著者
宋 鎮祐 笠原 浩三 金山 紀久
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.142-150, 1996-08-15
被引用文献数
3

農業経営計画問題は、農業経営の実態調査→係数整理→計画策定→実践評価という経営管理の全体に関わるものであり、経営改善のための重要な役割を担っている。しかし、今までの科学的、数学的方法においては、意思決定者の主観に係わるあいまいさを取り扱う手段がなかった。したがって、得られた結果が理屈の上では確かに正しいにもかかわらず、実体にそぐわなかったり、実感に合わなかったりということが少なくなかった。本研究では、農業経営者の意思決定のための環境条件には多くのあいまい性が存在すると考え、ファジィ理論におけるあいまいさが農業経営設計のどのよな側面で有効な意味を持ちうるかを畑肉牛複合生産農家を通じて考察する。また、ファジィ理論を適用した一分野であるファジィ可能性計画問題をどのような形式で農業経営計画の手法としてモデル化すべきかを検討する。まず、ファジィ計画問題は、意思決定者の目標や制約に対する希求水準のあいまいさを扱うものと、目的関数や制約条件の係数のあいまいさを扱うものに区分し、実際の畑肉複合経営の策定を試みる。次に、具体的な分析対象として、鳥取県の気高町における畑肉複合経営農家を取り上げ、この分析を通じて、ファジィ理論が農業経営計画の意思決定過程の多くのあいまい性を有効に取り扱うことができることを実証的に検討するものである。
著者
仙北谷 康 樋口 昭則 金山 紀久 耕野 拓一 窪田 さと子
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

家畜飼料に含まれている抗生物質を削減しようとする取り組みは様々な場面でみられるようになってきている。また代替技術もいくつか提案されている。しかし現状としては、抗生物質を投与しないことによって発生する追加的費用を、消費者の負担に求めることは困難であるから、生産の側でこれを内部化しなければならない。抗生物質を含む飼料に頼らない畜産フードシステムの成立は、現状としては生産者側の取り組みによるところが大きい。
著者
金山 紀久 永木 正和 石橋 憲一 伊藤 繁
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、(1)フードシステム(以下FSと略)に援用可能な複雑系経済理論の検討、(2)複雑系経済理論を援用したFSの時間的構造変化の過程の解明、(3)複雑系経済理論を援用したシステム環境の変化と空間的構造変化の過程の解明、の三つの課題を設定して研究を行った。第1の課題に対する研究では、複雑系の考え方に基づく経済理論を背景にFSを捉えることの必要性を明らかにした。具体的には、「ゆらぎ」と「創発」の考え方をFSの研究に援用することの意義を明らかにした。第2の課題に対しては、牛乳・乳製品のFSと小麦のFSを分析対象として取り上げた。牛乳・乳製品のFSでは、雪印食品の食中毒問題が、経営状況の悪化の過程で停電を引き金にして起こっているが、発生要因を確定できるような単純系ではなく、従業員のメンタルな側面など複雑系のもとで起こっており、このような複雑系下においても食品の安全性を確保するシステムの必要性を明らかにした。また、北海道の加工原料乳の製造は牛乳のFSの「ゆらぎ」をシステム内に緩和する働きを持っており、加工原料乳制度は、その働きをサポートする制度であることを明らかにした。小麦のFSでは、これまでの食糧管理制度が、原料生産者と実需者の関係を断ち切るよう形で生産者を保護しており、需給のミスマッチを発生させていた。FSは原料生産者、加工業者、流通業者、消費者の各主体によって形成され、一つの主体だけではシステムを形成できず、一つの主体だけ単独に存続できるような制度はシステム上問題である。しかし、つい最近まで制度設計者にその認識が希薄であったことを明らかにした。第3の課題に対しては、食品工業の立地変動を分析対象とし、食品工業の立地変動に内生的な集積力があることを確認した。また、FS内での創発によって生まれ、ゆらぎをもたらす技術について、化工澱粉を取り上げ、その特性と冷凍食品への利用について整理した。