著者
伊東 信宏 小島 亮 新免 光比呂 奥 彩子 太田 峰夫 輪島 裕介 濱崎 友絵 上畑 史 阪井 葉子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ブルガリアの「チャルガ」は、「マネレ」(ルーマニア)、「ターボフォーク」(旧ユーゴ諸国)などのポップフォーク(民俗的大衆音楽)と並んで、1990年代以降バルカン諸国に特有の社会現象であり、同様の現象は日本の「演歌」をはじめとしてアジア各国にも見られる。本研究はそれら諸ジャンルの比較を行い、その類似と差異をあきらかにすることを目指してきた。これまでに大阪、東京などの諸都市で、8回の研究会を開催し、20の報告が行われた。2017年にはこの問題に関する国際会議を開催する予定である。そこでは上記諸ジャンルの社会的文脈を検証し、歌詞や音楽構造の分析が行われた。日本語による単行本出版が準備されている。
著者
阪井 葉子
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
no.51, pp.5-23, 2013-03-01

アメリカ合衆国からフォークリバイバル運動が世界中にひろまった1960年代、ナチス・ドイツによって破壊された東方ユダヤ人集落(シュテートル)に伝わっていたイディッシュ語の歌をレパートリーに、西ドイツで演奏活動をはじめた歌手たちがいた。彼らがイディッシュ・ソングを取りあげた動機は過去の克服とユダヤ文化の破壊に対する贖罪だった。その意図の真摯さ故に、彼らの演奏活動はユダヤ人教区やイスラエルでも認められた。ただし、社会批判的な運動であるはずのフォークリバイバルにも、伝統歌謡のうたいあげる過去の世界へのノスタルジーと結びついた保守的な側面がある。イディッシュ・ソングのうたう「失われたシュテートル」への憧れにふけることで、とりわけ若い世代のドイツ人のあいだで、自国の罪に対する意識が薄れていく危険性がある。