著者
川端 美穂子 倉林 学 中島 弘 堀川 朋恵 鈴木 紅 本川 克彦 平尾 見三 鈴木 文男 畔上 幸司 比江嶋 一昌
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Supplement4, pp.47-52, 1999-12-05 (Released:2013-05-24)
参考文献数
13

症例1:50歳,男性.42歳時,心房粗動(AFL)となるも放置. 動悸増悪のため入院. F l e c a i n i d e 100mg,verapamil 360mgを開始したが,排便時にwide QRS頻拍(232/分)となり失神.Common AFLに対して下大静脈・三尖弁輪間でカテーテル・アブレーションを施行し,成功.症例2:39歳,男性.36歳時発作性AFL,心房細動(Afib)を指摘されるも放置. A f i b , 心不全のため入院. 心不全は改善したが,Afibはcommon AFLに移行.Pilsicainide 150mg,verapamil 120mgの投与中,歩行時wide QRS頻拍(230/分)となり失神.カテーテル・アブレーション治療によりAFL発作および失神発作は消失した. 本2 症例では, いずれも投薬をI a 群からI c 群に変更後,それまで認められなかった失神が起こるようになり,その際,2例とも労作中1:1房室伝導性AFLからwide QRS頻拍に移行していた.このような血行動態の悪化を伴うproarrhythmiaは,AFLに対するIc群投与では,十分留意すべき点と考えられた.その予防には,心拍数上昇に拮抗する房室伝導抑制薬剤,特にβblockerの十分な投与が重要と考えられた.
著者
黒木 識敬 安倍 大輔 鈴木 紅 岩間 徹 濱邉 祐一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.617-624, 2016 (Released:2017-06-15)
参考文献数
20

背景 : 本邦におけるマラソン大会中の心肺停止は, 救護の立場からの報告はあるが医療機関搬送後の経過については, いくつか症例報告されているのみである. 目的 : 当院に搬送された心肺停止の患者6,841例からマラソン大会中の心肺停止患者について, 予後を検証するとともにその原因を考察する. 方法 : 2006年1月から2015年10月の当院に搬送された院外心肺停止6,841例のうち, マラソン中に発症した患者を抽出し検討した. 結果 : 心肺停止患者は10歳代から30歳代が4例 (若年群) と, 50歳代から60歳代が4例 (中年群) であり, 社会復帰例5例, 神経学的後遺症1例, 死亡2例であった. 社会復帰例はいずれも目撃あり, 直後からのバイスタンダーによる心肺蘇生があり, 病院到着前に自己心拍再開を認めていた. 心肺停止の原因は, 若年群ではカテコラミン感受性多形心室頻拍, 特発性心室細動など不整脈が主体であった. 中年群ではいずれも心筋虚血であるが, 心電図ではST上昇を認めず, 冠動脈造影では完全閉塞ではなく狭窄病変が主体であった. 結論 : 各大会において短時間で心肺蘇生・除細動を実施できる救護体制を構築する必要がある. また, 原因は年齢層によって異なる. これまで心筋虚血を原因とした心室細動はプラーク破裂を主因とした一般的な急性冠症候群の発症様式が多いとされていたが, それを示唆する所見はなく, 過度な心負荷と冠動脈狭窄による相対的な心筋虚血が原因と考えられた.
著者
小林 勇太 堀内 颯夏 鈴木 紅葉 森 章
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.168-171, 2021-04-01 (Released:2021-06-26)
参考文献数
16
被引用文献数
2

樹木の高さと太さの関係は,成長や材積の計算,群集解析,森林動態のシミュレーションに至る様々な場面で利用される重要なアロメトリー情報である。本研究では,日本全土の毎木データを収集し,約26,000 本の個体情報から75種の樹高と胸高直径の関係をChapman-Richards(von Bertalanffy)式を用いて推定した。樹種ごとの推定結果は本文中に示し,データの出典および樹高と胸高直径の散布図は電子付録に掲載した。今後の森林管理・研究のための基礎資料として広く活用していただきたい。
著者
鈴木 紅葉 小林 勇太 高木 健太郎 早柏 慎太郎 草野 雄二 松林 良太 森 章
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2118, (Released:2022-10-25)
参考文献数
48

森林の再生は、気候変動や生物多様性の損失などの社会課題に対する有効な手段の一つである。北海道知床国立公園内の森林再生地では、本来の潜在植生である針広混交林の再生を目指した森林再生活動が実施されている。ここでは、科学的知見をもとに合意形成し、管理手法を実践しながら改善する適応的管理のアプローチが取り入れられている。本稿では、この森林再生活動の成果を航空機レーザ測量およびドローン写真測量を用いた林冠構造解析によって評価した。具体的には、植栽地における樹冠高と構造的多様性、代表的な森林タイプにおける 2004年から 2020年までの 16年間の森林成長量を算出した。その結果、在来種の植栽地では他の森林タイプよりも顕著な森林成長が見られたものの、構造的多様性の回復は遅いことがわかった。このことから、活動開始から約 40年が経過しても未だ構造的多様性の回復には至っていないことが示唆された。当地での適応的管理に基づく森林再生活動の内容を紹介し、森林再生のあり方を議論することで、他地域における参考情報を提供したい。
著者
大橋 浩一 鈴木 紅 佐々 達郎 宮崎 紀樹 立石 和也 金子 雅一 春成 智彦 黒木 識敬 弓場 隆生 安倍 大輔 岩間 徹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1421-1427, 2015 (Released:2016-12-15)
参考文献数
7

手術歴や外傷歴のない27歳男性. 緩徐に増悪する腹痛が出現し, 腰痛, 両側下腿浮腫も出現したため当院救急外来を受診した. 造影CTで肝静脈合流部近位下大静脈~両側腎静脈内, 右第三腰静脈内に血栓像を認め, 両側総腸骨静脈領域までの連続する下大静脈血栓症の診断となった. 内視鏡検査では腸管内に特記すべき病変はなかった. 血液検査で抗核抗体, 凝固因子, プロテインS, プロテインCなどの血栓素因は正常範囲であったが, 血漿ホモシステイン (以下Hcy) 濃度が上昇しており高Hcy血症による血管内皮障害から下大静脈血栓症に至ったと考えられた. 葉酸とビタミンB6を補充しつつ抗凝固療法による保存的加療により症状は軽快し, 画像所見でも血栓は縮小した. 抗凝固療法継続中であり, 静脈血栓症の増悪・再発は認めていない. 高Hcy血症が原因と考えられる広範囲に及ぶ下大静脈血栓症は稀であり, 葉酸・ビタミンB6投与と抗凝固療法で保存的加療にて軽快した症例を経験した.