著者
森 禎三郎 藤村 匠 山田 洋平 狩野 元宏 佐藤 健二 浅沼 宏 星野 健 長谷川 奉延 黒田 達夫
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.841-849, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
38

総排泄腔遺残症・外反症や性分化異常症では,生命予後やQOLは改善されてきたが,生殖機能における長期的予後は十分に改善されているとは言えない.当院では小児外科,小児科,泌尿器科,産婦人科でチームを形成し,症例ごとに治療を行っている.今回,外陰部形成術を施行した5例を後方視的にまとめ,術式の選択と至適な手術時期について検討した.原疾患は総排泄腔遺残症が2例,総排泄腔外反症,先天性副腎皮質過形成症,原発性性腺機能低下症が1例ずつであった.外陰部形成には,結腸間置法,skin flap法,pull-through法,total urogenital mobilization,骨盤腹膜利用法をそれぞれ用いた.外陰部形成術を行う疾患は多岐にわたり,病態も多様なため,症例に応じたアプローチが必要である.疾患に応じて手術時期を設定し,乳児期より多科連携による治療戦略のロードマップを描くことが重要である.
著者
篠田 昌宏 竹村 裕介 蛭川 和也 高岡 千恵 長谷川 康 尾原 秀明 北郷 実 阿部 雄太 八木 洋 松原 健太郎 山田 洋平 堀 周太郎 田中 真之 中野 容 板野 理 黒田 達夫 北川 雄光
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.101-108, 2021-02-01

わが国の肝移植は,かつてない大きな変革を遂げている.2019年,脳死肝移植は全移植数の1/5を数えるようになった.Allocation制度も大きく改変され,model for end-stage liver disease(MELD)制などが実臨床に大きな影響を与えている.ドナー情報を得られる機会が増加し,高MELDなど重症患者の増加も見込まれる中,脳死肝移植ナショナルデータ解析のプロジェクトもすすんでいる.さらに,働き方改革,互助制度,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)など新たな移植のスタイルが成り立とうとしている.
著者
黒田 達夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.35-38, 2009-01-31 (Released:2009-03-03)
参考文献数
9

本稿では自験例の検討を交えて小児急性腹症診察のポイントをまとめた。当科で入院した小児腹部救急疾患症例の内訳では,急性虫垂炎が全体の半数を占め,さらに腸重積症,イレウス,胆道拡張症の4疾患で全体の95%以上を占めた。小児の急性腹症ではこれらの頻度の高い疾患が多様な症状,経過を呈していることが多く,これらの疾患は必ず念頭に置かなければならないものと考えられた。一方で外科の立場からは,急性腹症のprimary surveyとして,原因疾患の鑑別診断よりも,手術を要する緊急性の高い腹痛を見分ける病態診断が最優先されるべきであると考える。このため小児の急性腹症においては,初療段階より小児救急医,小児内科医,小児外科医の緊密な連携が必須であり,こうした連携を勘案した地域の小児救急医療体制を整備してゆく必要があるものと思われる。