著者
成末 まさみ 杉本 悠花 柴田 龍二郎 大坪 俊夫 平田 純生
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.155-161, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

プレガバリン (リリカ®) は尿中排泄率約90%と腎排泄性薬物であり腎機能に応じた用量調節を行い安全に使用することが臨床現場での課題となっている. 光晴会病院では, 添付文書での推奨投与量以下の用量での有害事象発生状況について調査を行った. 調査期間は2010年6月~2013年11月で120名のうち, 14名でめまい・嗜眠などの中枢神経系有害事象が発生した. 多くは投与開始後6日以内にみられ, 有害事象発生群の体重は非発生群に比し, 有意に低かった (p=0.005). 腎機能低下が進行するほど有害事象発生率は高くなる傾向にあり, 非腎機能低下患者 (n=73) の発生率4%に対し, 腎機能低下患者 (n=47) の発生率は23%と有意に有害事象発生率が高かった (p=0.003). プレガバリンについて, 薬剤師が患者の腎機能を正確に把握し, 投与前の投与量の適正化を行うだけでなく, 体格を考慮した投与設計の実施が必要と考えられた.
著者
平田 純生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.826-833, 2018-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
10

診断し,処方箋を書く医師は,薬物動態・相互作用について必ずしも得意なわけではない.それを補うためには,これからの薬剤師は「調剤し服薬指導をする人」から「薬物適正使用を推進する人」に変わっていく必要がある.それによって,①腎機能低下患者の中毒性副作用の未然防止,②適切な服薬指導による腎機能悪化・心血管合併症の防止,③腎毒性薬物による薬剤性腎障害の防止について,医師との緊密な協力によって成し遂げなければならない.
著者
内海 紗良 前田 圭介 久保田 丈太 中谷 咲良 原田 義彦 成田 勇樹 猿渡 淳二 近藤 悠希 石塚 洋一 入江 徹美 門脇 大介 平田 純生
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-10, 2021 (Released:2021-08-17)
参考文献数
21

日本では、血清クレアチニン(SCr)値を用いたCockcroft-Gault式による推算クレアチニンクリアランス(eCCr)や日本人向け推算糸球体濾過量(eGFRcr)によって腎機能が推算されるが、筋肉量の減少に伴うSCr値の低下により腎機能が過大評価されてしまう恐れがある。これを防ぐため臨床現場ではSCr値が0.6 mg/dL未満の患者に、SCr=0.6 mg/dLを代入して補正するround up法が汎用される。ところが、このround up法により腎機能推算の予測性が向上したといった報告は少なく、科学的根拠は乏しい状況である。本研究では、SCr=0.6 mg/dLへのround up法の妥当性を評価した。2017年5月から2017年8月に玉名地域医療保健センターに入院していた65歳以上でSCr値が 0.6 mg/dL未満のサルコペニア患者11名を対象に、後ろ向き解析を行った。酵素法により測定したSCr値を用いたeCCrおよびeGFRcrと、SCr=0.6 mg/dLにround upしたeCCr(round up)およびeGFRcr(round up)のそれぞれの値を、24時間蓄尿法で求めたCCr(mCCr)およびmCCr×0.715で換算したmodified GFRを基準値として比較した。相関・回帰分析、Bland-Altman分析および誤差指標から、eCCr(round up)値はeCCr値よりも腎機能を過小評価する傾向があった。eGFRcr値は腎機能を顕著に過大評価し、eGFRcr(round up)値は過大評価が軽減されるが、依然として過大評価傾向にあった。今回の検討からは、eCCr値およびeGFRcr値のどちらの推算式においてもround upの妥当性は示されなかった。このことから筋肉量が減少したサルコペニア患者においては、SCr値をround upすることは適切ではなく、むやみにround upを行うことは避けるべきである。
著者
平田 純生 柴田 啓智 宮村 重幸 門脇 大介
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-18, 2016 (Released:2018-04-02)
参考文献数
54

腎機能は糸球体濾過量(GFR)で表され、イヌリンクリアランスは最も正確なgold standardであるが、測定手技が煩雑であるため、実臨床ではあまり用いられない。多くは血清クレアチニン(Cr)値を基にした腎機能推算式であるCockcroft-Gault(CG)式による推算クレアチニンクリアランス(CCr)や日本人向け推算糸球体濾過量(eGFR)が用いられるが血清Cr値は男女差、筋肉量による差があり、併用薬による影響を受けることなどを理解しておく必要がある。腎排泄型薬物の投与設計には正確な腎機能の見積もりが必須であるが、標準体型男性以外ではeGFR(mL/min/1.73m2)ではなく体表面積未補正値(mL/min)を用いる必要がある。ただし抗菌薬・抗がん薬など投与量がmg/kgやmg/m2となっている際には体表面積補正値(mL/min/1.73m2)を使う。またCG式は肥満患者では腎機能を過大評価するため理想体重を用いる必要がある。添付文書にCCrによって投与量を定めている場合、そのほとんどが海外治験データによるため血清Cr値をJaffe法で測定されており、Jaffe法によるCCrはGFRに近似する。そのため添付文書上はCCrで表記されていても患者の腎機能には実測GFR、推算GFRまたは実測CCr×0.715を用いる。海外と日本の添付文書が同じCCrの記載であっても、ハイリスク薬では酵素法で測定したCCrで投与設計するとJaffe法と酵素法のわずかな差が過剰投与による重篤な副作用リスクにつながる恐れがある。痩せた高齢者で筋肉量が少ないためeGFRが高く推算される場合には、正確に腎機能を評価するには実測CCr×0.715あるいはシスタチンCによる体表面積未補正eGFR(mL/min)を用いる。若年者で血管作動薬・輸液の投与を受けている全身炎症の患者においては過大腎クリアランスにより腎機能が正常以上に高くなることがある。
著者
原田 敬子 平田 純生 奥平 由子 閑田 なるみ 山澤 紀子 山本 員久 東 治人 安田 英煥 小野 秀太
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.213-217, 2005-03-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

H2拮抗薬ラフチジンによると思われる幻覚・幻視, 異常発言などの精神神経症状がみられた血液透析患者2症例を経験した. 症例1は64歳男性, ラフチジン20mg/日を10日間投与した後, 幻覚・幻視を訴えた. 症例2は55歳男性, ラフチジン20mg/日開始後6か月目より幻覚症状が発現し, その際の血漿ラフチジン濃度は918.8ng/mL (透析前) であり, それは腎機能正常者に同量投与した時の平均ピーク濃度の4.5倍であった. 2症例ともラフチジン投与中止後精神症状が速やかに消失したことから本剤の中毒症状であると考えられた. ラフチジン錠は尿中未変化体排泄率は10.9%であるもののバイオアベイラビリティが不明である. そのため腎機能に応じた投与設計は容易ではなく, 透析患者に対しては他の腎排泄型H2拮抗薬と同様に慎重に投与する必要があると思われた.
著者
平田 純生
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.4, pp.461-470, 2012 (Released:2012-04-01)
参考文献数
39
被引用文献数
1

The kidney is the most important organ for the excretion of drugs. It was previously thought that appropriate dosages of these drugs could be easily estimated by evaluating the kidney function of patients and the excretion rate of the drug. However, the pharmacokinetic characteristics of patients with kidney disease are as follows: 1) Active metabolites with a higher polarity can accumulate, which can induce unpredictable adverse effects. For example, over sedation with morphine or the development of the fatal toxic syndrome in the case of allopulinol are due to the accumulation of active metabolites derived from these drugs. 2) Although the renal excretion rate of acetoaminophen is only less than 5%, the accumulation of its glucuronide conjugate during multiple dosing in patients with kidney failure may induce high serum acetoaminophen trough levels via the entero-hepatic circulation. 3) Although the renal excretion rate of the drugs are negligible, a remarkable increase in the serum levels of certain drugs were observed in patients with end stage kidney disease, suggesting a significant reduction in non-renal clearance probably by the accumulation of uremic toxins. For drugs that are likely to be administered to patients with kidney disease, even including drugs that are not excreted by the kidney, a full pharmacokinetic study should be conducted in patients and the results carefully assessed. Information on dosing adjustments for impaired kidney function based on estimated glomerular filtration rates should then be clearly stated in the package insert of the drugs.
著者
平良 知子 曽田 彩夏 坂口 翔一 石松 隆志 園田 昭彦 平山 英雄 成田 勇樹 門脇 大介 平田 純生
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.15-25, 2012 (Released:2018-04-02)
参考文献数
30

血液透析(HD)患者は、カリウム制限による水溶性ビタミン摂取不足、HDによる水溶性ビタミンの除去、酸化ストレス亢進に伴う抗酸化ビタミンの消費亢進などにより一部のビタミンが欠乏するという報告が散見される。そこで、HD患者に至適量のビタミン補給を目的としたチュアブル錠のマルチビタミンサプリメント「ネフビタンKD」(以下、KD-MV)が日本で初めて研究開発され、上市された。本研究ではKD-MV摂取の有用性及び安全性の評価を目的として検討を行った。 対象は維持透析療法を受けているHD患者83人で、二重盲検プラセボ対照無作為化クロスオーバー試験を1年間行った。クロスオーバーは半年経過後に実施し、A群はKD-MVを前半の半年間、B群は後半の半年間摂取した。調査項目は、腎疾患患者用QOL評価尺度であるKDQOL、酸化ストレス指標、その他臨床検査値及び血液生化学検査項目とし、安全性の評価は患者や医療者からの報告の有無で判断した。2ヶ月間の平均服薬率が75%未満、または採血ポイント欠落の患者は解析から除外した。 解析対象者は45人で、クロスオーバー解析の結果、KDQOLでは「症状」「腎不全の日常生活への影響」の項目でKD-MV摂取後に改善傾向を示し、特に筋痙攣やしびれなどの改善が認められた。AST・ALT値はKD-MV摂取後、正常範囲内で有意に上昇したが(⊿AST; 3.4±5.6 IU/L、p<0.001、⊿ALT; 4.2±6.5 IU/L、p<0.001)、他の生化学検査項目・酸化ストレス指標はともに有意な変化は認められなかった。有害事象は、KD-MVと因果関係不明な不定愁訴3件のみであった。 今回、KD-MV服用により主な検査値や酸化ストレスの変動は認められなかったものの、有害事象を示さず、HD患者のQOLを改善する結果が得られた。したがって、今回の知見はHD患者におけるKD-MV摂取の有用性を示唆するものである。
著者
平田 純生
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.863-867, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
8

実際の例を示して,それに基づき本稿の重要性についての解説を進めたい.腎機能の評価ミスにより投与設計を誤ったメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant staphylococcus aureus:MRSA)感染症症例有料老人ホームに長期入居の男性(年齢90歳,体重37.7kg,身長150cm)が体調不良を訴え入院.入院時検査値は血清クレアチニン(Cr)0.34mg/dL,血中尿素窒素(BUN)5.1mg/dL,血清アルブミン1.7g/dLで,MRSA敗血症と診断され,尿中排泄率90%のバンコマイシンの投与設計を行った.日本人向け糸球体ろ過量(GFR)推算式では正常値は100mL/min/1.73m2であるが本症例では推算GFR(eGFR):mL/min/1.73m2)=194×Cr-1.094×Age-0.287=173.6mL/min/1.73m2のような高値が算出された.しかし上記eGFRの値の単位はmL/min/1.73m2であり,体表面積補正をしていないことから,薬物投与設計に用いるべきではない.そのためDu Boisの式を用いて体表面積を算出すると体表面積(BSA:m2)=体重(kg)0.425×身長(cm)0.725×0.007184=1.27m2となり,173.6mL/min/1.73m2を1.27m2で補正を外すと127.4mL/minと算出された.この腎機能を用いて解析ソフトで計算すると定常状態の血清バンコマイシン濃度の最低血中濃度(トラフ値:次回投与前濃度)は15μg/mになるはずであったが,実測値は28μg/mLと高値になり,バンコマイシンによる腎障害により,血清Cr値が7.6mg/dLに上昇し透析導入が必要になった.実はこの症例は腎機能の見積もりを誤ったために薬剤性腎障害を来したと考えられる.腎排泄性薬物の投与設計には薬物の尿中排泄率と患者の腎機能が必要であるため腎機能の正確な把握は,中毒性副作用を減らすためにも,薬物投与設計上の基本と言える.上記症例のような誤りを起こさないためにも,腎機能を正しく把握するコツと理論について以下に記載する.
著者
山川 真 山本 忠司 水谷 洋子 西谷 博 八星 元彦 平田 純生 堀内 延昭 清水 元一 山本 啓介 岸本 武利 前川 正信
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.115-127, 1982-03-31 (Released:2010-03-16)
参考文献数
55

炭酸塩の析出という重曹透析液の欠点は, 酢酸ソーダを緩衝剤として用いることによって解決されたが, 透析法の発達によって新たに酢酸透析の問題点が指摘されるようになった. まず, dialyzerの効率の上昇に伴って, 透析液から生体に負荷されるacetate量がその代謝能を超える可能性があることと, 患者の中にはacetateの代謝能が低いものがあることがわかった. またacetateの大量負荷が生体のTCA-cycleに影響を及ぼすことが明らかにされた. 第2は, 酢酸透析では, dialyzerを通して血液から失われるHCO3-とCO2が大きいため, 適正な酸塩基平衡の是正が行われないこと, またCO2の低下から生ずるPO2の低下も考えられた. 第3はacetateの心機能抑制作用と, 未梢血管拡張作用が, 透析に不利に働いて, 透析中の不快症状の原因になっていることが示唆された. 第4はacetateの代謝経路から考えて, 長期には脂質代謝に何等かの影響が及ぶことが推測される. 第5は, まだ知見は少ないが, 重曹透析がCa代謝に有利に働くことが期待される.実際, 酢酸透析を重曹透析に移行することによって, 透析中の不快症状の発現が激減し, 種々の検査成績も改善することが示された. 重曹透析はすべての透析患者にとって有利な透析を提供すると考えられるが, 特に酢酸不耐症、 重症合併症、 心循環系合併症, 導入期, 大面積短時間透析等の症例に有効である. 重曹透析液は炭酸塩の沈澱を防止することが最大の課題であるが, そのためには, 液のpHの安定化をはからねばならない. このことはとりもなおさず, 液のPCO2の安定化に他ならない. 現在では, 重曹透析液は2原液法によって作製されるが, 安定した組成の液とその混合供給装置が開発され実用化している. 重曹透析は生理的で有用であるが, その取扱いはやや煩雑で、 高価になるので, 今後これらの点の改良が望まれる.