著者
金子 功一 大芦 治 Kaneko Kouichi 大芦 治 オオアシ オサム Oashi Osamu
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.79-87, 2010-03

本論文では,近年の学習方略に関する海外および日本における研究の動向を分析した。その結果,学習方略はその研究対象として,学習全般と個別の教科を扱ったものの双方があること,研究の多くが自己効力感や価値といった動機づけ要因,学習方略に対する認知や学習観を代表とする自己制御要因などとの関連を検討していることなどが明らかになった。また,学習方略の測定に関する諸問題についても検討を加えた。そして,今後の課題として,学習方略と発達差,将来の目標,教師の職業的援助などに関する研究を行っていく必要性を論じた。
著者
金子 功一 江部 靖子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P1212, 2010

【目的】近年,在宅生活者の環境面で身体機能面以外にも様々な問題が生じ,在宅生活の継続が困難となっている事例がしばしば様々なメディアで取り上げられている事は周知の通りである.当診療所訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)でもその様な事例を経験している.本研究は,それらの事例を再度確認し,経過・対応方法などを検討し今後の更なる訪問リハ業務の質の向上を目指す目的で実態調査を行った.若干の考察を加え報告する.【対象者と方法】対象者は2002年1月から2009年9月までの訪問リハ利用者298名のうち,明らかに目的で述べた様な状況の5名(男性1名,女性4名)である.方法は対象者の属性に加え,1)対象者側と介護者が抱える問題点,3)訪問リハ介入時難渋した点,4)各事例への対応方法,5)その後の経過を訪問リハ記録より後方視的調査を行った.【説明と同意】その状況上全ての対象者に説明を行なってはいないが,ヘルシンキ宣言と個人情報保護法に基づき,一部の対象者・家族に本研究を説明し,同意を得た.また全事例の担当ケアマネ,介入した行政機関など連携を取った他職種にも同様に同意を得た.調査結果は研究目的以外に使用しない事と個人情報の漏洩に十分に注意した.【結果】1.対象者の属性は,要介護度と寝たきり度の内訳,対象者の家族構成について調査を行った.1)要介護度の内訳は,要介護2が1名,同3が2名,同5が2名であった.2)寝たきり度の内訳はA-2が2名,B-1が1名,C-1が1名,C-2が2名であった.3)家族構成の内訳については,息子と2人暮らし-2名,夫と2人暮らし-1名,妻もしくは夫と子供の3人以上の家族構成-2名であった.<BR>2.対象者と介護者が抱える問題点は以下の通りである(複数回答).1)対象者の抱える問題点は,認知症-3名,精神疾患-3名(うつ状態-2名,統合失調症-1名),その他-2名であった.2)介護者の抱える問題点は,介護放棄-4名,精神疾患-3名(うつ状態-2名,統合失調症-1名),暴力・虐待(ドメスティックバイオレンス含む)-3名,アルコール依存症-2名であった.対象者と介護者が共に何らかの問題点を複数抱えている事例も見られた.<BR>3.訪問リハの介入時難渋した点は,1)対象者への様々なアプローチが困難・時間要す-4名,2)主介護者・家族への介護方法指導が困難-4名,3)他職種と連携が取りにくい-3名,4)訪問リハの介入が困難な環境-2名,5)その他-2名であった(複数回答).<BR>4.各事例の対応は1)頻回なサービス担当者調整会議の開催-5名,2)地域包括支援センターに連絡(担当ケアマネ経由)-5名,3)対象者・介護者の訴えを傾聴,主張の一部受け入れなど-3名であった.4)警察へ通報(緊急時.ケアマネ経由)も2例存在していた(複数回答).<BR>5.その後の経過は,1)終了-3名,2)訪問リハ継続-2名であった.終了事例の内訳は,施設緊急入所-2名,他サービスに移行-1名であった.【考察】1.対象者の要介護度・寝たきり度が軽度でも,何らかの問題を抱えている事例がいた.高次脳機能障害や精神疾患の存在が訪問リハの定期的な継続の妨げになることを再認識した.また調査前,少ない家族構成の対象者に社会的な問題点が生じると考えたが対象者以外の複数の家族が問題点を抱える事例もあった.家族構成と関係なく何らかの問題が起こる可能性がある事が考えられた.<BR>2.対象者と介護者の抱える問題は予想通り多岐にわたっていた.対象者と介護者の両方に何らかの問題が複数あり訪問リハの介入,スムーズな継続を困難にしていた事例も存在した.介護者の暴力・虐待などの背景に複雑な家族関係が存在する事は諸家の報告で明らかにされている.他職種との連携が必須であると考えられえる.<BR>3.しかしながら,介護者の存在が時にはその連携の妨げになっている事例も存在する.本調査でも同様であり通常の事例よりも他職種との連携をより重要視して訪問リハに関わる必要があると考えられる.<BR>4.本調査では全事例において,困難な中でも比較的緊密に他職種と連携が取られていた.これは訪問リハ単独で問題を解決せず他職種と連携して関わる事を担当が意識していたためと考えられる.対象者・介護者へも介入し,関係を改善しようとする担当の姿勢も見られた.ただし,警察への緊急通報,施設へ緊急入所に至った事例もあり,在宅での訪問リハの介入の限界も明らかになった. 訪問リハに従事する理学療法士は理学療法の知識・技術だけではなく他職種と連携し様々な視点で対象者と介護者・家族に関わっていく事が大切である.【理学療法研究としての意義】訪問リハの実践に際しては,対象者の身体機能面へのアプローチだけでなく,その在宅生活全体を取り巻く物理的・社会的環境面へも合わせてアプローチを行なっていく必要がある.しかしながら,その施行に当たって様々な阻害因子が存在している事もまた事実である.様々な面で在宅介護の情勢が変化している昨今,本調査では決して対象者が多いわけではないが, 調査結果はその現状を端的に示唆したといえる.
著者
金子 功
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.974-987,1139, 1992-07-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
38
被引用文献数
11 14

男女による違いや加齢により嚥下時の舌骨運動がどのように変化しているかを解析し, 嚥下動態を定量的に評価することを今回の研究目的とした. 対象は咽喉頭異常感症の男性44例, 女性27例とした. 頸部側面からX線映画撮影を行い, 舌骨体下端の測定点の運動をモーションアナライザーで分析した.〈結果〉1. 舌骨の安静時位置は男女差があり, 女性が男性よりも高位にあった.2. 舌骨の安静時位置は, 男性女性とも加齢により下降が認められた.3. 嚥下時間, 挙上距離は加齢により延長し, これは挙上第一相時間, 挙上第一相距離の延長によると考えられた.