著者
照井 滋晴 秋山 吉寛 野本 和宏
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.27-34, 2022 (Released:2022-10-25)
参考文献数
31

As a conservation measure associated with development projects in Kushiro Marsh, egg sacs and adults of Siberian salamander (Salamandrella keyserlingii) were translocated to artificial ponds in two periods (1986-1990 and 1996-1998). Following the first translocation, Kushiro City Board of Education commenced a continuous monitoring survey for 29 years from 1991 to 2019. The survey revealed that the translocated individuals spawned annually in the artificial breeding ponds by 2016; however, the number of egg sacs continuously decreased, after 2017, no further spawning was observed. Therefore, we consider that the translocated individuals are now either extinct or on the verge of extinction, indicating that the translocation project has failed. In this report, we discuss the factors that caused the failure of translocation projects and summarize factors to consider while translocating Siberian salamander.
著者
照井 滋晴 秋山 吉寛
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1-4, pp.38-43, 2021-06-11 (Released:2021-09-11)
参考文献数
27

We observed sphaeriid clams attached to the digits of salamanders distributed in wetlands of eastern Hokkaido, Japan. One of the clams in either the genus Euglesa or Odhneripisidium was found on a salamander (Salamandrella keyserlingii) captured on dry land, showing that the clam was being transported by a land-walking amphibian. It is possible that sphaeriid clams migrate between water areas using salamanders to expand their distribution.
著者
伊藤 健吾 秋山 吉寛 近藤 高貴 岸 大弼
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

希少種カワシンジュガイの保全のため,宿主魚を多く養殖している養魚場の活用を試みた。その結果,養魚場のような高密度で宿主魚が生息している環境であれば,ごく少数の母貝から吐出されるグロキディウム幼生であっても十分な個体群を維持できることが明らかになった。また,幼生の寄生による宿主魚への影響を調べたところ,本調査地におけるカワシンジュガイの個体群維持に必要なレベルの寄生数(宿主魚一尾当たり数百)では成長率及び生残率には影響がないことが示された。以上の結果,イシガイ目二枚貝の保全には,水産業のような宿主魚を高密度で養殖している場所を積極的に活用することが非常に効果的であることが明らかになった。
著者
秋山 吉寛 黒岩 寛 山内 都江 岡田 知也
出版者
日本沿岸域学会
雑誌
沿岸域学会誌 (ISSN:13496123)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.91-102, 2017-12-31 (Released:2023-04-17)
参考文献数
21

要旨:精神的恩恵をもたらす海の力を,神社に存在する神霊として捉え,海の精神的恩恵の大きさを定量的に評価する方法を考案した。この方法を用いて,現代の大阪湾流域および東京湾流域における神社と関連する海の精神的恩恵の豊かさを相対的に比較した。海と神社との関わりの有無を示す3つの指標(海と関連する神事あるいは祭礼の有無,御祭神の種類,および,神社の本殿から海岸までの距離)を用いて,海と関わりのある神社を抽出した。神社と関連する海の精神的恩恵の豊かさは,海と神社との関わりの深さと,神社利用者の多寡を表す三が日初詣者数との積で得点化された。この方法を用いて,大阪湾流域および東京湾流域の神社を分析した結果,神社と関連する海の精神的恩恵の得点は,大阪湾流域の方が高かった。神社と関連する海の精神的恩恵の豊かさは,1)海と多くの人々とを長年繋いできた神社,および,2)海とその周辺の環境の状況の影響を受けて変化すると考えられる。
著者
町田 善康 山本 敦也 秋山 吉寛 野本 和宏 金岩 稔 神保 貴彦 岩瀬 晴夫 橋本 光三
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.181-189, 2019-01-28 (Released:2019-04-10)
参考文献数
31
被引用文献数
3 4

北海道東部網走川水系の 3 次支流駒生川において,住民が設置した複数の手作り魚道の効果を検証するため,魚道設置前後の魚類の種組成,生息個体数,およびサケ科魚類の産卵床の分布を調査した.その結果,魚道設置完了前の 2009 年および 2011 年には,駒生川の落差工よりも上流域には,サケ科魚類が全く生息しておらず,ハナカジカとカワヤツメ属の一種のみが生息していた.また,サケ科魚類の産卵床も確認できなかった.2012 年に 7 基の魚道の設置が完了した後,落差工よりも上流域でサクラマスおよびイワナの親魚と産卵床がそれぞれ確認された.また,2013 年に行った調査では,落差工上流域にサクラマスの生息を確認した.さらに,魚道設置 5 年後の 2017 年には,駒生川においてサクラマスおよびイワナの生息が確認でき,ハナカジカの生息個体数は減少する傾向にあった. 以上の結果から,駒生川に設置された木材や石などを利用した手作りの魚道は,遡上できなかった上流域へのサクラマスおよびイワナの遡上を可能にした.しかし,定住性の高い魚類に関しては回復に時間がかかっており,中流域の三面護岸が影響していると考えられた.