著者
比江嶋 一昌
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.64-67, 1976-01-10

reciprocal beat(回帰収縮)とは,心臓内のある場所(洞結節,心房,房室接合部または心室)に発生したインパルスが,短時間の間に房室伝導系,とくに房室結節のなかを往復して,もとの場所へ戻り,再びその場所の興奮をひき起こすという変わったタイプの不整脈で,reentryの一型とみなされる. reciprocal beatが心電図的に初めて記載されたのは,1915年,White1)によってであり,以後この種の報告例が文献上散見されてきた.その間,reciprocal beatはreturn extrasystole,return beator systole,reexcitation beatなどと呼ばれ,現在ではecho(beat)ともいわれている.このreciprocal beatが2個続く場合には,reciprocal rhythm,reciprocating rhythm,echoesなどと呼ばれる.また,最近では,発作性"上室性"頻拍例の多くは,reciprocal beatが早い頻度で連続したものに相当することがわかっており,reciprocating tachycardiaと呼ばれる.
著者
川端 美穂子 倉林 学 中島 弘 堀川 朋恵 鈴木 紅 本川 克彦 平尾 見三 鈴木 文男 畔上 幸司 比江嶋 一昌
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Supplement4, pp.47-52, 1999-12-05 (Released:2013-05-24)
参考文献数
13

症例1:50歳,男性.42歳時,心房粗動(AFL)となるも放置. 動悸増悪のため入院. F l e c a i n i d e 100mg,verapamil 360mgを開始したが,排便時にwide QRS頻拍(232/分)となり失神.Common AFLに対して下大静脈・三尖弁輪間でカテーテル・アブレーションを施行し,成功.症例2:39歳,男性.36歳時発作性AFL,心房細動(Afib)を指摘されるも放置. A f i b , 心不全のため入院. 心不全は改善したが,Afibはcommon AFLに移行.Pilsicainide 150mg,verapamil 120mgの投与中,歩行時wide QRS頻拍(230/分)となり失神.カテーテル・アブレーション治療によりAFL発作および失神発作は消失した. 本2 症例では, いずれも投薬をI a 群からI c 群に変更後,それまで認められなかった失神が起こるようになり,その際,2例とも労作中1:1房室伝導性AFLからwide QRS頻拍に移行していた.このような血行動態の悪化を伴うproarrhythmiaは,AFLに対するIc群投与では,十分留意すべき点と考えられた.その予防には,心拍数上昇に拮抗する房室伝導抑制薬剤,特にβblockerの十分な投与が重要と考えられた.
著者
比江嶋 一昌
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.8, pp.1207-1212, 1974-07-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

人工ペースメーカの場合は別として,自然に発生したdoubl eventricular parasystoleの例の報告は,現在まできわめて少ない.著者の例は,高血圧+糖尿病患者の心不全時みられたもので,一方のventricular parasystoleは心不全の改善とともに消失した.両異所性中継はアトロピソ投与により影響を受けなかったが,リドカインの投与でともに著明な抑制を受けた.このようなdouble ventricular parasystoleの結果,起こり得る可能性のある電気生理学的現像として,(1)fusion beat,(2)supernormal conduction,(3)re-entryまたはWedensky facilitation,(4)exit block,(5)concealed conductionなどが考えられた.