著者
重川 純子 山田 篤裕
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.71-84, 2012

本稿では,一般市民によりフォーカス・グループを形成し,最低生活(誰にでも最低必要な基礎的生活)の定義,そこに含まれる財・サービス,購入場所・頻度まで,話し合いで決める手法を東京三鷹市で実践し,得られた最低生活費を政府統計と比較した。三鷹市における最低生活費の月額(含住居・食料費)は単身男性19万3810円,同女性18万3235円であった。また子どもの住居・食料費以外の月額は,5歳児4万1897円,小5男子3万3969円,同女子3万4201円,中3男子5万7464円,同女子5万7681円となった。これらを政府統計と比較した結果,裁量幅の大きい選択的な支出が抑えられているとはいえ,支出構成について一定の妥当性があることを確認した。また,いくつかの課題はあったとはいえ重要な結論の一つは,日本でも段階を踏めば一般市民が参加することで最低生活費を算出することは十分可能だということである。
著者
重川 純子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.94, 2004

目的:有配偶女性の就労形態としてパート就労の割合が高いが、高度な技術や知識を必要とする職種に就労し高い収入を得る者も増加しつつある。自分自身の貨幣を持つことはパワーを獲得することになる。夫妻間の相対的な稼得力の変化は夫妻の関係を変化させるかもしれない。本研究では、まだ日本においては少数派である夫と同等あるいは夫以上に収入を得ている妻の属性、及びそのことが夫妻関係に及ぼす影響について検討を行う。<br> 方法:首都圏の核家族世帯対象に調査を実施した(財)家計経済研究所「核家族調査」(1999年)の妻回答と夫回答を用いた。調査前年1年間の収入により妻と夫の収入の関係を類型化(夫妻対等世帯、夫の方が収入階層が高い世帯、専業主婦世帯)し、家計の実態と意識、夫妻関係等について比較を行った。<br> 結果 :夫妻対等世帯の特徴は以下の通り:就業形態は、妻は公務員割合、管理・専門職割合、夫は相対的に公務員割合が高い。稼得役割、家事・育児役割について性別役割規範が相対的に弱い。家計管理の実態、収入帰属の意識面それぞれで個別化傾向がみられる。<br> 夫妻対等世帯の夫は比較的帰宅時間が早く、家事育児の実施頻度も相対的に多い。情緒面でも、夫妻対等世帯の妻は夫からサポートがあると感じ、夫も妻をサポートしていると思っている。妻の就業に対し、夫妻ともに肯定的な評価が多い。妻が夫とほぼ同等に稼得することは夫妻関係に緊張よりも、実態面、情緒面で協力関係をもたらしている。<br> 対等な夫妻共稼ぎが増加する中、個々人のレベルでは固定的な性別役割意識からの脱却、社会的には夫妻が協力的な関係を築ける働き方を保障する必要性が高まると考えられる。
著者
重川 純子 中川 英子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では長期記帳家計簿を資料に家計動態と生活変容の分析を行った。ライフサイクル上のイベントや石油危機等の経済環境の変化に継続的積極的な貯蓄で対応していた。臨時費は消費支出中の大きな割合を占め、費目別月別消費額の変動は大きいが、消費支出額の変動係数は安定的であり、記帳による可視化が消費の平準化に資することが示唆される。循環性の観点による食生活、衣生活の生活変容について、社会的には変化が大きい中、個別世帯の中では変化が小さいことが示された。