著者
尾世川 正明 森尾 比呂志 野本 和宏 西澤 正彦 貞広 智仁
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.703-710, 2002

成田赤十字病院は新東京国際空港に近接しており,外国人旅行者の救急患者を診療する機会が多い。本報は当院救命救急センターに1993年から2000年までの8年間に入院した旅行中の外国人救急患者82人(男性50人,女性32人:年齢15-82歳,平均年齢47.7歳)を検討した。患者の国籍は米国が31人と最も多く,次いで東アジア29人で,患者の国籍は22か国に及んだ。55人は英語を話したが,英語を解さない24人とはコミュニケーションをとることが最も深刻な問題であった。このようなケースでは,病歴聴取,治療上のインフォームドコンセントの取得,病状説明などが入院時ほとんど不可能であった。疾患の内訳は,消化管疾患(消化管出血,穿孔,腸閉塞,急性虫垂炎など)22%,循環器疾患(急性心筋梗塞,心不全)16%,外傷18%,中枢神経系疾患(脳血管障害,癲癇など)15%,呼吸器疾患(呼吸不全,肺炎など)7%,その他の疾患22%であった。18人(22%)の患者がICU/CCUに入室した。転帰は62人で軽快,不変が10人,簡易な処置で帰国した者3人,死亡7人(9%)であった。ICU/CCU入室率,死亡率ともこの時期の救命救急センター入院患者よりも高かったが,多くの患者が可及的早期の退院と帰国を希望した。そのため入院期間は短く,3日以下が36人,4-10日が19人,11-20日が15人で,全体の平均在院日数は10.8日であった。帰国時,病状のため医療者(医師および看護婦)の付き添いを要したケースが12人,家族もしくは関係者の援助を要したのは20人であった。帰国時,13人は車椅子を使用し,7人はストレッチャーで搬送された。外国人旅行者の救急医療は言語や医療費の問題に加えて,早期退院や早期帰国などの要望を実現するため,病院とスタッフに特例的な努力を強いる。行政は,このような医療を担当する病院に効果的援助を検討するべきである。
著者
横張 賢司 平澤 博之 織田 成人 志賀 英敏 中西 加寿也 貞広 智仁 仲村 将高
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.9, pp.456-462, 2003
被引用文献数
1

目的:重症急性膵炎(severe acute pancreatitis: SAP)症例における重症度判定に際し腹部CT検査は必須であり,われわれは厚生省研究班によるCT grade分類を用いてICU入室時および経過中に撮影した腹部CTのgradingを行っている。また現在当施設ではIL-6 (interleukin-6)血中濃度迅速測定が可能であり,その結果はSAPの重症度の指標として有用であると考えている。そこで今回SAP症例の腹部CT所見とIL-6血中濃度との相関を明らかにする目的で以下の検討を行った。対象:自験SAP症例のうちIL-6血中濃度を測定し得た31例を対象とし,入室時のCT grade, IL-6血中濃度およびAPACHE II scoreを検討した。結果:対象31例の入室時CT gradeの内訳はIII度6例,IV度22例,V度3例であった。grade別の入室時平均IL-6血中濃度は,III度269pg/ml, IV度1,214pg/ml, V度1,578pg/mlであり,同様にgrade別の入室時平均APACHE II scoreは,III度11.67, IV度18.33, V度16.30であった。入室時CT gradeとIL-6血中濃度の相関については,gradeが上がるほど血中濃度も高値になる傾向がみられたが,有意な相関は認めなかった。またCT gradeとAPACHE II scoreについても同様に有意な相関は認めなかった。一方,CT gradeを含む各種予後因子の合計スコアを算出したstage分類によると,入室時stage 2に分類されたのは12症例であり,入室時IL-6血中濃度は平均で393pg/mlであった。同様にstage 3は18例で平均1,539pg/ml, stage 4に分類された症例は1例のみであった。stage 2とstage 3の間ではIL-6血中濃度平均値の有意な差を認めた(p<0.05)。考察及び結語:治療経過とともにIL-6血中濃度と病態が改善しているSAP症例においても短期間ではCT gradeは改善せず,腹部CT検査は入室時の重症度判定としては有用だが,リアルタイムの病勢の推移を判断する指標としては適切でないと思われた。以上よりSAP症例におけるIL-6血中濃度と腹部CT所見とは明らかな相関を示さず,その臨床上の意義は各々異なっていると考えられた。