著者
松原 優里 阿江 竜介 大矢 幸弘 穐山 浩 今井 孝成 松本 健治 福家 辰樹 青山 泰子 牧野 伸子 中村 好一 斎藤 博久
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.767-773, 2018 (Released:2018-07-18)
参考文献数
24

【背景・目的】日本における食物アレルギー患者数は年々増加しているが,食物アレルギー患者数の頻度分布(有病率)は,未だ明らかではない.本研究では,それらを明らかにし,新たな調査方法を検討する.【方法】政府統計等利用可能な資料を用いて,食物アレルギー患者数を推計する.【結果】乳幼児期では「自己申告」で約80万人,「医師の診断」で約30万~50万人,学齢期では「自己申告」で約60万人,「医師の診断」で約35万人と推計された.成人では,消費者庁が即時型症状の受診者数を調査しているが,対象が限定されており,患者数の推計は困難であった.【結語】乳幼児はエコチル調査に症状や診断の有無・血液検査を追加することで,年次変化を把握でき,学齢期では文部科学省の調査が有効である.成人期では大規模調査は少なく,国民健康・栄養調査や国民生活基礎調査などに付随した調査が有効である.一方で個々の情報源の抱える問題点も明らかにした.
著者
豊國 賢治 山本 貴和子 吉田 明生 宮地 裕美子 樺島 重憲 福家 辰樹 野村 伊知郎 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1383-1390, 2021 (Released:2021-12-14)
参考文献数
18

【背景・目的】アトピー性皮膚炎(AD)は低蛋白血症を伴う重症AD;severe protein-loss in atopic dermatitis(SPLAD)がしばしば問題となる.本研究では,SPLADの急性期治療と予後を明らかにする.【方法】国立成育医療研究センターアレルギーセンターで入院加療を行ったSPLAD患者61人を対象に,入院中と治療開始3年後までの経過について診療録情報を用いて後方視的に検討した.【結果】全例が入院中に外用剤治療にて寛解導入を行い低蛋白血症や電解質異常が改善した.全身性ステロイド薬・免疫抑制剤,生物学的製剤を含む全身療法を行った児は認めなかった.寛解維持のためにステロイド外用薬(TCS)の間欠塗布によるプロアクティブ療法を行い,3年後に95%がTCS使用頻度を週2日以下へ減量して寛解を維持した.入院時に1歳未満の乳児で,3年後に卵,牛乳,小麦いずれか1つ以上の食物を除去していた児は29%であった.【結語】アトピー性皮膚炎の最重症型であるSPLAD患者は急性期に外用剤治療を行うことで寛解導入可能であり,多くの患者が長期間ADの寛解維持が可能である.
著者
平井 聖子 山本 貴和子 樺島 重憲 福家 辰樹 庄司 健介 小澤 克典 左合 治彦 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1223-1229, 2023 (Released:2023-12-13)
参考文献数
25

【背景】抗菌薬アレルギー(Antimicrobial allergy:AA)の申告の多くは,真のアレルギーでないといわれている.近年,妊婦においても,AA評価は安全に実施できるという報告が増えている.【目的】AA疑いの妊婦に対する分娩前のAA評価の有用性について,検討することを目的とした.【方法】対象は,AAを申告しアレルギーセンターに紹介された妊婦とした.問診・皮膚テストを行い,分娩時に使用できる薬剤を選定した.【結果】合計25症例(のべ24妊婦)が対象となり,最多の被疑薬はセフェム系で13例(52.0%),次いでペニシリン系で9例(36.0%)であった.問診のみでAAを否定された妊婦は5例で,即時型10例,非即時型6例,不明4例であった.分娩時に抗菌薬が必要と判断された21名全員が当センターが定める第一選択薬(βラクタム系)を使用し,手術部位感染を認めなかった.抗菌薬使用によるアレルギー反応は,認めなかった.【結論】AAを申告した妊婦に対して,分娩前にAA評価を行い,分娩時に安全に第一選択抗菌薬を使用できた.
著者
福家 辰樹
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

アトピー性皮膚炎に対する長期寛解維持療法として近年欧米で提唱されるプロアクティブ療法(ステロイド外用薬による予防的間欠塗布法)について、当大学皮膚科学講座および国立成育医療研究センターアレルギー科の研究協力のもと、ランダム化並行群間比較試験を行い安全性および有効性を検証した。1 年間の研究期間において、両群とも明らかな副腎抑制を来さず局所副作用に差を認めなかったが、症状スコアや血清 TARC 値はプロアクティブ療法群で有意に低下し維持された。さらに同群では総 IgE の上昇が抑えられ、ダニ特異的 IgE の感作を有意に予防した。 「抗炎症外用薬の予防的間欠塗布によって湿疹の無い状態を維持する」という新たなアプローチによって、アレルギーマーチの原因の1つであるダニアレルギーに対し経皮感作を予防する可能性が示唆された。
著者
海老島 優子 末廣 豊 岡藤 郁夫 福家 辰樹 二村 昌樹 村田 卓士 森川 みき 南部 光彦
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.75-83, 2016

アトピー性皮膚炎 (atopic dermatitis : AD) 治療には適切なスキンケア (清潔と保湿) が必要であるが, 入浴方法・石けん使用の是非・保湿剤の塗り方などについて具体的な方法を示すエビデンスは乏しい. 今回われわれは国内外のアトピー性皮膚炎ガイドラインおよび日本小児アレルギー学会員を対象としたアトピー性皮膚炎診療実態調査 (以下AD実態調査) をもとに, 現時点で妥当と考えられる適切なスキンケアについて検討したところ, 以下の4点となった. ①1日1回以上の入浴, ②適切な方法での石けんの使用, ③1日2回以上の保湿剤の確実な塗布, ④抗炎症薬と保湿剤の塗布順序に関しては患者の皮膚状態や塗りやすさなど考え, 続けやすい方法を指導する, である. 今後のわが国におけるエビデンスの蓄積が期待される.
著者
渡部 達 福家 辰樹 田島 巌 野村 伊知郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1541-1547, 2013-11-30 (Released:2017-02-10)

今回,我々は蛋白漏出性胃腸症を伴う消化管アレルギーを呈した乳児例を経験したので報告する.症例は5カ月の女児である.2320gの低出生体重児で,完全母乳栄養で育ち,成長発達に異常は認めなかった.生後55カ月頃に暇吐,下痢を主訴とした胃腸炎の診断で入院した.入院時に全身浮腫,胸腹水,血便を含む消化器症状を認め,低アルブミン血症,低ガンマグロブリン血症の状態でCRPも高値であった.消化管アレルギーが原因と考え,診断的治療として新生児乳幼児用成分栄養剤(エレンタール[○!R]P)の摂取を開始した.その後症状は改善したが3週間後に症状が再燃した為,国立成育医療研究センターに入院となった.消化管内視鏡検査では大腸に多発する輪状発赤斑を認め,生検組織検査では盲腸から直腸にかけて中等度の慢性炎症性病変を認めた.臨床経過とあわせてエレンタール[○!R]Pによる消化管アレルギーと診断された.アミノ酸調整乳(エレメンタルフォーミュラ[○!R]に変更して症状は改善し,成長・発達を含めた経過は順調である.近年注目されている本疾患について若干の考察を加えた.