- 著者
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門前 進
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 早稲田大学人間科学研究 (ISSN:09160396)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.1, pp.19-28, 1993-03-25
- 被引用文献数
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本研究の目的は,心理現象をとらえるとき,「対人緊張」,「興奮」,「主体の活動性」という三次元から捉える必要があるのではないかということを,血圧と心拍という生理的指標の観点から調べるために計画された.手続としては,音楽を聴いた前後で,各生理的指標が測定された.音楽として,テンポの速さが速い場合と遅い場合が設けられた.また,聴いていて快気分の生じる音楽と不快気分の生じる音楽が用いられた.コントロール群としては,ジェイコブソンのリラクセイション技法の筆者による簡略版が用いられた.結果の整理として,各生理指標の実験前の値をもとに,高群と低群に被験者が分けられた.結果としては,どの指標においても,高群は低群よりも減少を示した.心拍数に関しては,遅い快群は速い快・不快群よりも減少した.遅い不快群は,他の音楽群に比べ,少し異なる傾向を示した.リラクセイション群では,脈圧値の変化に関して,音楽群と比べ,高群,低群に関して逆の傾向を示した.これらのことから,音楽は対人緊張を低下させ,さらに興奮をも低下させることが見出された.快・不快に関しては,緊張,興奮の次元とは異なる次元で影響していると考察された.