著者
間野 博行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.1355-1359, 2014-06-10 (Released:2015-06-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

癌の発生に寄与する遺伝子のことをドライバー変異と呼び,近年肺癌において次々と同定されてきている.特に活性型チロシンキナーゼはその阻害薬も比較的簡便にデザインしやすいので重要である.肺腺癌においては活性型EGFR変異,EML4-ALK,ROS1融合型遺伝子,RET融合型遺伝子などが発見され,肺癌の個別化医療が可能になってきた.
著者
間野 博行
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.889-893, 2010

我々は肺腺癌の4~5%において2番染色体短腕内に微小な逆位が生じた結果,新たな癌遺伝子<i>EML4-ALK</i> が生じることを発見した.この逆位により,受容体型チロシンキナーゼALKの細胞内領域が微小管会合タンパクEML4と融合したタンパクが産生されるが,EML4内の二量体化領域によりEML4-ALKは恒常的に二量体化・活性化され肺癌の直接的原因となるのである.<i>EML4-ALK</i> を肺胞上皮特異的に発現するトランスジェニックマウスは生後速やかに両肺に数百個もの肺腺癌を多発発症するが,同マウスにALK酵素活性阻害剤を投与すると肺癌は速やかに消失した.したがって<i>EML4-ALK</i> は同遺伝子陽性肺癌の本質的な発癌原因であり,だからこそその機能を阻害する薬剤は肺癌の全く新しい分子標的療法となることが期待されるのである.既に実際の<i>EML4-ALK</i> 陽性肺癌症例に対するALK酵素活性阻害剤による第I/II相臨床試験も終了し,その目覚ましい治療効果が確認され,現在日本を含む国際第III相臨床試験へと移行している.我々の発見により,今後世界中で何万人・何十万人の肺癌患者の生命予後が大きく変わろうとしている.<br>
著者
高久 史麿 間野 博行 石川 冬木 平井 久丸
出版者
東京大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1989

ヒト白血病細胞における癌遺伝子の機能、相互連関を明らかにする目的で、これまでにPCRを用いてNーRAS、ABLなどの既知の癌遺伝子の活性化の有無を検討した。更に、白血病細胞に特異的に発現している新しいタンパク質チロシンキナーゼ遺伝子であるヒト1+K遺伝子のcDNAをクローニングし、その構造、発現、機能について検討した。1.PCRによる活性化癌遺伝子の検出種々のヒト白血病、前白血病よりDNAもしくはRNAを抽出し、ヒトNーRASをPCRもしくはRTーPCRにより遺伝子増幅した。急性白血病18例中5例、慢性白血病12例中0例、前白血病状態23例中3例にNーRASコドン12、13、61における点突然変異を検出した。この検出感度は全細胞の1%に点突然変異が存在すれば、これを検出できた。更に、RTーPCRによりBCR/ABL再配列mRNAの有無を検討した。慢性骨髄性白血病、Philadelphia染色体陽性急性リンパ性白血病の全例に再配列mRNAが検出された。この検出感度は10^6細胞に1つの突然変異細胞を検出できた。このように、PCRを用いると非常に高感度、簡便に突然変異を検出でき、患者の経過を観察する上で、有意義であった。II.新しいチロシンキナーゼ遺伝子1+Kヒト白血病に関与していると思われる新しい癌(関連)遺伝子を同定する目的で、ヒト白血病細胞株であるK562のcDNAライブラリーをcーfmsプローブで低ストリンジェンシーで、スクリーニングしクローニングを得た。構造解析により、これはマウスで報告された1+Kのヒトホモログであることが分かった。この遺伝子は膜貫通部位とチロシンキナーゼドメインを持ち、ROS遺伝子と強いホモロジーを示すいわゆるレセプタータイプのチロシンキナーゼである。18例の血液悪性腫瘍細胞(株)と17例の非血液悪性腫瘍株についてトザンハイブリダイゼーションにより発現を検討した。10例の血液悪性腫瘍(株)発現が見られたが、他の非血液腫瘍に見られなかった。
著者
海道 清信 間野 博
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、人口減少、高齢化に直面している我が国の都市地域における持続可能な都市形態について、都市形態論、都市空間論の視点から明らかにすることを目的としている。(1)我が国および西欧の都市形態論にかかわる理論、研究、論争をコンパクトシティ論も軸に整理・検討した。日本とヨーロッパにおいて、文献、現地調査によって都市再生と都市形態・都市圏計画との関連性を、都市圏計画と政策、複合機能・環境共生型の再生事業、居住地再生などを対象に調査した。(2)国土レベルにおける、知識基盤サービス産業の立地特性と地域空間構造との関連性を、統計解析により明らかにし、いくつかの類似したグループを抽出できた。(3)統計データを用いて、名古屋都市圏の都市空間構造を解析し、中心性、成長性、成熟性などの特徴によって、都市類型化を行った。また、名古屋市の都市空間構造の特性を、人口・家族・住宅などの国勢調査データとパーソントリップ調査データを用いて、小学校区レベルで多変量解析によって類型化を行った。(4)人口減少、高齢化が進む名古屋都市圏の郊外団地の実態を、空き地空き家に着目して調査した。可児市、多治見市の住宅団地(入居開始後20年以上経過した約40地区)を対象に、空き地空き家の所在、利用状況、団地の開発時期、規模、立地条件、住環境水準、人口動向、地価動向を把握・解析した。主要な住宅団地の将来人口予測を行った。さらに、典型的な住宅団地の住民アンケート調査を実施した。広島都市圏においても、典型的な住宅団地の実態調査を行った。(5)以上のような調査研究を元に、人ロ減少と急速な高齢化を迎える我が国における持続可能な都市形態のあり方を総合的に考察・検討した。研究成果は、2007年12月に単著『コンパクトシティの計画とデザイン』として学芸出版社から出版した。