著者
南山 泰之 照井 健志 村山 泰啓 矢吹 裕伯 山地 一禎 金尾 政紀
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.147-156, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)
参考文献数
20

「データジャーナル」は従来の「出版」の枠組みを活用しながら,データの保存や再利用を促すために有効な手法と考えられているが,国際的にも概念形成の途上である。本稿では,国内におけるデータジャーナル構築,運用に向けた具体的な検討材料を提供するため,国内での実践例として2017年1月に創刊されたデータジャーナル『Polar Data Journal』を紹介する。具体的には,背景としての国立極地研究所におけるデータ公開の歴史,構想から創刊に至るまでの合意形成プロセス,「データジャーナル」を通じてデータを適切に取り扱うために必要な要件やワークフロー,およびそれらと連携する基盤構築について示す。
著者
渋谷 和雄 金尾 政紀
出版者
国立極地研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.1992年1月に行われた昭和基地を含む南極SCAR・GPSキャンペーンの解析を行うため、GAMITプログラム入力データファイル作成及び編集を行った。平成6年度用いたCVIEWに替わって平成7年度ではAUTCLN操作が出来るようになったので能率が上がった。SIO暦、GFZ暦を用いた比較解析を行った。2.平成6年度は3日間データの解析しかできなかったが、平成7年度では17地点、10日間データを用いた解析ができた。SIO暦によると、昭和基地GPS基準点(No.23-16金属標)のITRF92地心座標値はX=1766182.964m,Y=1460336.492m,Z=-5932285.883mであった。同じデータセットについてGFZ暦を用いるとX=1766182.947m,Y=1460336.521m,Z=-5932286.005mであった。標準誤差はいづれも4-5cmであった。Z成分の差が大きい(12cm)が系統的な差かどうかは今後の課題である。3.GPS基線解析により2-3cmの収束精度を保証するためにはsite information table, session information tableの確証が必要である。日々の解は4-5cm確度で安定はしているが各基地のアンテナオフセットが、どの点でも1cm精度で安定しているかどうかは心許ない。測量用の三脚ではなく恒久的なピラ-での観測が重要である。4.昭和基地においては1993年2月からDORISビ-コンが運用されている。No.23-16金属標のDORIS解による地心座標値はX=1766182.526m,Y=1460336.784m,Z=-5932285.380mであった。比較解析結果の一部を測地学会誌に発表した。5.1998年より定期的なVLBI観測を開始する計画が具体化した(APT95 International Workshopにて発表)。GPSとVLBIの同時比較観測により地球動力学基礎データが得られるであろう。
著者
金尾 政紀 神沼 克伊 Masaki Kanao Katsutada Kaminuma
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.156-169, 1995-07

昭和基地(69.0°S, 39.6°E)では, 1967年より短周期, 長周期各3成分のアナログ記録による地震記象の読み取り作業が開始された。越冬の地球物理定常隊員により観測の保守がなされ, 着震時の読み取り作業が現在まで継続して行われている。験震した走時と震源のデータは, アメリカ地質調査所(USGS)と国際地震センター(ISC)に定期的に送られると共に, 極地研究所で再験震を行い"JARE Data Reports (Seismology)"として発刊されている。近年, エレクトロニクス技術の進歩によりモニター記録の質が向上すると共に, 同一の基準で再験震がなされた。本稿では, 1987年より1993年の7年間における験震データを用いて, 昭和基地で記録される地震の空間分布と時間的推移を詳しく調べ, またISCデータを用いた結果と比較することで昭和基地の地震検知率について考察した。Phase readings of teleseismic earthquakes at Syowa Station (69.0°S, 39.6°E), Antarctica have been carried out since 1967 by use of analog records of three-component short-and long-period seismometers. Seismic observations and phase readings have been conducted by the wintering members for geophysics of the Japanese Antarctic Research Expedition (JARE). The arrival times of P-waves have been reported to the United States Geological Survey (USGS) and the International Seismological Center (ISC), then published as the "JARE Data Reports (Seismology)" by the National Institute of Polar Research (NIPR). In recent years, the quality of chart records has been improved by the advance of electronics. In this paper, the hypocentral distribution of the detected earthquakes for the seven year period from 1987 to 1993 was presented and the spatial distribution and time variations for epicental parameters were investigated. Moreover, the detection capability of earthquakes was discussed in relation to the report from ISC data.
著者
金尾 政紀 神沼 克伊 渋谷 和雄 野木 義史 根岸 弘明 東野 陽子 東 敏博
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.16-44, 1999-03

1997年度(第38次日本南極地域観測隊;以下JARE-38と略す)を中心に, これまで定常観測で行われてきた地震観測システムが, ハード及びソフト両面共に大幅に更新された。特に, 建造以来25年以上が経過し, 施設の老朽化が指摘されていた旧地震感震器室を閉じ, 器材をすべて撤収した。そして1996年度(JARE-37)に建設した新地震計室へ, 短周期(HES)及び広帯域(STS-1)地震計を移設あるいは新しく設置すると共に, 地学棟にワークステーションによる波形データ収録装置を新たに導入して, パソコンにより収録する旧システムから切り替えた。この地震計室及び収録装置すべてを含めての新システム導入により, 昭和基地では越冬中の地震計室見回りの労力が半減し, 基地LANを利用してのデータ収集が合理化されたため, これまでの保守作業がかなりの部分で軽減された。今後はインマルサット回線をさらに利用して, 基地外へのデータ公開の迅速化をめざす。さらに常時IP接続が可能になれば, 国内での験震処理が可能となり, 現地での完全自動化が期待される。JARE-38越冬中の経過を中心にシステム更新の詳細を記載すると共に, インターネット利用を含めたデータ公開についても簡単に述べる。