著者
北川 夏樹 鈴木 春菜 中井 周作 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_697-67_I_703, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
20

本研究では人の社会的な生活に欠かせない活動の一つである「移動」に着目し,移動中に感じる気分や体感と,生活に対する個人の主観的な評価である「主観的幸福感」との関係について検証することを目的とした.また,移動時の風景等の属性と幸福感についても相互の関係を検証し,幸福感という観点からの「良い移動」について検討した.結果,移動時の肯定的な感情や感覚を下位尺度とする「移動時の幸福感」尺度と,生活における種々の主観的幸福感との間に正の相関関係がみられた.これは,移動が目的地へ達するための単なる手段ではなく,人の生活の質を向上させうる重要な活動の一つであることを示唆している.さらに,移動先での目的によって移動が幸福感に及ぼす影響が異なることや,移動時の風景が幸福感に有意に影響している可能性が示唆された.
著者
鈴木 春菜 榊原 弘之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-58, 2014

本研究では、自動車を保有しないと不便であると考えられる地方都市における、移動格差がもたらす心理的諸影響について分析を行った。自動車を利用できる環境にあるが敢えて利用しない積極的自動車非利用者と、自動車を利用したいが利用できない状況にある消極的自動車非利用者がいると想定し、消極的な自動車非利用者は自動車利用者と比較して地域愛着・主観的幸福感・地域の地理認知の水準がいずれも低いという仮説を措定した。山口県宇部市において転入者と学生に対するアンケート調査を行い、仮説の検証を行った。その結果、地域愛着・主観的幸福感・地理認知のそれぞれについて仮説を支持する結果が得られた。また、地域愛着については一般居住者については自動車利用傾向が高いほど地域愛着が低下するという結果が得られ、自動車利用の積極性による影響の差異が示された。
著者
鈴木 春菜 北川 夏樹 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.228-241, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
26
被引用文献数
4

交通政策をはじめとした土木施設の整備・運用に関する意思決定において,社会学的・心理学的に及ぼされる影響を十分に踏まえることは必ずしも容易ではない.そのような影響のなかでも,経済状態などの客観的指標に比して主観的指標については十分な検討がなされていない.本研究では,交通行動が幸福感に及ぼす影響について検討するため,質問紙調査を実施して移動時の主観的幸福感の規定因を探索的に検討した. その結果,交通手段の違いによらない,個々の移動の幸福感の集積値として移動に対する幸福感を表すことができることが示された.また移動時幸福感の規定因として,移動時風景の選好の程度や移動目的,道路/車両の混雑度,移動中の活動が移動時幸福感に影響を及ぼすこと,交通手段によってその影響の有無や程度に差があることが示された.
著者
鈴木 春菜 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.179-189, 2008 (Released:2008-04-21)
参考文献数
26
被引用文献数
9 4

良質な地域風土を志すことは土木事業に課された重要な使命であり,我々はその努力と共に,事業によってもたらされる地域風土の変化が地域愛着をはじめとした人々の「地域への関わり」にどのように影響するかについても常に検討していく必要がある.以上の背景から本研究では,パネル調査で得られた結果を基に,風土への接触量の変化が地域への感情に与える影響についてその醸成期間を考慮して検証した.その結果,地域への感情はその種類によって醸成期間に差があることを示した.さらに地域風土への接触が,長期的には「地域愛着」のような醸成に時間を要する感情にも影響を与える可能性があること,「寺社」や「公園」との「接触」がその醸成を助長する可能性があることを確認した.
著者
北川 夏樹 鈴木 春菜 羽鳥 剛史 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_327-67_I_332, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
21

本研究では,「家族」,「学校や会社等の組織」,「地域」,「国家」という4つの共同体を取り上げて,これらの共同体からの疎外意識が主観的幸福感に及ぼす影響について実証的に検討することを目的とした.この目的の下,主観的幸福感を構成する「感情的幸福感」と「認知的幸福感」に関する既存尺度とヘーゲルの理論を基に作成した「人間疎外尺度」を用いて,両者の関連を検討した.その結果,共同体に対する疎外意識と主観的幸福感との間に負の関連性が示され,共同体からの疎外意識を感じている人ほど,その幸福感が低い傾向にある可能性を示唆する結果が得られた.特に,「家族」と「国家」に対する疎外意識は,感情的幸福感と認知的幸福感の双方に対して直接的な負の影響を及ぼし得る可能性が示唆された.
著者
鈴木 春菜 榊原 弘之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-58, 2014-04-25 (Released:2014-04-25)
参考文献数
9

本研究では、自動車を保有しないと不便であると考えられる地方都市における、移動格差がもたらす心理的諸影響について分析を行った。自動車を利用できる環境にあるが敢えて利用しない積極的自動車非利用者と、自動車を利用したいが利用できない状況にある消極的自動車非利用者がいると想定し、消極的な自動車非利用者は自動車利用者と比較して地域愛着・主観的幸福感・地域の地理認知の水準がいずれも低いという仮説を措定した。山口県宇部市において転入者と学生に対するアンケート調査を行い、仮説の検証を行った。その結果、地域愛着・主観的幸福感・地理認知のそれぞれについて仮説を支持する結果が得られた。また、地域愛着については一般居住者については自動車利用傾向が高いほど地域愛着が低下するという結果が得られ、自動車利用の積極性による影響の差異が示された。
著者
鈴木 春菜 藤井 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.357-362, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
19
被引用文献数
14 17

地域愛着のインパクトについての研究はこれまで, 主として環境心理学をはじめとする他領域の中で各種の分析が進められてきたため, 土木計画に直接かかわる諸変数に対する地域愛着の影響は, 十分に検討されているとは言い難いものであった. 本研究では, このような背景のもと, 地域愛着と地域への協力行動をはじめとする土木計画にかかわる諸変数との間の統計的関係を質問紙調査の結果をもとに分析した. その結果, 地域愛着が高い人ほど, 町内会活動やまちづくり活動などの地域への活動に熱心で, 行政を信頼する傾向が示された.
著者
鈴木 春菜 中井 周作 藤井 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.425-430, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
18
被引用文献数
3

都市・交通に関わる各種施策の検討・評価にあたっては,物質的環境や行動の変化に与える影響はもとより,人々の心的状態を顧慮する必要がある.まちの雰囲気や活力等計量化し難い社会的,人文的側面にも繋がりうる重要な要素であると考えられるからである.本研究では,買い物行動における楽しさに着目し,その影響要因について,国内3都市で実施した調査の分析を行い検討した.分析の結果,平日と休日の買い物の楽しさの規定因については差異が存在すること,居住地域への愛着の水準や買い物行動における交通機関の差異,当該買い物行動への同伴の有無が,買い物行動中の「楽しさ」の水準に影響を及ぼす可能性が示唆された.
著者
鈴木 春菜 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.190-200, 2008 (Released:2008-04-21)
参考文献数
23
被引用文献数
5 4 6

人々の当該地域に対する地域愛着(place attachment)は,まちづくりや景観保全,地域防災,地域のコミュニティ維持などにおいて重要な役割を担う心的要因であることがかねてより指摘されている.一方,日常生活様式が地域愛着に影響を及ぼしている可能性が指摘されているが,その検証が十分になされているとは言い難い.本研究では,都市計画・土木計画にも依存して変化し得る消費行動に着目し,消費行動によって地域風土との接触に差異が生じ,地域愛着の醸成に影響が及ぼされるとの仮説を措定した.心理調査を実施し,分析を行った結果,消費行動が買い物中のコミュニケーションや居住する地域への愛着の程度に影響を及ぼし,買い物中の地域との接触の程度が多い人ほど地域への愛着が高いことを示した.