著者
野村 みどり
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.137-141, 2003-06-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
5

1950年代以降, 西欧諸国では, 病院におけるこどものためのあそび支援プログラムの発展と, その担当専門家の活躍によって, 家族中心ケアやプリパレーション (あそび・まなびを導入した診療準備) 等の支援も推進されてきた.1988年「病院のこども憲章」EACH Charterが作成され, 2002年, その現代的注釈が刊行された.本憲章の履行は, 国連こどもの権利条約の履行である.すなわち, 病院において親は, いつでも (夜間, 治療・検査時, 局所麻酔・鎮静中, 麻酔導入時・覚醒時, 昏睡状態, 蘇生処置中) こどもに付き添う権利を有し, 親は全面的にサポートされねばならない.こどもと親が処置すべてを事前に知っていることが意思決定に積極的に関わるための前提条件である.こどもを医療者の対等のパートナーに据えるとともに, 家族中心ケアの実現がもとめられており, わが国におけるその効果的推進のためには, 家族が付き添える病院環境の整備とホスピタルプレイスペシャリストなど, 専門家の養成・導入は緊急課題といえる.
著者
木之瀬 隆 野村 みどり 大崎 淳史 木之瀬 隆 徳永 亜希雄
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

特別支援教育を推進するバリアフリー生活情報環境デザインのあり方に関する研究の目的は、わが国の障害児教育が従来の特殊教育から個々の教育的ニーズに対応する特別支援教育への大きな変革に合せて、養護学校のバリアフリー生活環境デザインのあり方についてハード・ソフトの両面を含めたグローバルで学際的視点から課題を明確にすることであった。研究は2部で構成され、研究Iは特別支援教育で重要となるインクルーシブ教育の実態把握としてノルウェー王国の調査を行いまとめた。ノルウェーでは、ノーマライゼーションの考え方と合せてWHO国際生活機能分類(以下、ICF)の障害観に基づく教育が展開されており、地域での障害者支援技術としてアシスティブテクノロジー(Assistive Technology : ATと略す)のサービスと合わせたサポート体制が整っており、特別支援学校の展開にソフト面として重要な情報を得ることができた。研究IIはノルウェーの特別支援教育プログラムを参考に日本の養護学校における環境面からのアプローチを検討し、千葉県立桜が丘養護学校の教室とトイレに天井走行式リフターを導入し「抱っこによる移乗」の改善を試みた。その結果、授業時間にリフターを活用した重度重複障害児の自宅にリフターを設置し、自宅における環境改善と家族の介護負担の軽減が大きく図れた。一方、千葉県立袖ケ浦養護学校では、寄宿舎にリフターを設置することで、介助者の安全性・身体的負担軽減に有効であった。また、浴室に設置したリフターは利用する児童にとって、入浴の楽しみと快適性を高めるQOLの向上につながった。また、自立活動室にリフターを設置し、授業中のリフター活用で教諭の腰痛予防に配慮した安全性向上による移乗動作の獲得と自立活動の歩行補助用具としてのリフター活用の可能性を評価することができた。今後の課題としては、社会資源の活用を含めたバリアフリー生活情報環境のリソースセンター機能の構築が必要である。また、教育場面では教諭を中心とした、関連職種による支援体制整備と「個別の指導計画」の中に、ICFの視点から、児童の学校生活、自宅生活、卒業後の自立生活を視野に入れた、環境面からの目標を導入することが挙げられる。
著者
野村 みどり
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.43, pp.p107-123, 1991-09

本研究では、1989、1990年度に実施した47都道府県、全市および都内23区の教育委員会教育長を対象とするアンケート調査結果から、各種特殊学級の設置・運営に関する実態を把握・分析し、その結果から、多様な児童生徒に対応できる柔軟で弾力的な特殊学級設置・運営のあり方をもとめることを目的とする。各市区における全公立小中学校総数に対する特殊学級設置校数の割合は、未設置から全校設置まで幅広く、平均すると半数の学校に特殊学級は設置されている。今後の特殊学級設置については、都道府県では各市町村に任せるという意見が、政令市と市区では増設を進める意見が比較的多い。特殊学級の運営方式を固定制、通級制、巡回制に分けてみると、1つの自治体においても特殊学級種別によって運営の方法をかえるなど、特殊学級設置・運営に関する自治体毎の対応は多様であり、その格差は大きい。通級制は難聴・言語障害学級を中心に定着しており、巡回制導入への期待は少なくない。通級制では校外通級に伴う授業時間の減少と親の付き添いを、また、通級制と巡回制の両者については制度の未確立を問題とする市区が多い。院内学級では、入退院の転出入によって学級を維持できる安定した児童生徒数を確保できないこと、中学校段階では教科担任制に対応できる教師数を確保できないことが最も大きな問題である。短期入院児童生徒への対応が中心になる院内学級では、原籍校との連携を重視した設置・運営の検討が必要になる。登校拒否については、ほとんどの市区が問題とし、その対策としては、カウンセラーによる相談体制、保健室の充実、個別的なわかる授業の研究・導入など、全般的な学習・生活のサポート体制整備が有効と考えられている。幼稚園と高校の特殊学級設置の必要性を指摘する市区は比較的多く、幼・小・中・高校を通した弾力的な特殊学級設置・運営がもとめられている。I surveyed the actual conditions of all sorts of special classes in Japan's 47 prefecutures in 1989 and 1990. The chairmen of the prefectural education committees were asked to report on the requirements for establishing special classes,their numbers and details of management. My purpose was to study the establishment and management of special classes flexible enough for children with special educational needs. Special classes have been set up in about half of public elementary and junior high schools nationwide,but there are still some cities that have none,while others have them in every school. The metropolitan and prefectural governments intend to entrust the establishment of further special classes to the individual wards,cities towns and villages. Among them,capital cities,wards and cities are determined to increase the number of special classes. There are three types of management systems: full-time special classes,part-time special classes,and classes with itinerant teachers. Measures and management differ greatly from district to district. Most of the hearing impaired and the speech disordered are provided with part-time special classes,but some voice their desire for classes with an itinerant teacher,because of the short class time,the need for an escort and the long hours spent on escorting. Most cities and wards have not resolved the question of part-time special classes versus classes with an itinerant teacher. With no stable number of pupils and a lack teachers to cover the full middle school curriculum,hospitals also have problems keeping their special classes going. If children are hospitalized for only a short time,close cooperation between school and hospital is crucial. Most cities and wards appreciate some children's refusal to attend school and are examining the problem in search for countermeasures in the areas of learning and living as well. Cunselling systems,health inspection rooms and individual teaching are being considered among other comprehensive measures. Many cities and wards pointing out the need for special classes in kindergartens and high schools,are actually concerned with establishing a total education system for the handicapped from kindergarten through high school.