著者
片岡 祐子 菅谷 明子 中川 敦子 田中 里実 問田 直美 福島 邦博 前田 幸英 假谷 伸
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.87-95, 2021-02-28 (Released:2021-03-20)
参考文献数
24

要旨: 先天性難聴の早期発見,早期療育, 人工内耳手術の低年齢化などに伴い, 難聴児の聴取能, 言語発達は向上し, 近年地域の学校でインクルーシブ教育を受ける者が増加しているが, それに伴う問題も挙げられている。我々は, 小学校5年生以上25歳未満のインクルーシブ教育を受けた経験のある両側難聴者89名に, 学校生活で抱える問題に関して質問紙での実態把握調査を実施した。 対象者の多くは, 授業中の支障に加え, グループ学習や雑音下, 距離が離れた場所からの聞き取りの支障を抱えており, また英語, 音楽, 体育をはじめとする教科学習での課題や, 友人関係での問題も挙げていた。難聴の程度が重いほど頻度が高い傾向がみられた。 個々の学校生活における状況と問題を正確に把握した上で, 視覚情報を用いたコミュニケーション, 支援員の配属, 学習面でのサポート, 専門家による心理的負担へのアプローチといった個々に対応した介入の必要性が示唆される。
著者
吉田 拓哉 中川 敦子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.144, 2013

背景音楽の歌詞が文章課題の遂行を妨害することが報告されている。本研究は,この影響を実行注意の個人差から検討した。実行注意の効率を測定する尺度としてエフォートフル・コントロール(EC)尺度を用い,大学生をEC低群とEC高群に群分けした。そして両群ともに無音,音楽のみ,音楽・歌詞の3つの音楽環境条件で,文章課題と計算課題を行った。課題ごとに作業量を分析した結果,EC低群の音楽・歌詞条件で文章課題の作業量減少が認められたが,高群は両課題のどの条件でも差は認められなかった。よって課題遂行時の背景音楽の歌詞による妨害効果は,実行注意の働きで軽減される可能性が示された。また課題ごとに正答率を分析した結果,音楽のみ条件で正答率が低下した。この結果からは,音楽・歌詞条件では,より注意を喚起する歌詞に抵抗するために却って課題に集中した一方で,音楽のみ条件では,音楽によって弛緩状態に陥った可能性が考えられる。
著者
中川 敦子
出版者
金沢医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

被験者は外来通院の分裂病患者10名。各患者の症状評価は精神科医2名によって行われた。課題は、プライム、ターゲットともに視野中央に提示する語彙判断であった。実験計画;プライム条件(反対、遠隔連想、無関連、中立)×SOA(67msec,750msec)の被験者内2要因実験。反対、遠隔連想という意味関係は、意味ネットワーク上のターゲットとの意味距離がより近い、より遠いことをそれぞれ示した。刺激:各試行はプライムとターゲットの平仮名表記の文字列ペアより成った。1つの刺激リストは,YES反応用の4つの異なった意味的関係を含む24ペア、およびNO反応用の非単語(単語の1文字を入れ替えて作られた)を含む24ペアによって構成された。4つの刺激リストを設け,1つの刺激リスト内で同じターゲットが繰りかえされることはなかった。例えば,リスト1で反対語条件(さむい-あつい)のターゲットは,リスト2では遠隔連想条件(あせ-あつい),リスト3では無関係条件(ゆずる-あつい),リスト4では中立条件(くうはく-あつい)であった。手続き;各被験者に、練習の後,4ブロックをとおして4つの刺激リストが与えられた。各試行では、視野中央に注視点そしてプライム60msecの提示後、ISI(SOA条件によって7msecまたは690msec)の後、ターゲットが示された。被験者は、実験中は視野スクリーンの中心を凝視し、ターゲットが有意味な文字列(単語)であるか否か(非単語)の判断をボタン押しによってできるだけ早くかつ正確に行なうよう求められた。結果;分析は単語に対する正反対時間およびエラー率について行ない、反応の促進および抑制効果は,各プライム条件での反応時間が中立条件(くうはく)での反応時間よりも早いか遅いかによって決定された。外来通院の予後良好な分裂病患者の意味プライミングパタンは、コントロール群のパタンと同様であった。各症状と意味プライミングパタンの関係について検討したが、明らかな結果は得られなかった。
著者
石井 克枝 土田 美登世 西村 敏英 沖谷 明紘 中川 敦子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.229-234, 1995
参考文献数
25
被引用文献数
7

本研究は牛肉の低温加熱による呈味物質と呈味性の変化についてみたものである.牛肉を薄切りにし,真空パックしたものを40,60,80℃で,10分,1,3,6時間加熱した.遊離アミノ酸は40℃,6時間加熱したときにもっとも多く生成し,酸可溶性ペプチドは60℃,6時間加熱したときにもっとも多く生成した.60℃,6時間加熱した牛肉エキスと,60℃,10分加熱した牛肉エキスの呈味を官能検査により比較すると,60℃,6時間加熱した牛肉エキスの方がまろやかだった.二つの牛肉エキス中の遊離アミノ酸,5'-IMPはほとんど同量であったので,まろやかさは加熱によって増加したペプチドによるものではないかと考えられた.
著者
小関 正道 中川 敦子 寺尾 清
出版者
山脇学園短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1、目的(1)アルカリイオン水が動物細胞に及ぼす影響を直接検討するために、メダカのえら細胞に与える影響を検討する。(2)アルカリイオン水がラットに与える生理的影響を、飼料条件、アルカリイオン水のpHおよびアルカリイオン水の原水の種類を変動させて検討する。2、方法(1)メダカを35℃のアルカリイオン水中に30分間入れた時と、常温で1ヶ月間アルカリイオン水中で飼育した時のえら細胞の形態学的変化を光学顕微鏡で観察する。(2)ラットを酸化した飼料とイオン交換水を原水としたpH10.5〜10.89のアルカリイオン水、市販固形飼料と水道水を原水としたpH10.5またはpH11のアルカリイオン水、またはAIN93飼料とミネラルウオーターを原水としたpH11のアルカリイオン水のそれぞれで飼育した場合の生理的変化を、血液生化学検査値や臓器重量の変化などにより検討する。3、結果(1)メダカを35℃のアルカリ性の水に入れた場合にはえら細胞が破壊されるが、同一pHのアルカリイオン水ではえら細胞は膨張するものの破壊されることはなく、アルカリ性の水に比べ影響が穏やかであった。常温で1ヶ月間飼育した場合にはアルカリイオン水による影響は認められなかった。(2)ラットにアルカリイオン水を摂取させると脾臓重量や胸腺重量が低下することがあり、免疫系への影響が考えられたが、ミネラルウオーターを用いた実験では結果が再現されず、また血清免疫グロブリン値にも変化がなく結論は得られなかったが、更に検討することが必要である。アルカリイオン水を摂取したラットの血清鉄濃度の低下は今回も観察されたが、常に再現される結果とはならなかった。アルカリイオン水摂取による血清脂質レベルの低下はしばしば観察され、特に中性脂肪レベルの低下は有意差にはならないもののほとんどの実験で観察されている。また精巣周辺重量がアルカリイオン水摂取群で低下傾向にあることからも、体内脂肪レベルの低下効果はアルカリイオン水摂取による生理効果として充分に考えられるものといえるので、この点を明白にする研究を早急に実施する必要がある。
著者
中川 敦子 鋤柄 増根 水野 里恵 古賀 一男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

自分の順番が来るまで待つというような自己を制御する力は、3歳以降おもに認められるが、本研究では、それ以前の子どもの注意力や、内気・臆病・引っ込み思案といった傾向、環境(育児文化)などが影響を及ぼすと考え、月齢12ヶ月から36ヶ月にかけて縦断研究を行った。その結果、月齢36ヶ月時の自己制御行動には月齢18ヶ月時の内気・臆病といった傾向が関連すること、発達初期の注意機能は負の情動と関わることが示唆された。