著者
岩本 優衣 後藤 健治 芋縄 有磨 余野 聡一郎 富永 寛 陳 蘭庄
出版者
南九州大学
雑誌
南九州大学研究報告. 自然科学編 = Bulletin of Minamikyushu University (ISSN:1348639X)
巻号頁・発行日
no.47, pp.115-123, 2017-04

宮崎県在来野菜の日向カボチャはニホンカボチャ Cucurbita moschataの黒皮品種群に属している。しかし,昭和40年以降はセイヨウカボチャ C. maximaが粉質の肉質と良好な食味で普及し,日向カボチャの栽培面積は減少し,現在は高級和食料亭用として宮崎市と都城の一部で施設栽培が行われているにすぎない。このような状況で本研究室では,2008年度から日向カボチャの代表品種である'宮崎早生1号'とセイヨウカボチャとの種間交雑を行い,着果効率の向上と果実特性の改善を目指してきた。本研究では,2010,2011年度に正逆ともに種子を得られた'久台33号'との種間雑種後代20系統の自殖を行い,同時着果率および糖度測定,食味官能試験,果実形態の調査を行った。同時着果率は2015年度に連作障害や細菌病が発生したことで着果率が低くなったが,2014年度の結果は16系統において同時着果が見られた。自殖により得られた果実の形質は共通として表面にブルームがあり,やや深い溝と凹凸の隆起部が見られ心臓型の果形を示し,果皮色については'久台33号'の形質が現れた。糖度測定・食味官能試験の結果は両年度ともに'宮崎早生1号'よりも糖度が高く,良食味な理想形を有する系統がいくつか得られた。
著者
升岡 繁 西村 佳子 高畑 康浩 陳 蘭庄
出版者
南九州大学
雑誌
南九州大学研究報告. 自然科学編 = Bulletin of Minamikyushu University (ISSN:1348639X)
巻号頁・発行日
no.46, pp.41-48, 2016-04

アポミクシスは母親の遺伝子型だけが子供に伝わる生殖である。この形質を実用すれば,一代雑種の固定や栄養繁殖性植物の種子繁殖性植物への転換が可能になるなど,「緑の革命」以上の経済効果が期待される。本研究室では,アポミクシス性ギニアグラスからアポミクシス性特異的遺伝子(ASG-1)をクローニングしている。ASG-1の機能解析を行うため,栄養繁殖性植物のサツマイモへの遺伝子導入実験を実施している。本研究では,サツマイモの遺伝子導入実験をネッパジーン社の装置を用いて,種子を使って行うことを目標としているが,最初の取り組みとしてまず,コダチアサガオを用いたサツマイモとの接ぎ木を行い,サツマイモ品種の「コガネセンガン」,「ナルトキントキ」,「ベニアズマ」を掛け合わせ,獲得した種子にレポーター遺伝子であるGUSを導入する実験を実施した。その結果,1) 交雑和合性によるサツマイモ品種の選別: 九州沖縄農業研究センターの判断基準に照らして6つの品種・系統の中から3つの品種を選定することができた。2) 花粉親と種子親の選別による種子結実: 今回接ぎ木で使用したサツマイモの3品種について,正逆交雑によって種子生産を目的とした実験で,それぞれコガネセンガン・ベニアズマ・ナルトキントキの種子を獲得できた。3) 種子への直接遺伝子導入実験: エレクトロポレーションによる種子への直接遺伝子導入を行い,遺伝子導入の有無についてGUS染色を行ったところ,施したすべての条件下で,初めてサツマイモの種子および幼苗を用いたが,いずれもGUSの発現が認められた。今後はGUS発現が認められた条件下でpWI-H5Kを用いてジェネティシンによる植物体作出のための選抜を行っているところである。
著者
永松 敦 足立 泰二 陳 蘭庄 篠原 久枝 宮崎公立大学民俗学演習 Atsushi NAGAMATSU Taiji ADACHI Lanzhuan CHEN Hisae SHINOHARA SEMINAR-MMU FOLKLORE 宮崎公立大学人文学部 宮崎大学 南九州大学 宮崎大学 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki University Minami Kyushu University Miyazaki University Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.121-200, 2020-03-06

現在、伝統野菜・在来野菜のブームが地域創生との関連で湧き上がっている。特定の地域に根差した食材としての野菜を地域づくりに活用する試みが、全国各地で展開している。ただ、伝統野菜・在来野菜の定義が曖昧なまま広範囲に利用だけが促進されると、逆に、地域文化の改変、及び、損失につながりかねない状況も起こりうる危険性も孕んでいる。本稿では、従来の見解を一度、整理しなおし、宮崎、鹿児島(種子島)の事例を中心に、理想的な伝統野菜・在来野菜利用のあるべき姿を探ってみたい。 末尾に、在来野菜に関する助成事業の報告書3種を添付する。