著者
内田 隆 青木 孝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.483-486, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
6

本研究では,通電によるジュール熱でパンを作る電気パン実験の起源をあきらかにするため,電極式調理の歴史について文献調査と聞き取りを行った.その結果,電気パンの起源は陸軍の阿久津正蔵らが開発した炊事自動車で,電極式調理による製パンよりも前に炊飯が先に実用化されていたことがあきらかになった.終戦後にこの技術が活用されて家庭用電極式炊飯器である厚生式電気炊飯器やたからおはちが製造されたこと,さらに,現在はパン粉用パンの製造量の半分程度が電気パンと同じ電極式調理でつくられていることがわかった.
著者
内田 隆三
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、(1)探偵小説のテクストの成立において、大都市のセンセーショナルな消費文化と膨大な群衆の出現という社会性の場の変化が本質的な媒介要因としてはたらいたことを見出し、探偵小説登場の歴史的な過程を明らかにした。(2)探偵小説のテクストの基本構造を分析し、探偵と犯人(殺人者)という二人の登場人物のあいだに構造的な類似性と同時に奇妙な差異からなる「双数性」(duality)の関係を見いだし、テクスト分析のツールとして概念化した。この「双数性」の構造は、探偵と犯人の同型性と同時に非対称性を担保するものであり、探偵小説のテクストを構成する基本的な要素として機能している。このようなパースペクティヴから探偵小説の歴史を見ると、ふたつの重要な「転回点」があることがわかる。第一の転回点は1920〜30年代の探偵小説の本格化・形式化の時期に当っており、第二の転回点は1980年代の異常犯罪を描いた作品群が人気を得るとともにはじまる。第一の時期は高度な消費社会が成立しはじめたときで、近代的な主体の意識が自我=アイデンティティの不安の念に駆られ、それが探偵雄小説の形式化をもたらしたが、その不安な空洞を埋めるために、人間的な動機の理解に焦点を置くコナン・ドイルの『緋色の研究』型の言説が補填された。第二の時期には人間的な動機の実定性や有効性が消去され、犯人を異様なモンスターとして同定する科学的捜査の微視的な過程に焦点を置く新しいタイプの言説が生み出されるようになった。このように、本研究による重要な貢献は、探偵小説のテクストの構造的変化と消費社会の論理との相関関係を歴史的に明らかにし、また、これまでの探偵小説の研究や解釈にはみられなかった独自の系譜学的な展望を与えたことにある。
著者
内田隆三 [著]
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2020
著者
内田 隆三
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.2-19, 1982-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
43

D・ベル、A・トゥレーヌ、J・ハバーマスらの世代は、テクノロジズムとの相関における社会統合の危機や疎外、コンフリクトの視角から「産業化」の問題を論じた。人間の主体性やシステムの合理性という基準からテクノロジーの発展が批判的に評価されたのである。だが、産業発展が帰結する高度大衆消費社会は、脱工業化社会論や正統化の危機論が依拠する基準や言説の場そのものを変容させつつある。W・W・ロストウは、産業の高度化が一層前進し、実質所得自体の相対的限界効用の逓減が大衆的基盤で起こりはじめたらどうなるのであろうか、と語っていた。「産業化」が提起する逆説的で本質的な問題は、「産業化」がそれ自身同一的な実体ではなくて、それを押し進めた生産=効用の論理やそれに連接した諸エートスとは、異質の論理に陥入していくトポロジカルな変容にある。相対的に溶解していく効用の空間とは異質のトポロジーを「産業化」が分節するのだとすれば、効用という曖昧な概念を軸にした「産業化」の理解や批判はもはや妥当的ではない。既に、J・ボードリヤールは効用の論理の外部に、「産業化」の帰結としての高度大衆消費社会の記号論的解読を試みている。本稿は、ボードリヤールの分析を踏まえつつ、その限界を超えるべく、高度大衆消費社会の経験と産業システムの新たな相関項(レファレント) (ホモ・コンスマンス) の再発見を行ない、「産業化」の現在を消費的世界において検討するものである。
著者
内田 隆三
出版者
岩波書店
雑誌
思想 (ISSN:03862755)
巻号頁・発行日
no.718, pp.p209-234, 1984-04
著者
内田 隆文 岩下 志乃
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.35, no.16, pp.47-50, 2011-03-08

本研究では,Web画像閲覧時のユーザの視線の動きを測定し,1)ユーザの閲覧経験,2)Webページへの興味度,3)レイアウトの違いの3点において視行動特性に違いがあるかどうかを分析する.被験者は用意されたWebページ画像から提示された課題を探索する視覚探索課題を与えられ,その間の注視点計測を行う.被験者がWebページ画像を過去に閲覧したことがあるかどうかと,そのWebページに対する興味度をアンケートで調査し,注視点移動の特徴との関連性を分析する.また,レイアウトの違いによる特徴を確認する.その結果,閲覧有無や興味度により探索率には変化があり探索時間には変化が無いこと,シンプルなレイアウトは探索時間が短くなることが分かった.
著者
内田 隆 村上 千景 里田 隆博 高橋 理 深江 允
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

ブタ歯胚のエナメル蛋白に関して、分子生物学的、生化学的、光顕および電顕免疫組織化学的に検索し、以下の結果を得た。1. 小柱鞘蛋白のクローニングを行い、全アミノ酸配列を決定した、それをシースリンと名付けた。シースリンは380または395のアミノ酸残基よりなり、そのN端側に26アミノ酸残基よりなるシグナルペプチドを持っている。シースリンはラットのアメロブラスチンと塩基配列で77パーセント、アミノ酸配列で66%の相同性を持っていた。シースリンのC端部付近にはリン酸化された糖鎖がついていると考えられるが、その部位は推定できなかった。2. シースリンは分泌後速やかに分解され、そのN端側約100〜150アミノ酸残基を含むフラグメントは13-17kDaの小柱鞘蛋白となって、小柱鞘に局在する。C端側95アミノ酸残基は29kDaカルシウム結合蛋白となり、このC端部約20アミノ酸が切断されると27kDaカルシウム結合蛋白となる。両者はリン酸化された糖蛋白であり、幼若エナメル質表層のみに局在する。シースリンの分子中央部は特定の構造に局在せず、速やかに分解される。3. エナメリンのクローニングを行い、全アミノ酸配列を決定した。エナメリンは1104のアミノ酸残基よりなり、エナメル芽細胞より分泌されたエナメリンは、分子量約150kDaでエナメル質最表層に位置し、ヒドロキシアパタイトに親和性を持たないと考えられる.エナメリンの分解産物のうち、N端側631アミノ酸残基よりなるプラグメントがヒドロキシアパタイトに親和性を持つ分子量89kDaエナメリンとなる。この89kDaエナメリンがさらに分解して、136番目から238番目のアミノ酸残基よりなる部分が32kDaエナメリンとなる。4. エナメル質形成において、アメロゲニンはエナメル質の形態を作り、エナメリンは石灰化開始とアパタイト結晶の成長に関係し、シースリンは小柱鞘の形成に関与していると考えられた。