一部を除去して,小脳の一部を吸引除去の後,第四脳室尾側部を確認して,孤束核にトレーサーを電気泳動的に注入した.注入が孤束核中央部に限局した例では孤束内の線維が標識され,またそれは反対側にまでおよんでいた.注入部位の尾側部の孤束核内に標識細胞が見られると同時に,孤束内に軸索を伸ばしている舌下神経核ニューロンと迷走神経背側核ニューロンが観察された.また孤束核より,腹外側方へ伸びる軸索が観察され,孤束核ニューロンと延髄網様体ニューロンとの関連が示唆された.孤束核を中心として大量に注入された例では,同側舌下神経核,迷走神経背側核に標識細胞が見られたと同時に,顔面神経核の最尾側部のレベルにおいて正中部を通過して,反対側へ向かう軸索が観察され,両側性に三叉神経上域から三叉神経運動核内において標識神経終末が観察された.さらに吻側方においては同側の三叉神経中脳路核に多数の標識細胞が,内側・外側結合腕傍核に多数の標識神経終末が見いだされた.これらの神経細胞および標識終末は,孤束核への限局注入例と比較して,孤束核の腹側の網様体よりの入力と考えられる.一方,疑核尾側方網様体にトレーサーが注入された例でも,同側の三叉神経中脳路核に標識細胞が見いだされた.次にこの三叉神経中脳路核ニューロンの延髄および頚髄内の下行性投射を調べるため,咬筋または側頭筋にTrue BlueやFluororubyを注入して,頚髄にFluorogoldを注入し,三叉神経中脳路核内に二重標識されるニューロンの存在を調べた.その結果,中脳路核には二重標識された細胞はみあたらず,中脳路核ニューロンの軸索は頚髄には投射せず,延髄内にとどまっていることが分かった.
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

ニホンザルを用い,咽頭を支配する運動神経細胞および神経終末について調べた.実験にはニホンザル15頭を用い,舌咽神経を剖出し,その末梢枝(舌枝,咽頭枝)にHRPを注入した.また茎突咽頭筋を剖出しHRPを注入した.48時間生存の後,潅流固定し,脳幹部と末梢の神経節(舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経上神経節,下神経節,交感神経上頚神経節,中頚神経節,下頚神経節)の60μmの凍結連続切片を作製しHRP検出反応を施した.舌咽神経の末梢枝は,頚動脈洞と頚動脈小体を支配する頚動脈洞枝,舌根部を支配する舌枝,咽頭収縮筋を支配する咽頭枝より構成されていた.茎突咽頭筋の支配神経は舌枝より分岐しており,大変細くその枝にHRPを注入するのは困難であった.咽頭枝と頚動脈洞枝は迷走神経とも連絡があり,又,これらの末梢枝は交感神経上頚神経節とも連絡があった.舌枝注入例では,孤束核に多数の標識終末が見られ,また一部の例においては三叉神経脊髄路核の中間亜核の背側部に標識終末が見られた.標識細胞は下唾液核に出現した.神経節は舌咽神経上神経節,下神経節に標識細胞が見られ,交感神経上頚神経節にも標識細胞が見られた.一方,咽頭枝注入例では,脳幹内には,標識終末は見られず,標識細胞が疑核の顔面神経後核と細胞緻密部に出力した.神経節は少数の標識細胞が下咽神経下神経節,迷走神経上神経節,交感神経上頚神経節に出現したのみであった.又,茎突咽頭筋の支配神経細胞は疑核の顔面神経後核にのみ出現し,細胞緻密部には出現しなかった.以上の結果より舌枝は主として求心性の要素よりなり,咽頭枝は主として遠心性の要素よりなるが,少数の求心性要素も含んでいるということが分かった.又,茎突咽頭筋の支配運動神経細胞は疑核の顔面神経後核にのみ存在することが分かった.
著者
松島 龍太郎 里田 隆博 高橋 理 田代 隆
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

カルシトニン遺伝子関連ペプタイド(CGRP)とP物質はともに感覚神経の中でも特に侵害刺激(痛覚刺激)の伝達物質として働くことが考えられている。脳幹部の三叉神経脊髄路核内における両物質の分布と共存関係について検索した。この結果、CGRP陽性線維は三叉神経感覚核群の全亜核に分布しており、三叉神経主感覚核ではその背側亜核に背外側部と腹側亜核の内側縁に、三叉神経脊髄路核の吻側亜核ではその背内側部と内側部に、同中間亜核では腹内側縁と外側縁に、そして同尾側亜核では第I層、第IIo層そして第V層に分布した。これらCGRP陽性線維は大部分がP物質を共有していた。一方、三叉神経節ではCGRP陽性細胞の大部分は小型ないし中型の円形ニュ-ロンであり、P物質を含有するニュ-ロンは他の細胞に比較して小型であった。三叉神経根を切断した実験例では、同側の三叉神経感覚核群においてCGPR陽性線維のほとんどが消失した。以上の結果より、三叉神経系のCGPR陽性線維の大部分は三叉神経節由来の一次求心線維であり、P物質をも含有することが明らかとなった。すなわち、小型神経節細胞に由来する痛覚伝達線維である。一方、実験動物の一側の歯髄に炎症を起こさせた場合、同側の三叉神経脊髄路核の尾側亜核にオピオイド(ダイノルフィン)含有ニュ-ロンが増加した。これらの細胞はCGRP陽性の神経終末と接触している事実が観察された。したがって、口腔領域に発した痛覚情報は、三叉神経節の小型細胞を経由して三叉神経脊髄路核尾側亜核に投射され、上位脳あるいは局所に投射するニュ-ロンに直接に伝達されることが明らかとなった。
著者
内田 隆 村上 千景 里田 隆博 高橋 理 深江 允
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

ブタ歯胚のエナメル蛋白に関して、分子生物学的、生化学的、光顕および電顕免疫組織化学的に検索し、以下の結果を得た。1. 小柱鞘蛋白のクローニングを行い、全アミノ酸配列を決定した、それをシースリンと名付けた。シースリンは380または395のアミノ酸残基よりなり、そのN端側に26アミノ酸残基よりなるシグナルペプチドを持っている。シースリンはラットのアメロブラスチンと塩基配列で77パーセント、アミノ酸配列で66%の相同性を持っていた。シースリンのC端部付近にはリン酸化された糖鎖がついていると考えられるが、その部位は推定できなかった。2. シースリンは分泌後速やかに分解され、そのN端側約100〜150アミノ酸残基を含むフラグメントは13-17kDaの小柱鞘蛋白となって、小柱鞘に局在する。C端側95アミノ酸残基は29kDaカルシウム結合蛋白となり、このC端部約20アミノ酸が切断されると27kDaカルシウム結合蛋白となる。両者はリン酸化された糖蛋白であり、幼若エナメル質表層のみに局在する。シースリンの分子中央部は特定の構造に局在せず、速やかに分解される。3. エナメリンのクローニングを行い、全アミノ酸配列を決定した。エナメリンは1104のアミノ酸残基よりなり、エナメル芽細胞より分泌されたエナメリンは、分子量約150kDaでエナメル質最表層に位置し、ヒドロキシアパタイトに親和性を持たないと考えられる.エナメリンの分解産物のうち、N端側631アミノ酸残基よりなるプラグメントがヒドロキシアパタイトに親和性を持つ分子量89kDaエナメリンとなる。この89kDaエナメリンがさらに分解して、136番目から238番目のアミノ酸残基よりなる部分が32kDaエナメリンとなる。4. エナメル質形成において、アメロゲニンはエナメル質の形態を作り、エナメリンは石灰化開始とアパタイト結晶の成長に関係し、シースリンは小柱鞘の形成に関与していると考えられた。
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

ニホンザルの舌咽神経内の交感神経およびその求心性線維と遠心性線維の検索を行った。実験にはニホンザル15頭を用い,舌咽神経の末梢枝を剖出し,その末梢枝にHRPを注入し48時間生存の後,灌流固定し,脳幹部と末梢の神経節(舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経上神経節,下神経節,交感神経上頚神経節,中頚神経節,下頚神経節)の60μmの凍結連続切片を作製しHRP検出反応を施した.舌咽神経の末梢枝は,頚動脈洞と頚動脈小体を支配する頚動脈洞枝,舌根部を支配する舌枝,咽頭収縮筋を支配する咽頭枝より構成されていた.頚動脈洞枝は迷走神経とも連絡があり,また交感神経上頚神経節とも連絡があった.この頚動脈洞枝にHRPを注入すると,同側の孤束核に標識終末が見られ,顔面神経核の背内側方の網様体の中にも標識細胞が見られた.また末梢の神経節においては,舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経下神経節,交感神経上頚神経節に標識細胞が見られた.舌枝に注入した例においては,孤束核に多数の標識終末が見られ,また一部の例においては三叉神経脊髄路核の中間亜核の背側部に標識終末が見られた.又,標識細胞に関しては下唾液核に出現した.末梢の神経節に関しては舌咽神経上神経節,下神経節に標識細胞が見られ,交感神経上頚神経節にも標識細胞が見られた.一方,咽頭枝に注入した例においては,脳幹内には,標識終末は見られず,標識細胞が疑核の顔面神経後核と細胞緻密部に出現した.末梢の神経節に関しては少数の標識細胞が舌咽神経下神経節,迷走神経上神経節,交感神経上頚神経節に出現したのみであった.以上の結果より舌咽神経の頚動脈洞枝と舌枝は主に求心性の要素よりなり,咽頭枝に関しては主として遠心性の要素よりなるということが分かった.また今回の実験では舌咽神経のどの枝にも交感神経の要素が多少なりとも入っていることが分かった。