著者
鋤柄 増根
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.31-46, 2006-01-10

性格記述用語(136語)の反対語を大学生177名に調査した.その結果,相互に反対語どおしの関係にある対と,反対語がなかったり,拡散してしまうものがあった.この結果は,性格記述用語が表すと考えられる性格特性次元が双極性か単極性かに関連しており,反対語どおしの関係にある対は双極性を表す性格次元であり,反対語のない刺激語が表す次元は単極性であるといえる.この結果は性格次元の構造を明らかにするのに利用できるだけでなく,質問紙法で反応の偏りである黙従傾向を防ぐのによく使われる逆転項目の作成にも利用できるものである.
著者
中川 敦子 鋤柄 増根 水野 里恵 古賀 一男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

自分の順番が来るまで待つというような自己を制御する力は、3歳以降おもに認められるが、本研究では、それ以前の子どもの注意力や、内気・臆病・引っ込み思案といった傾向、環境(育児文化)などが影響を及ぼすと考え、月齢12ヶ月から36ヶ月にかけて縦断研究を行った。その結果、月齢36ヶ月時の自己制御行動には月齢18ヶ月時の内気・臆病といった傾向が関連すること、発達初期の注意機能は負の情動と関わることが示唆された。
著者
鋤柄 増根
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

自己報告(self-report)形式のパーソナリティ検査において,常に問題になるのは,回答の歪みを検出する方法の開発とその発生機序である。検出方法には,従来からさまざまな方法が考案されてきた。その中で,比較的最近提案されたものに項目反応理論に基づいたperson-fitがある。本課題における,はじめの研究は「person-fitによるパーソナリティ検査における逸脱回答の検出」であり,person-fit指標の有効性を検討した結果,悪く見せようとする受検態度の検出には有効であるが,よく見せようとする受検態度を検出することは難しいことが明らかになった。この検討のなかで,パーソナリティ検査における逸脱回答と能力検査におけるそれとの違いも明らかになった。次の「性格記述用語の反対語調査による性格次元の双極・単極性の検討」では,黙従傾向を逆転項目で検討しようとするときの逆転項目作成の基礎資料を提供すると同時に,性格次元の双極・単極性を検討するものでもある。双極性である性格特性に関しては,その特性を中程度に持っている個人が「どちらでもない」と回答する。一方,単極性の性格特性には「どちらでもない」という回答は本来ありえないはずなので,単極性の性格特性に対して「どちらでもない」と回答するのはその特性をもたない個人であることになる。以上の点を検討するための基礎資料ともなる。最後の「逆転項目によるパーソナリティ検査における黙従傾向の検討」は,反応の偏りの一つである黙従傾向を,ミネソタ多面人格目録(MMPI)のHy尺度とPt尺度について,逆転項目を利用して検討したものである。ここでは,Bentler, Jackson, & Messick(1971)が指摘したagreement acquiescence(是認黙従傾向)とacceptance acquiescence(受認黙従傾向)の2つの黙従傾向を潜在構造分析によって分析した結果,是認黙従傾向は,尺度得点にほとんど影響していなかったが,受認黙従傾向は中程度の影響を持っていた。しかし,その影響は,潜在特性による影響に比べてかなり小さいことも明らかになった。