- 著者
-
野辺 陽子
- 出版者
- 福祉社会学会
- 雑誌
- 福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.51-66, 2020-05-31 (Released:2021-06-23)
- 参考文献数
- 23
本稿では,筆者が特別養子縁組の子ども当事者9 名へのインタビュー調査をしながら感じたことを起点に,「多様な親子」に対する支援を考える際の論点を提示するものである.
まず,近代家族との関係で「多様な親子」の定義をしたのち,「多様な親子」についてどのような支援が必要だと考えられているのか,
また,そもそも制度がどのように構築されているのかを確認する.次に,特別養子制度において議論されている支援について確認し,
本稿では特別養子制度の当事者の支援の中でも子ども当事者の支援に議論を絞り,特に子どもの「アイデンティティ」に関する支援について取り上げる.
次に,筆者が当事者へのインタビュー調査を通じて,現在の支援に対して感じた違和感や疑問について,ナラティヴ・アプローチを用いた社会学的研究の知見を参照しながら,
言語化していく.具体的には,①「回復の脚本」を書くのは誰か?,②支援の前提図式を問い直す,
③支援におけるドミナント・ストーリーとオルタナティヴ・ストーリーの循環・併存・錯綜,④多様な当事者に対する多様な支援という論点を議論する.
最後に,福祉社会学が今後取り組むべき課題として,「多様な親子」の支援とナラティヴ・アプローチの知見を架橋し,
多様な当事者の存在を視野に入れた支援の経験的研究と理論的研究を深めていくことを指摘する.