著者
百瀬 昭志 遠間 由理 大村 誠 斉藤 久夫 澤田 善章 美濃 真成 北川 柾彦 舟生 富寿 鈴木 唯司
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.585-591, 1993-04-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
5
被引用文献数
1

症例は50歳男性で, 肝硬変を合併した慢性腎不全患者である. 肝機能の低下は軽度だが, 門脈一大循環シャントにより高アンモニア血症をきたし昏睡を繰り返していた. 肝性昏睡起因物質と尿毒症物質の除去を目的に血液透析を施行したが, 高アンモニア血症は持続し昏睡も改善しなかった. また透析後の動脈血アンモニア濃度は透析前よりも有意に上昇していた.この増加の原因としては, 透析による蛋白異化と食事のために消化管におけるアンモニア産生が増加するためと考えられた.透析中の動脈血pHが過度のアルカローシスとならないように, pHがやや酸性の透析液を使用し, 透析中に分枝鎖アミノ酸とグルタミン酸の混合液を持続点滴しながら午後に透析をしたところ, 透析後の動脈血アンモニア濃度は透析前よりも有意に低下した. これに伴い透析前動脈血アンモニア濃度も正常値に近づき, 昏睡症状も消失した.pHがやや酸性の透析液を使用することや, 透析中にアミノ酸を持続点滴することは体内の蛋白異化亢進を抑え消化管におけるアンモニア産生を低下させる効果があるものと考えられる. さらに食事により動脈血アンモニア濃度が上昇する午後に透析をすることは効率的にアンモニアが除去できるものと考えられた.
著者
平山 順朗 小山内 幸 植松 和家 鈴木 唯司 舟生 富寿 兼子 直
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.301-308, 1985-06-30 (Released:2010-03-16)
参考文献数
5

入院中の透析患者100例に対し精神科医による面接を行い, 患者のおかれた背景の相違による精神症状の出現状態の差を検討した. 透析期間では, 3ヵ月から1年が精神的には最も安定しており, その他の期間では半数以上の例で抑うつが認められ, 3ヵ月未満では焦燥, 怒りなどが, 1年以後には明るさやおおらかさの喪失が多く認められた. 年齢との関連では26-40歳の年齢層で抑うつ, 焦燥, 悲観, 怒り, あきらめ, 死の不安, 攻撃などが高頻度で認められた. 家族の問題で最も精神症状が強く出現するのは離婚例で抑うつ, 明るさやおおらかさの喪失, 悲観, 焦燥, 怒りや攻撃などが半数以上の例で認められた. 子供の状況との関連では, 子供が18歳未満の例でやはり精神症状が高頻度でみられた. 職業との関連ではサラリーマンが抑うつ, 焦燥, 怒りが, 無職例であきらめ, 悲観, 明るさやおおらかさの喪失の出現頻度が高かった. また, 合併症を有する場合には自殺念慮を含めてさまざまな精神症状が高頻度で認められた.矢田部-Gilford性格検査による性格類型では, B型で抑うつ, 悲観, 怒り, 攻撃, E型であきらめ, 自殺念慮, C型であきらめ, 死の不安が多く出現し, D型で最も安定した性格であった.面接後の対応は, 主として抗うつ剤, 精神安定剤 (minor tranquilizer) などの薬剤投与で行ったが, 患者に対して病状の再説明を必要としたり, 継続的な面接を行った症例も存した. 継続的な面接により精神症状の出現率はあきらかに減少していた.
著者
舟生 富寿 工藤 茂宣 大野 和美 二川原 和男 人見 浩 鈴木 唯司 三国 恒靖 寺山 百合子 青木 敬治 平山 順朗 小野寺 孝夫 菅原 茂
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.823-836, 1975-09-30 (Released:2010-07-05)
参考文献数
34

Metabolism of adrenocortical hormone in patients with chronic impaired renal function was investigated in this study. Urinary 17-OHCS (total, free and fractions-com. F, comp. E, THF, THE) we(re measured by use of thin layer in these 12 patients, including 6 patients who were made to artificial dialysis. Three patients of them were studied on load with ACTH-Z 20 units/day for 3 days intramuscularly and 9 patients were studied on administration of cortisol (1 mg/kg of body weight) intra-venously. Moreover, blood free 11-OHCS was determined in 3 patients with treatment of artificial dialysis. Following results were obtained. 1) The excretion volume of urinary total 17-OHCS remained low coincidently with decrease in creatinine clearance on control, on load with ACTH-Z and on administration of cortisol. 2) In above mentioned patients, the rate of urinary free 17-OHCS to total 17-OHCS exhibited various values which may be influenced with glomerular and tubular lesion, being compared with certain values of normal control. 3) The fractions of urinary 17-OHCS showed small pattern similar to normal control. 4) The excretion pattern of urinary 17-OHCS fractions shifted to cortisol pathway from cortisone pathway on load with ACTH-Z as normal control. 5) In the group with non-hyper BUN, the changes of the excretion volume of urinary 17-OHCS was seemed to be similar to normal control in every 2 hours measurement on administration of cortisol, while in the group with hyper BUN, the changes was not observed. 6) In the patients with artificial dialysis free 11-OHCS remained within normal range but showed abnormal in diurnary variation.
著者
工藤 真哉 対馬 伸晃 澤田 善章 斎藤 文匡 本村 文一 高島 徹 古川 利有 鈴木 唯司 黒滝 日出一 増森 二良 渡辺 耕平 稲積 秀一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1594-1602, 1991-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

1983年10月より1989年6月までの間に弘前大学泌尿器科で膀胱移行上皮癌と診断定れ, BCG膀胱内注入療法をうけた120症例における副作用をまとめるとともに, 重篤な合併症とBCG投与との関連性について検討を加えた. 局所的には, 頻尿, 排尿痛などの膀胱刺激症状が102例 (85.0%), 血膿尿が46例 (38.3%) だった. 全身的には, 発熱が43例 (35.8%), 血清GOT, GPT値異常が9例 (7.5%), 全身倦怠感が3例 (2.5%) だった. 重篤な合併症としては, 膀胱容量が50ml以下の高度萎縮膀胱が4例に, 難治性関節炎が2例に, 間質性肺炎が1例に認められた. 高度萎縮膀胱の4例ともに, BCG膀注前後に膀胱部分切除術を施行定れており, 3例はBCG膀注回数が10回以上であった. 低膀胱容量状態に加え, BCG膀注回数が多いことが萎縮膀胱の誘因となることが推. 定れた. また, 4例中2例は非可逆性であり, 組織学的には, 筋層の線維化がより高度であったが, 結核性変化は認めず, 可逆性か否かは線維化の程度により決まると思われた. 難治性関節炎の2例ともに, 関節穿刺液の結核菌培養は陰性で, 非特異的炎症反応だった. 重篤な間質性肺炎の1例は, 気管支鏡生検組織において, 肺胞中隔の著明な線維化とリンパ球浸潤を認めたが, 結核性変化は認めず, BCGに対する過敏性反応が病因であると考えられた.
著者
工藤 誠治 稲積 秀一 鈴木 唯司 森田 秀 高橋 信好
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.1063-1066, 1989-07-20

患者は,28歳の男性で,1987年10月,腰痛を主訴に,某医受診し,精査目的にて同年11月11日,当院紹介入院となった.入院時の検査成績では,著明な腎機能低下が認められた他,超音波検査並びに,胃部CT撮影にて,両側腎皮質の厚い石灰化が認められた.腎生検では,一部に骨髄細胞を伴った骨形成の病理所見が得られた.その後,外来にて経過観察中であったが,1988年6月3日,再入院となり,現在,血液透析施行中である.腎における異所性骨形成は,比較的稀な疾患であり,しかもこれまでの報告例は,全て片側腎に限られていた.今回,我々は,両側腎における異所骨形成を認め,同時に慢性腎不全を呈する1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.両側腎における異所性骨形成は,我々の調べ得た限りでは本邦での他の文献発表は,認めなかった.