著者
照井 滋晴 秋山 吉寛 野本 和宏
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.27-34, 2022 (Released:2022-10-25)
参考文献数
31

As a conservation measure associated with development projects in Kushiro Marsh, egg sacs and adults of Siberian salamander (Salamandrella keyserlingii) were translocated to artificial ponds in two periods (1986-1990 and 1996-1998). Following the first translocation, Kushiro City Board of Education commenced a continuous monitoring survey for 29 years from 1991 to 2019. The survey revealed that the translocated individuals spawned annually in the artificial breeding ponds by 2016; however, the number of egg sacs continuously decreased, after 2017, no further spawning was observed. Therefore, we consider that the translocated individuals are now either extinct or on the verge of extinction, indicating that the translocation project has failed. In this report, we discuss the factors that caused the failure of translocation projects and summarize factors to consider while translocating Siberian salamander.
著者
尾世川 正明 森尾 比呂志 野本 和宏 西澤 正彦 貞広 智仁
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.703-710, 2002
被引用文献数
2

成田赤十字病院は新東京国際空港に近接しており,外国人旅行者の救急患者を診療する機会が多い。本報は当院救命救急センターに1993年から2000年までの8年間に入院した旅行中の外国人救急患者82人(男性50人,女性32人:年齢15-82歳,平均年齢47.7歳)を検討した。患者の国籍は米国が31人と最も多く,次いで東アジア29人で,患者の国籍は22か国に及んだ。55人は英語を話したが,英語を解さない24人とはコミュニケーションをとることが最も深刻な問題であった。このようなケースでは,病歴聴取,治療上のインフォームドコンセントの取得,病状説明などが入院時ほとんど不可能であった。疾患の内訳は,消化管疾患(消化管出血,穿孔,腸閉塞,急性虫垂炎など)22%,循環器疾患(急性心筋梗塞,心不全)16%,外傷18%,中枢神経系疾患(脳血管障害,癲癇など)15%,呼吸器疾患(呼吸不全,肺炎など)7%,その他の疾患22%であった。18人(22%)の患者がICU/CCUに入室した。転帰は62人で軽快,不変が10人,簡易な処置で帰国した者3人,死亡7人(9%)であった。ICU/CCU入室率,死亡率ともこの時期の救命救急センター入院患者よりも高かったが,多くの患者が可及的早期の退院と帰国を希望した。そのため入院期間は短く,3日以下が36人,4-10日が19人,11-20日が15人で,全体の平均在院日数は10.8日であった。帰国時,病状のため医療者(医師および看護婦)の付き添いを要したケースが12人,家族もしくは関係者の援助を要したのは20人であった。帰国時,13人は車椅子を使用し,7人はストレッチャーで搬送された。外国人旅行者の救急医療は言語や医療費の問題に加えて,早期退院や早期帰国などの要望を実現するため,病院とスタッフに特例的な努力を強いる。行政は,このような医療を担当する病院に効果的援助を検討するべきである。
著者
町田 善康 山本 敦也 秋山 吉寛 野本 和宏 金岩 稔 神保 貴彦 岩瀬 晴夫 橋本 光三
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.181-189, 2019-01-28 (Released:2019-04-10)
参考文献数
31
被引用文献数
3 5

北海道東部網走川水系の 3 次支流駒生川において,住民が設置した複数の手作り魚道の効果を検証するため,魚道設置前後の魚類の種組成,生息個体数,およびサケ科魚類の産卵床の分布を調査した.その結果,魚道設置完了前の 2009 年および 2011 年には,駒生川の落差工よりも上流域には,サケ科魚類が全く生息しておらず,ハナカジカとカワヤツメ属の一種のみが生息していた.また,サケ科魚類の産卵床も確認できなかった.2012 年に 7 基の魚道の設置が完了した後,落差工よりも上流域でサクラマスおよびイワナの親魚と産卵床がそれぞれ確認された.また,2013 年に行った調査では,落差工上流域にサクラマスの生息を確認した.さらに,魚道設置 5 年後の 2017 年には,駒生川においてサクラマスおよびイワナの生息が確認でき,ハナカジカの生息個体数は減少する傾向にあった. 以上の結果から,駒生川に設置された木材や石などを利用した手作りの魚道は,遡上できなかった上流域へのサクラマスおよびイワナの遡上を可能にした.しかし,定住性の高い魚類に関しては回復に時間がかかっており,中流域の三面護岸が影響していると考えられた.