著者
近貞 直孝 鈴木 亘 三好 崇之 青井 真 根本 信 大嶋 健嗣 松山 尚典 高山 淳平 井上 拓也 村田 泰洋 佐竹 次郎 阿部 雄太 是永 眞理子 橋本 紀彦 赤木 翔
出版者
防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所研究資料 = Technical Note of the National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience (ISSN:1347748X)
巻号頁・発行日
no.430, pp.1-169, 2019-03-28

日本海溝海底地震津波観測網(S-net)などの稠密な沖合の海底水圧観測網によって得られる観測記録を用いて津波の浸水を即時に予測するための手法の開発を行った.この手法では,津波計算結果を用いて沖合の水圧変動と予測対象地域の沿岸水位分布,浸水深分布,到達時間を記録する津波シナリオバンク(Tsunami Scenario Bank; TSB)を予め用意する必要がある.理想的には,想定されるあらゆる地震による津波シナリオを登録すれば予測精度の向上が期待されるが,有限の時間と計算機資源では実現不可能である.そこで,本研究資料では,予測対象地域に対して効率的に津波シナリオバンクを構築するため の手順を千葉県九十九里・外房地域を対象とした場合の実例とともに示した.ここでは網羅性を担保するため,南海トラフや伊豆・小笠原海溝のように遠方の波源断層モデルを設定しているが,予測対象地域での沿岸水位分布の変化が大きくならないよう連続性が担保されるように波源断層モデルを間引いて計算コストを圧縮した.さらに,まずは比較的計算コストの小さい最小 90 m 格子の沖合津波計算を実施することで,沿岸に到達する津波を予め評価した上で計算コストの大きい最小 10 m 格子の陸域浸水計算を実施するようにした.陸域浸水計算においては,構造物条件の違いが与える浸水深分布への影響の評価を行った.ここでは,安全よりの「構造物が損傷しない場合」と危険よりの「構造物の損傷が大きい場合」に加えて,最も確からしい「構造物の損傷率を考慮する場合」について陸域浸水計算を実施し評価した.一方,津波浸水即時予測システムを構築する際には,情報の受け手である利用者のニーズに応じて予測に用いる構造物条件を決定する必要がある.最後に,構築した津波シナリオバンクの妥当性と予測手法(Multi-index 法)の検証のため既往津波を模擬データとして評価し,一定程度の精度が得られて いることを確認した.また,多層ニューラルネットワーク回帰をMulti-index 法と併用することで予測 精度を向上することが出来ることを確認した.We have developed a new algorithm for a real-time tsunami inundation forecast in the Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program (SIP) titled "Enhancement of societal resiliency against natural disasters" using ocean bottom pressure changes taken by the Seafloor Observation Network for Earthquakes and Tsunamis along the Japan Trench (S-net). In this algorithm, we need to prepare the Tsunami Scenario Bank (TSB), which contains offshore tsunami waveforms at the observatory locations and the maximum tsunami height distributions, inundation depths and arrival times along the target coastal region. Ideally, TSB should contain tsunami information for all possible tsunami sources that may affect the target region, but it is impossible to prepare them in a finite time and computer resources. This technical note provides how we designed TSB for real-time tsunami inundation forecast and constructed the TSB for the Pacific coast of Chiba prefecture. Furthermore, to evaluate the propriety of our algorithm called the Multi-index method, we investigate pseudo tsunami scenarios represented paleo-tsunamis.
著者
篠田 昌宏 竹村 裕介 蛭川 和也 高岡 千恵 長谷川 康 尾原 秀明 北郷 実 阿部 雄太 八木 洋 松原 健太郎 山田 洋平 堀 周太郎 田中 真之 中野 容 板野 理 黒田 達夫 北川 雄光
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.101-108, 2021-02-01

わが国の肝移植は,かつてない大きな変革を遂げている.2019年,脳死肝移植は全移植数の1/5を数えるようになった.Allocation制度も大きく改変され,model for end-stage liver disease(MELD)制などが実臨床に大きな影響を与えている.ドナー情報を得られる機会が増加し,高MELDなど重症患者の増加も見込まれる中,脳死肝移植ナショナルデータ解析のプロジェクトもすすんでいる.さらに,働き方改革,互助制度,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)など新たな移植のスタイルが成り立とうとしている.
著者
杉野 英治 岩渕 洋子 阿部 雄太 今村 文彦
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.4_40-4_61, 2015 (Released:2015-08-24)
参考文献数
28

2011年東北地方太平洋沖地震津波の発生及び東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、原子力発電所の津波リスク評価のためには、将来発生する津波の規模は既往最大を上回る可能性があることを前提とした、確率論的津波ハザード評価手法の高度化が必要である。同地震津波の発生以後、このような概念に基づく津波想定が提案されている。そこで、千島海溝から日本海溝沿いのプレート間地震に想定される津波波源を対象に具体的な適用方法と事例を示し、既往最大を基本とする従来の津波想定と比較することにより、津波想定に係る不確実さの取扱いが確率論的津波ハザード評価結果に及ぼす影響・効果を示す。