著者
渡邉 雅一 児玉 寛 長谷川 浩二 伊藤 佳子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.3, pp.221-231, 2007 (Released:2007-09-14)
参考文献数
22

パタノール®点眼液0.1%は,塩酸オロパタジンを有効成分として,抗アレルギー作用と抗ヒスタミン作用を併せ持つアレルギー性結膜炎治療剤である.本剤は結膜肥満細胞からのヒスタミンなどの化学伝達物質の遊離抑制作用と,選択的かつ強力なヒスタミンH1受容体拮抗作用により痒感,充血などのアレルギー性結膜炎症状を改善させると考えられている.非臨床試験において眼の即時型アレルギーに対する抑制作用,ヒスタミン誘発血管透過性亢進に対する抑制作用,各種化学伝達物質の遊離抑制作用および選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用を示した.第III相臨床試験では,対照薬のフマル酸ケトチフェン点眼液に劣らない有効性を示し,安全性において副作用発現率は有意に低かった.長期投与試験では10週間の連続点眼を行ったが副作用は認められず,結膜抗原誘発試験では本剤のアレルギー性結膜炎に対する有効性と効果の持続時間が確認された.本剤は,抗アレルギー作用と抗ヒスタミン作用という2つの作用によりアレルギー性結膜炎症状の改善をもたらし,高い安全性を有することが示された.
著者
稗田 蛍火舞 砂川 陽一 刀坂 泰史 長谷川 浩二 森本 達也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.146, no.1, pp.33-39, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
73
被引用文献数
2 2

高血圧は心血管疾患,脳卒中などの疾患の発症につながる動脈硬化の主要危険因子の一つである.多くの臨床研究から血圧を管理することは,これらの罹患率,死亡率の減少につながることが明らかになっている.しかしこれらの合併症に対する予防効果は降圧薬を用いた治療をもってしても50%未満である.近年,健康的な食事が生活習慣病を予防するだけでなく,治療につながるのではと考え,食品の持つ効果について注目が集まっている.塩分制限,適度なアルコール摂取,およびカロリー制限などの食生活の改善が高血圧の予防のために重要である.また,古くから日本と中国で日常的に飲まれてきた緑茶は降圧効果を有すること,さらにはその有効成分はカテキンであることが明らかとなった.このように降圧効果を持つ食品に関して多くの研究が行われ,これらの機能性食品がレニン・アンジオテンシン系抑制や抗酸化作用,利尿作用,交感神経抑制作用,および血管拡張作用を有する一酸化窒素の合成促進作用などによって降圧効果を示すことが報告されている.今後これらの機能性食品を土台にして,日常の食生活を改善することによって血圧を管理し,健康寿命を延ばすことができると期待される.本総説は動物実験やヒト臨床試験で降圧効果を有することが報告されている機能性食品とその成分についてまとめたものである.
著者
佐藤 哲子 長谷川 浩二 小谷 和彦 小川 佳宏
出版者
独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

申請者らが構築した肥満・糖尿病・メタボリック症候群のデータベース1050例を対象に、ヒト単球の採取とその機能解析により、単球機能(炎症M1・抗炎症M2マーカーなどの質的異常)と既知の心血管病リスクが強く関連し、さらに糖尿病薬や高脂血症薬によりヒト血中単球機能が改善することを初めて報告した。この研究成果より、肥満・糖尿病・メタボリック症候群における単球機能改善を標的とした早期動脈硬化進展の診断法や心血管病予防・治療戦略の可能性が示唆された。
著者
長谷川 浩二 尾野 亘 森崎 隆幸 米田 正始 平家 俊男 森崎 隆幸 米田 正始 平家 俊男
出版者
独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

心不全のより根本的治療を確立するためには、心筋細胞情報伝達の最終到達点である核内の共通経路を標的とした治療法を確立する必要がある。我々は内因性ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を有するp300とGATA帳写因子群の窃力(p3O0/GATA経路)が心不全発症における遺伝子発現調節に極めて重要であることを示した(Mol Cell Biol 2003; 23: 3593-606、Circulation 2006: 113: 679-90)。本研究においては、p300によるGATA4のアセチル化部位を同定し(J Biol Chem. 2008;283:9828-35)し、またp300の特異的アセチル化阻害作用を持つクルクミンが心不全の進行を抑制することを高血圧性心疾患ならびに心筋梗塞後の2つの慢性心不全ラットモデルにおいて証明した(J Clin Invest 2008;118:868-878)。一方、心筋細胞の脱落が激しい末期心不全の根本的な治療には心筋再生療法が必須である。我々は、多分化能と無限増殖能を持つ胚性幹(ES)細胞において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)による刺激が、ヒストンや転写因子GATA4をアセチル化し、心筋分化効率を著名に上昇させることを見出した(J Biol Chcm 2005; 280: 19682-8)。本研究においては、マウス胚性幹(ES)細胞においてCyclin dependent kinase (CDK) 9が転写調節因子GATA4と結合し、その分化に関与していること(2007年11月, American Heart Association にて発表)、ES細胞の分化過程で発現が上昇するmiRNA-1がCDK9の翻訳抑制を通じて心筋分化を負に制御しているという新たな知見を得た(Circ J in press)。ES細胞と同様の多分化能と無限増殖能を持つ人工多能性幹(iPS)細胞において心筋分化システムを確立し、iPS細胞の株間には大きな分化効率の差異が存在すること、心筋分化効率が極めて低いiPS細胞株でもTSAにより、著明に心筋分化が亢進することを見川した(2008年Rcgenerative Medicine & Stom Collで発表)