著者
西村 文宏 牛島 智子 野田 勝生 門脇 大介 宮村 重幸
出版者
一般社団法人 日本老年薬学会
雑誌
日本老年薬学会雑誌 (ISSN:24334065)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-14, 2020-03-23 (Released:2020-05-02)
参考文献数
13

Objective: The aim of this study was to estimate medical economic costs associated with optimizing drugs brought to a cardiology hospital for inpatients with the help of pharmacists and doctors. Methods: We optimized drugs brought to the hospital, compared patient backgrounds, and estimated medical economic costs. Results: Medicine expenditure was 34.36 yen per day per patient post drug optimization with the help of pharmacists and doctors. Estimated glomerular filtration rates were significantly lower and patient ages and the number of prescriptions optimized were significantly higher in patients who regularly used 10 or more drugs than in those who used fewer than 10 drugs.Conclusion: A drug cost reduction effect is expected with the collaboration between doctors and pharmacists, and with prescription optimization of drugs brought to a hospital.
著者
内海 紗良 前田 圭介 久保田 丈太 中谷 咲良 原田 義彦 成田 勇樹 猿渡 淳二 近藤 悠希 石塚 洋一 入江 徹美 門脇 大介 平田 純生
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-10, 2021 (Released:2021-08-17)
参考文献数
21

日本では、血清クレアチニン(SCr)値を用いたCockcroft-Gault式による推算クレアチニンクリアランス(eCCr)や日本人向け推算糸球体濾過量(eGFRcr)によって腎機能が推算されるが、筋肉量の減少に伴うSCr値の低下により腎機能が過大評価されてしまう恐れがある。これを防ぐため臨床現場ではSCr値が0.6 mg/dL未満の患者に、SCr=0.6 mg/dLを代入して補正するround up法が汎用される。ところが、このround up法により腎機能推算の予測性が向上したといった報告は少なく、科学的根拠は乏しい状況である。本研究では、SCr=0.6 mg/dLへのround up法の妥当性を評価した。2017年5月から2017年8月に玉名地域医療保健センターに入院していた65歳以上でSCr値が 0.6 mg/dL未満のサルコペニア患者11名を対象に、後ろ向き解析を行った。酵素法により測定したSCr値を用いたeCCrおよびeGFRcrと、SCr=0.6 mg/dLにround upしたeCCr(round up)およびeGFRcr(round up)のそれぞれの値を、24時間蓄尿法で求めたCCr(mCCr)およびmCCr×0.715で換算したmodified GFRを基準値として比較した。相関・回帰分析、Bland-Altman分析および誤差指標から、eCCr(round up)値はeCCr値よりも腎機能を過小評価する傾向があった。eGFRcr値は腎機能を顕著に過大評価し、eGFRcr(round up)値は過大評価が軽減されるが、依然として過大評価傾向にあった。今回の検討からは、eCCr値およびeGFRcr値のどちらの推算式においてもround upの妥当性は示されなかった。このことから筋肉量が減少したサルコペニア患者においては、SCr値をround upすることは適切ではなく、むやみにround upを行うことは避けるべきである。
著者
平田 純生 柴田 啓智 宮村 重幸 門脇 大介
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-18, 2016 (Released:2018-04-02)
参考文献数
54

腎機能は糸球体濾過量(GFR)で表され、イヌリンクリアランスは最も正確なgold standardであるが、測定手技が煩雑であるため、実臨床ではあまり用いられない。多くは血清クレアチニン(Cr)値を基にした腎機能推算式であるCockcroft-Gault(CG)式による推算クレアチニンクリアランス(CCr)や日本人向け推算糸球体濾過量(eGFR)が用いられるが血清Cr値は男女差、筋肉量による差があり、併用薬による影響を受けることなどを理解しておく必要がある。腎排泄型薬物の投与設計には正確な腎機能の見積もりが必須であるが、標準体型男性以外ではeGFR(mL/min/1.73m2)ではなく体表面積未補正値(mL/min)を用いる必要がある。ただし抗菌薬・抗がん薬など投与量がmg/kgやmg/m2となっている際には体表面積補正値(mL/min/1.73m2)を使う。またCG式は肥満患者では腎機能を過大評価するため理想体重を用いる必要がある。添付文書にCCrによって投与量を定めている場合、そのほとんどが海外治験データによるため血清Cr値をJaffe法で測定されており、Jaffe法によるCCrはGFRに近似する。そのため添付文書上はCCrで表記されていても患者の腎機能には実測GFR、推算GFRまたは実測CCr×0.715を用いる。海外と日本の添付文書が同じCCrの記載であっても、ハイリスク薬では酵素法で測定したCCrで投与設計するとJaffe法と酵素法のわずかな差が過剰投与による重篤な副作用リスクにつながる恐れがある。痩せた高齢者で筋肉量が少ないためeGFRが高く推算される場合には、正確に腎機能を評価するには実測CCr×0.715あるいはシスタチンCによる体表面積未補正eGFR(mL/min)を用いる。若年者で血管作動薬・輸液の投与を受けている全身炎症の患者においては過大腎クリアランスにより腎機能が正常以上に高くなることがある。
著者
下石 和樹 安楽 誠 庵原 大輔 平山 文俊 門脇 大介 陣上 祥子 丸山 徹 小田切 優樹
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.55-60, 2018-02-10 (Released:2019-02-10)
参考文献数
8

Because it is essential to restrict phosphorus intake in dialysis patients, we investigated the phosphorus content per daily standard dose for eight different types of Chinese medicine and 12 different supplements, all of which are typically used by dialysis patients. Phosphorous contents in the range of 3-12 mg were detected in all of the Chinese medicines. Although 11 of the 12 kinds of supplements contained phosphorous, the levels were less than those in the Chinese medicines. The highest phosphorus content among those supplements was found in glucosamine, with a phosphorous content of 6 mg per dose. The phosphorous contents of glucosamine samples obtained from five different companies were all different. Taking these findings together, the intake of phosphorus by dialysis patients heeds to be restricted and the phosphorus contents of Chinese medicines and supplements need to be taken into consideration, by evaluating the total phosphorus intake per day for such patients. Pharmacists should pay attention to maintaining the serum phosphorus level within a reference value by effectively using a phosphate binder if necessary.
著者
平良 知子 曽田 彩夏 坂口 翔一 石松 隆志 園田 昭彦 平山 英雄 成田 勇樹 門脇 大介 平田 純生
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.15-25, 2012 (Released:2018-04-02)
参考文献数
30

血液透析(HD)患者は、カリウム制限による水溶性ビタミン摂取不足、HDによる水溶性ビタミンの除去、酸化ストレス亢進に伴う抗酸化ビタミンの消費亢進などにより一部のビタミンが欠乏するという報告が散見される。そこで、HD患者に至適量のビタミン補給を目的としたチュアブル錠のマルチビタミンサプリメント「ネフビタンKD」(以下、KD-MV)が日本で初めて研究開発され、上市された。本研究ではKD-MV摂取の有用性及び安全性の評価を目的として検討を行った。 対象は維持透析療法を受けているHD患者83人で、二重盲検プラセボ対照無作為化クロスオーバー試験を1年間行った。クロスオーバーは半年経過後に実施し、A群はKD-MVを前半の半年間、B群は後半の半年間摂取した。調査項目は、腎疾患患者用QOL評価尺度であるKDQOL、酸化ストレス指標、その他臨床検査値及び血液生化学検査項目とし、安全性の評価は患者や医療者からの報告の有無で判断した。2ヶ月間の平均服薬率が75%未満、または採血ポイント欠落の患者は解析から除外した。 解析対象者は45人で、クロスオーバー解析の結果、KDQOLでは「症状」「腎不全の日常生活への影響」の項目でKD-MV摂取後に改善傾向を示し、特に筋痙攣やしびれなどの改善が認められた。AST・ALT値はKD-MV摂取後、正常範囲内で有意に上昇したが(⊿AST; 3.4±5.6 IU/L、p<0.001、⊿ALT; 4.2±6.5 IU/L、p<0.001)、他の生化学検査項目・酸化ストレス指標はともに有意な変化は認められなかった。有害事象は、KD-MVと因果関係不明な不定愁訴3件のみであった。 今回、KD-MV服用により主な検査値や酸化ストレスの変動は認められなかったものの、有害事象を示さず、HD患者のQOLを改善する結果が得られた。したがって、今回の知見はHD患者におけるKD-MV摂取の有用性を示唆するものである。
著者
宮村 重幸 柴田 啓智 下石 和樹 浦田 由紀乃 森 直樹 門脇 大介 丸山 徹
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.3-8, 2014 (Released:2018-04-02)
参考文献数
6
被引用文献数
2

薬剤の適正使用を考える上で、腎機能に応じた適正な用量設定を行うことは重要である。そのため、薬剤師は血清クレアチニン値などの腎機能データを入手する必要があるが、保険薬局において、薬剤師が患者の腎機能データを入手する手段は確立していないのが現状である。今回我々は、保険薬局に勤務する薬剤師にアンケート調査を行い、患者の腎機能情報の必要性と入手手段を明らかにした。日常業務において腎機能を①考慮している(9.1%)、②どちらかといえば考慮している(54.5%)、③どちらかといえば考慮していない(27.2%)、④考慮していない(9.1%)という結果であった。腎機能に関する情報源としては、①患者・家族(77.2%)、②処方医(4.5%)、③情報を得る方法なし(9.1%)であった。この結果をふまえ、我々は患者の腎機能情報を病院と保険薬局で共有するために、お薬手帳内にeGFRを記載するシールとお薬手帳の表紙に患者の腎機能が低下していることを示すシールを考案した。そして、本ツールの有用性を検討するために、情報提供を受けた薬剤師を対象にアンケート調査を実施したところ、本ツールが①有用(50.0%)、②どちらかといえば有用(36.3%)であった。今回の調査から、保険薬局において、患者の腎機能に関する情報は必要とされているにもかかわらず、入手できていないことが明らかとなった。そのため、シールを用いて患者の腎機能情報を共有する試みは、保険薬局に勤務する薬剤師に対しても患者の腎機能を考慮した処方設計に対する注意喚起に大変有用であり、腎排泄型薬剤の過量投与を防ぎ、医薬品適正使用に大きく貢献できることが示唆された。