著者
崔 炳玉 永木 正和
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.91-102, 2006 (Released:2007-05-11)
参考文献数
10

卸売市場の価格決定方法は, 従来のセリ方式にかわって, 相対方式が増大している. 近年の川下の流通環境の変化に対応するものであるが, こうした卸売市場における形成価格が変遷する中, 現在の卸売市場の価格がさまざまな取引形態に対して適切な指標価格として機能しているかどうかを検証してみる必要がある. そこで本研究は, 東京都中央卸売市場の9卸売市場における主要野菜品目の卸売市場平均価格に関する「価格効率性」を, Fama (1976) の弱度効率性仮説に基づいて, 時系列分析法の援用によって計量的に検証する. 分析期間は1989年から2002年までの14年間で, 卸売市場の価格決定方式が大きく変遷した2期に区分して, 価格効率性の比較分析を行った. 分析手順は, Engle and Granger (1987) が提示した2段階推定手続きによる.分析結果によると, 相対取引がかなり伸長した現在の東京都中央卸売市場は, 入荷量変動に起因して短期には価格変動を起こしているが, 長期均衡の観点からは, 外的ショックを回復させようとする価格挙動が統計的に確認され, 以前よりも価格安定指向を強めていた. また, その結果でもあるが, 東京都内の中央卸売市場間の, いわば空間的価格格差も縮小していた. 時系列的にも, 空間的にも価格均衡を指向する作用が機能していて, 現在の卸売市場価格は効率的であると結論づけた.
著者
永木 正和
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.555-570, 1977-07-25

露地野菜生産者は,作付面積の増大が価格低落をもたらすという事実に熟知していても,自らによっては作付面積を制御できないため,クモの巣サイクルに陥って,価格暴落による損失を余儀なくされていた。一方,消費者もクモの巣サイクルのもたらす価格高騰が家計を不安定にし,露地野菜が必需的食料であるだけにその家計へのシワ寄せも大きかった。本来,この種の問題は,基本的には,生産者の投機的な作付行動の結果としてもたらされたものであり,投機性を排除した生産者の積極的な市場対応によって,自ら作付面積変動を制御して,需給均衡する価格の実現と維持を計らなければならない。しかし,現実には生産者が市場対応をとりうるだけの条件が整備されていないし,それがなしえた場合にも限界があった。そこに,政府等の政策主体が,露地野菜におけるクモの巣価格-供給量変動を断ち切るための積極的な政策対応がとられるべき必然性がある。小稿は,1)そのような安定価格と安定供給を実現するための政策対応として,いかなる種類の政策がとられるべきであるか,2)現行の国の価格補填政策がいかなる問題点を含むか,3)それではいかなる方式の補填政策が採用されるべきであるかについて考察した。要約すれば以下のようである。(1)価格安定化対策としての流通,市場対策としては,価格形成には直接関与せず,価格の空間的,時間的な競争均衡達成が可能な限り容易になしうるように体制整備することである。具体的には,市場,産地情報の収集,分析,公表と,産地が積極的市場対応をなしうる条件としての高生産力専業農家の育成,その集団化による主産地化,および共販体制の整備と計画生産,計画販売の推進にある。(2)現在の国の「野菜価格補填事業」は,それが生産者所得を補償する事後的な対応であるとともに,次年度の価格高騰を防ぐ事前的な対応の双方を狙いとする点で意義がある。しかし,a)全産地,全市場を対象とする補填政策でないために,限界生産者,あるいは弱小産地の切り捨てになる政策になりかれないし,価格変動抑止効果も小さい。b)補填額に限度があり,真の生産者収益の安定を保証するものではなく,しかもクモの巣サイクルを必らずしも収歛方向に指向させるものでない点で不十分である。c)「保証基準価格」は,所得補償と価格高騰抑止のいずれを重視するかによって算定方法が相違するが,現行の補填政策はその狙いが明確でない。(3)現行の補填方式の問題の反省に立って,所得補償と価格暴騰抑止の双方を同時に目標とする補填方式を提示した。それは,2段階的な補填方式をとり,基本的には,需給均衡供給量を超過して収益低下をもたらす場合,それが反収増による収益低下であれば適切な水準で補填し,経営の安定を計る。しかし,作付面積の増加による場合には,需要法則に従って収益が低下し,これによって生産者の自主的制御作用が働く余地を残した。この点で京都府の行っている「粗収益補償方式」と明確に相違する。次に,収量変動を考慮しながら,来期の価格暴騰を防ぐため,ある一定の信頼水準において需要価格が一定以上には上昇しないようにするための補填額の算出方法を示した。以上のような,2段階の補填方式を採用するなら,生産者の直面する需要曲線は2重屈折線として示される。ここに提示した補填方式が採用されることによって本来の価格安定,経営安定,ひいては需要に適合した安定供給が達成されるであろう。
著者
礒田 博子 安部 征雄 東 照雄 中村 徹 藤村 達人 永木 正和 宮崎 均 中村 幸治 繁森 英幸
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

北アフリカ乾燥地域を対象に生物資源・遺伝子資源関連情報収集・機能解析、生態環境調査を行なった。その結果、百数種類のアロマ植物、7種類のオリーブオイルおよびオリーブ葉抽出物の抗ガン、抗アレルギー、神経保護、美白、育毛活性を発見した。研究成果関連学術論文発表35編、国外・国内特許出願6件、国際・国内学会発表25件、シンポジウム開催1回、現地調査13回、データベース構築・公開などの活動を行った。
著者
金山 紀久 永木 正和 石橋 憲一 伊藤 繁
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、(1)フードシステム(以下FSと略)に援用可能な複雑系経済理論の検討、(2)複雑系経済理論を援用したFSの時間的構造変化の過程の解明、(3)複雑系経済理論を援用したシステム環境の変化と空間的構造変化の過程の解明、の三つの課題を設定して研究を行った。第1の課題に対する研究では、複雑系の考え方に基づく経済理論を背景にFSを捉えることの必要性を明らかにした。具体的には、「ゆらぎ」と「創発」の考え方をFSの研究に援用することの意義を明らかにした。第2の課題に対しては、牛乳・乳製品のFSと小麦のFSを分析対象として取り上げた。牛乳・乳製品のFSでは、雪印食品の食中毒問題が、経営状況の悪化の過程で停電を引き金にして起こっているが、発生要因を確定できるような単純系ではなく、従業員のメンタルな側面など複雑系のもとで起こっており、このような複雑系下においても食品の安全性を確保するシステムの必要性を明らかにした。また、北海道の加工原料乳の製造は牛乳のFSの「ゆらぎ」をシステム内に緩和する働きを持っており、加工原料乳制度は、その働きをサポートする制度であることを明らかにした。小麦のFSでは、これまでの食糧管理制度が、原料生産者と実需者の関係を断ち切るよう形で生産者を保護しており、需給のミスマッチを発生させていた。FSは原料生産者、加工業者、流通業者、消費者の各主体によって形成され、一つの主体だけではシステムを形成できず、一つの主体だけ単独に存続できるような制度はシステム上問題である。しかし、つい最近まで制度設計者にその認識が希薄であったことを明らかにした。第3の課題に対しては、食品工業の立地変動を分析対象とし、食品工業の立地変動に内生的な集積力があることを確認した。また、FS内での創発によって生まれ、ゆらぎをもたらす技術について、化工澱粉を取り上げ、その特性と冷凍食品への利用について整理した。
著者
永木 正和 木立 真直 納口 るり子 茂野 隆一 松下 秀介 川村 保 広政 幸生 長谷部 正 坪井 伸広
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.国内研究本年度は研究最終年度にあたるため、各分担者間の研究分担課題の最終微調整、課題の確認、補足的な調査活動、および研究会での研究成果の報告を内容とする活動を行った。国内調査等は個別補完的に行うものとし、小規模にとどめた。2.海外交流、海外調査(1)韓国の農産物・食品流通は日本と類似の展開が認められている。わが国の韓国からの輸入依存が高まる可能性が高いとの認識から、以前より韓国の研究者集団(韓国生鮮農産物新流通研究会)と交流をもっていたが、相互研究発表の形でソウルにおいて「日韓共同シンポジューム」を開催した。情報システムと物流システム(特にロジスティックス)の構築が主要な議論となった。(2)日韓シンポジュームの後は韓国農村で生鮮野菜の流通システムを調査した。3.秋以降は数次の研究会(主に筑波大学にて)(1)筑波大学で公開研究会を開催し、分担者は順次研究報告した。最後の2月の研究会では、本研究全体の統一コンセプトの再確認、ならびに総体的な結論について討論した。(2)研究成果を要約的に言及すると、方法論的には産業組織論であるが、主として川下に切り口を置くアプローチをとった。ちょう度、食品の安全性問題や風評被害が発生した時期であり、これまで市場経済学やマーケッティング経済学ではあまり重視されてこなかった「製品品質の1つとしての安全性」、「製品に付加する1つのサービスとしての安心」を市場流通させるための不可欠な商品属性であることを見いだし、これを取引理論、情報理論を手がかりにした経済学理論を構築した。また、経済学の範疇を超えて、消費者倫理に関しても、一定の考え方を提示できた。(3)ホーム・スキャン・データ等の新しいデータ利用等から、この時期に発生した食品の品質事故問題、また伝統食品対遺伝子組み換え食品の対比での商品の認証や差別化流通に関するタイムリーな消費者行動の実証分析をなし得た。(4)消費者行動の多様化に対応して国内流通・加工業が顧客をターゲット化しており、それが商品に付随する品質やサービスの多様化、市場を主導している小売り市場の多様化、海外からの原料農産物積極輸入の背景が解明された。国内小売業の競争戦略、品質管理戦略に端を発して流通システムが海外からの輸入急増を導いていた。海外での市場再編動向の最新事情も入手した。4.本研究の成果と公表の仕方今年(平成14年)6月末を目処にして専門著書としての公刊を予定している。各分担者はさらなる研究成果の精緻化と推敲に取り組んでいるところである。
著者
松田 敏信 永木 正和 長谷部 正 草苅 仁 鈴木 宣弘 伊藤 房雄 茂野 隆一 趙 来勲 山口 三十四
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,少子高齢化と食の安全性をキーワードとして,消費者需要を中心に生産や国際貿易などフードシステム全般のメカニズムを経済分析により明らかにすることである.主な研究成果として,代表者の独自モデルLA/QUAIDSによって,都市別・月別の疑似パネルデータを推定し,少子高齢化が食料需要に与える影響を明らかにした.また,需要システムの新たな独自モデルを複数提案し,さらに食料生産の計量経済分析や国際貿易の応用ミクロ経済分析等を実施した