著者
長島 正明 蓮井 誠 永房 鉄之 美津島 隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1576, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】自己免疫疾患などの炎症性疾患の急性期治療として,一般的に高用量ステロイド治療(30~60mg/日)が実施される。しかし,高用量ステロイド治療によって,ステロイド筋症が危惧される。主に速筋線維の萎縮が惹起され,筋力低下から転倒リスクが高まる。一方,骨格筋は身体の40%前後の重量を占めている。そこで我々は,筋力の推移は体重の推移から推測できると仮説した。本研究の目的は,高用量ステロイド治療中患者の筋力と体重の推移の関係性を検証することである。【方法】対象は高用量ステロイド治療目的で当院に入院した患者で,運動療法目的にリハビリテーション科に紹介となりADLが自立している17例とした。クレアチンキナーゼの上昇がない間質性肺炎合併皮膚筋炎および多発性筋炎4名,微小変化型ネフローゼ3名,全身性エリテマトーデス2名,肺サルコイドーシス2名,成人スティル病1名,天疱瘡1名,顕微鏡的多発血管炎1名,血管炎1名,非IgA腎症1名,膜性腎症1名で,男性10名女性7名であった。平均年齢は50±14歳,平均在院日数は68±18日,運動療法開始から退院時までの平均期間は49±14日であった。運動療法は,有酸素トレーニングとして嫌気性作業閾値の強度での自転車駆動20-30分,筋力トレーニングとしてスクワット運動や上肢ダンベル運動をBorg Scale13-15の強度で週5回実施した。測定は運動療法開始時と退院時に実施した。筋力は筋機能評価運動装置BIODEXを用い膝屈曲90°位で等尺性膝伸展最大筋力を測定した。体重,ステロイド服用量を診療録より記録した。骨格筋量は体組成計インボディを用い計測した。運動療法開始時と退院時の比較に,対応のあるt検定を用いた。また,筋力変化率と体重変化率の関係は,Pearsonの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。結果は平均±標準偏差で示す。【結果】運動療法開始時/退院時で,1日あたりのステロイド服用量は45±8/30±5mgであった。体重は56.8±12.6/54.2±10.7kg(変化率-4.0±4.6%),骨格筋量は23.5±6.1/22.1±5.8kg(変化率-5.7±6.0%),膝伸展筋力は右113±60/101±58Nm(変化率-9.3±24.9%),左109±59/101±60Nm(変化率-6.8±27.1%)で有意に低下した。体重変化率と右膝伸展筋力変化率(r=0.67 p=0.004),体重変化率と左膝伸展筋力変化率(r=0.57 p=0.018)は有意に相関した。【結論】高用量ステロイド治療中患者の筋力は,運動療法を実施したにも関わらず有意に低下した。高用量ステロイド治療中患者の筋力減少と体重減少は有意に相関した。したがって,高用量ステロイド治療中患者において,筋力測定をせずとも体重減少から筋力低下を推測でき,転倒リスクの把握に有益である可能性がある。
著者
長島 正明 中村 重敏 山内 克哉 入澤 寛 安田 千里 美津島 隆
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第24回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.P014, 2008 (Released:2008-12-09)

【はじめに】 近年,肺の葉切除や部分切除後の肺機能や運動能力についての報告は散見するようになったが,片肺全切除患者の術前から術後早期における肺機能や運動能力の回復過程の報告はない.今回,術前から術後早期における片肺全切除一症例の肺機能と運動能力を測定し,葉切除例と比較したので報告する. 【方法】 対象1:58歳男性(168cm,57kg,術前%肺活量94%,1秒率73%)左上葉肺癌(扁平上皮癌)Stage3Bで化学療法後開胸法にて左片肺全切除となった.対象2:59歳男性(174cm,62kg,術前%肺活量92%,1秒率67%)左上葉肺癌(扁平上皮癌)Stage3Aで化学療法後Stage2Bとなり胸腔鏡手術にて左上葉切除となった.2例は術前心疾患はなかった.術前,術後1週,2週,3週,4週においてスパイロメータを用いて肺機能を測定し,同時に,呼気ガス分析装置を用いて運動負荷試験を実施し,最大酸素摂取量を測定した.運動負荷は自転車エルゴメータを使い,20分の安静後,3分間の30Wウォーミングアップ,その後1分毎に10W増加させall outまで実施した.術前,2例とも1週間の呼吸訓練を実施された. 【結果】 2例とも術後合併症はなかった.術後訓練は早期離床後,自転車エルゴメータにて一日20分以上の持久力訓練と呼吸指導を実施した.対象1は術後4週,対象2は術後3週で退院した. 肺機能:%肺活量は術前と比較し,対象1は術後1週で34%,4週で46%,対象2は術後1週で54%,4週で72%まで改善した.1秒率は術前と比較し,対象1は術後1週で93%,4週で86%,対象2は術後1週で88%,4週で93%であった. 運動能力:最大酸素摂取量(ml/kg)は,対象1は術前20.0,術後1週で8.9,4週で14.2,対象2は術前18.9,術後1週で15.6,4週で19.6へ改善した. 【考察】 肺切除後の運動能力の低下は,肺切除に伴う肺の容積,血管床の縮小による肺機能の低下が原因と考えられる.したがって,片肺全切除例はその切除域が肺葉切除に比べ大きいため,より肺機能が低下したと考えられた.加えて,片肺全切除例は開胸術であり手術侵襲が大きいことも影響しているかもしれない.片肺全切除例は,術前に比べ最大酸素摂取量は術後4週において70%程度であった.一方,上葉切除例では術前を上回った. 【結論】 最大酸素摂取量は,術後4週で葉切除例は術前レベルに改善したが,片肺全切除例は70%程度の改善であった.今後,症例の蓄積が必要である.
著者
長島 正明 蓮井 誠 山内 克哉 美津島 隆
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1626, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】ネフローゼ症候群は高度の尿蛋白により低蛋白血症を来す腎臓疾患群の総称である。腎臓病患者に対する運動療法は少なくとも嫌気性作業閾値(以下AT)であれば尿蛋白や腎機能へ影響を与えないことが報告されつつあり,ネフローゼ症候群診療ガイドライン2014においても安静や運動制限の有効性は明らかではなく推奨されていない。一方,ネフローゼ症候群の急性期治療として高用量(0.5>mg/kg/日)ステロイド治療が一般的であるが,ステロイド筋症による筋力低下によってADL制限が顕在化することがある。低用量ステロイド治療患者に対し運動療法が有効であることが報告されているが,高用量ステロイド治療における運動療法の有用性は不明である。本研究の目的は,高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の有効性を体組成・筋力・運動耐容能から検証することである。【方法】対象は高用量ステロイド治療目的で当院腎臓内科に入院したネフローゼ症候群患者で,運動療法の依頼でリハビリテーション科に紹介となったADL自立の60歳代一症例とした。運動療法は週5回実施した。有酸素運動としてATでの自転車駆動30分,筋力運動としてスクワット動作や上肢ダンベル体操をBorg Scale13の強度で実施した。測定は運動療法開始前と退院時に実施した。体組成は体組成計インボディを用い,筋量,脂肪量を測定した。筋力は筋機能評価運動装置BIODEXを用い,等尺性膝伸展最大筋力を膝屈曲90°位で測定した。運動耐容能は心肺運動負荷試験で評価した。心肺運動負荷試験は呼気ガス分析装置および自転車エルゴメータを用い,10wattランプ負荷とし,ATおよび最高酸素摂取量を測定した。ATはV-slope法にて決定した。最高酸素摂取量は症候限界時の酸素摂取量とした。また,体重,食事摂取カロリー,尿蛋白一日量,ステロイド服用量を診療録より記録した。【結果】入院3週目よりステロイド0.8 mg/kg/日で治療開始され,同時に運動療法開始となった。運動療法は8週間実施され,ステロイドは0.4mg/kg/日まで減量し退院となった。運動療法8週間前後で,体重(kg)は60.4→53.5に減少した。筋量(kg)は26.5→21.8に減少,体脂肪量(kg)は11.0→12.1に増加した。体重比筋力(Nm/kg)は右2.15→1.50,左1.85→1.51に低下した。AT(ml/kg/min)は12.7→15.6,最高酸素摂取量(ml/kg/min)は19.8→20.0に増加した。心肺運動負荷試験の終了理由はペダル50回転維持困難であった。また,入院中の食事は1800kcal全量摂取であり,間食はなかった。尿蛋白一日量(mg/日)の一週間平均値は4095→2159へ改善した。【結論】本症例において,運動療法によって筋力を維持することは困難であったが,運動耐容能を維持することができた。高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の強度の検証が必要である。
著者
長島 正明 江西 一成 近藤 亮 松家 直子 片山 直紀 永房 鉄之 美津島 隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【目的】皮膚筋炎・多発性筋炎は骨格筋を病変の主座として,亜急性に進行する近位筋優位の筋力低下や筋痛を認める全身性炎症性疾患で,発症は40歳代から60歳代の女性に多いとされている。早期診断・適切な治療により日常生活が自立する例も多いものの,好発年齢の関係から,自宅退院後の生活や仕事,余暇活動において高い身体機能が望まれる。今回我々は,急性期病院退院時にADLが自立していた皮膚筋炎・多発性筋炎患者を対象に体力測定を行い,同年健常者と比較することで筋炎患者の身体能力の実態を調査した。【方法】対象は当院入院し今回初めて皮膚筋炎もしくは多発性筋炎と診断され,退院時にADLが自立していた8名であった。測定は退院前1週間前後に実施した。比較対象群として,運動習慣のない同年健常者ボランティア9名を設定した。呼気ガス分析装置および自転車エルゴメータを用い,5もしくは10wattランプ負荷とし,嫌気性作業閾値および最高酸素摂取量を測定した。嫌気性作業閾値はV-slope法にて決定した。最高酸素摂取量はペダル50回転を維持困難,最大心拍数の90%,ボルグスケール19,危険な不整脈や胸痛の出現,被験者からの中止要請のいずれかに該当した時の酸素摂取量とした。6MWTは30mの折り返し歩行とし,最大歩行距離を測定した。筋力は筋機能評価運動装置BIODEXを用い,利き足の等尺性膝伸展最大筋力を膝屈曲90°位で測定した。統計学的解析はSPSSを用いてMann-Whitney U検定にて群間比較を行った。有意水準は危険率5%未満とした。【説明と同意】対象者には本研究の趣旨,情報管理および結果の公表に関して,口頭で説明し文書にて同意を得た。本研究は浜松医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】対象は全例女性であった。年齢(歳)は筋炎群46±9,健常者群44±8であった。身長(cm)は筋炎群156±5,健常者群157±4,体重(kg)は筋炎群44±7,健常者群50±5,BMI(kg/m<sup>2</sup>)は筋炎群18.1±2.9,健常者群20.1±1.7であった。いずれも群間に有意差はなかった。筋炎群の退院時血清クレアチンキナーゼは196±230(15-655)IU/Lであった。退院時の内科的治療は1例がステロイド内服25mg/日,5例がステロイド内服30mg/日,1例がステロイド内服30mg/日+ネオーラル100mg/日,1例がステロイド内服30mg/日+メソトレキサート12mg/週であった。在院日数は65±19日であった。ADLはBarthel Indexで全例100点であった。全例筋痛は認めなかった。嫌気性作業閾値(ml/kg/min)は筋炎群10.3±3.1,健常者群14.7±4.9であった。最高酸素摂取量(ml/kg/min)は筋炎群18.6±6.6,健常者群27.2±7.3であった。6MWT(m)は筋炎群511±110,健常者群641±49であった。Peak load(watt)は筋炎群68±27,健常者群115±30であった。いずれも筋炎群で有意に低値であった。安静時心拍数(beats/min)は筋炎群75±11,健常者群64±9であり,筋炎群は有意に高値であった。最大心拍数(beats/min)は筋炎群151±21,健常者群157±9で群間に有意差はなかった。筋力(Nm/体重)は筋炎群1.35±0.40,健常者群2.52±0.28であり,筋炎群は有意に低値であった。【考察】皮膚筋炎・多発性筋炎患者はI線維の割合が有意に少ない(Dastmalchi 2007)ことが報告されている。一方,副腎皮質ステロイドの大量投与もしくは長期投与はIIb線維の特異的な萎縮を来す(Pereira RM 2011)ことが知られており,筋炎患者は病態上も治療上も特異的な筋病態を呈していることが推察される。また,下肢最大筋力が大きいほど歩行速度は速い(淵本1999)など一般的に筋力は運動パフォーマンスと関係すると言われている。身体能力の低下は骨格筋量の減少を背景として,6MWTではIIb線維の萎縮に伴う最大筋出力低下が起因し,有酸素能力ではI線維割合の低下に伴う末梢での酸素利用能低下が起因するものと考えられる。安静時心拍数は筋炎患者において有意に高かった。疾患それ自体が自律神経系に与える影響が大きいこと,また入院による運動不足に伴う交感神経活動の亢進が要因かもしれない。本研究により筋炎患者の有酸素能力,筋力,歩行能力が低下していることが明らかとなったが,自宅退院後および社会復帰後に,どの程度の制限を受けるかは定かではない。今後は生活に応じた実態調査が必要である。【理学療法学研究としての意義】皮膚筋炎・多発性筋炎患者において,ADLが自立していても有酸素能力,筋力,歩行能力は低下していることが判明した。筋疾患の場合,運動自体が筋線維を壊してしまう場合があるが,血清クレアチンキナーゼ,筋痛や筋力低下などの症状に配慮しながら運動療法を実施する必要性が示唆された。
著者
藤田 昌寛 室山 勝彦 西村 武俊 長島 正明 林 順一
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.85-90, 2003-09-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

本研究では反応溶媒として超臨界水または亜臨界水を用いたおからの無触媒可溶化に関して, 回分操作によってその分解挙動を検討した.到達温度および圧力がそれぞれ250℃程度, 30MPa程度 (主に亜臨界状態) に設定されたおからの加水分解反応では, 水溶性総有機体炭素量 (TOC) は反応保持時間や昇温速度にほとんど影響されず, きわめて短時間で反応が終了した.全糖は保持時間の増大とともに, また昇温速度が遅いほど生成量が減少し, 逐次的に有機酸, アルコールに二次分解された.有機酸成分中, 乳酸の生成量が大きかった.到達圧力20~30MPaのもとでのおからの可溶化の挙動は温度に大きく依存し, 300℃付近でTOCが最大値を示し, 有機酸やアルコール等も最大量が得られた.また, 全糖は低温ほど多く生成し, 200℃付近でのその生成量は仕込みの乾燥おから重量に対しては20%程度, 元来おから中に含まれる糖に変換可能な成分に対しては約30%の収率となった.300℃以上の加圧処理によって残渣の量は5%程度以下になり, さらに350℃以上の高温での加圧処理ではガス化生成物の比率が30%を越えた.