著者
小寺 悦子 武田 義明 青木 務
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

研究の目的を,1.年齢計数可能な樹種の範囲の拡大 2.立木の年齢計数の実施に設定し,その基礎としての木材(樹木)の弾性的性質(音速,減衰定数など)の測定,年齢計数の実行を目標とした。1)青木は,各種木材の打音の周波数,時間特性測定と官能評価の相関性および材質評価との関連性を調べ,木材の吸湿度,表面加工(ラッカー塗装)が周波数分布,減衰特性に影響すること,樹種による違いを明らかにした。2)武田は,西宮市の標高300m付近における森林の生態解析の際,95〜130年の6本のアカマツの年齢計測を従来の方法で行い,成長特性を(年輪半径)^2で表現できることを示した。3)小寺は,ベイマツ材からの超音波パルスエコーの波形解析を行い,ノイズ部分が1MHz成分を多く含むのに対し,木を伝播した後受信される反射波の周波数分布では,1MHzよりずっと低い位置にピークを持つことを明らかにし,より内部の年輪からの反射波をノイズから分離して計測できるようにした。しかし,ベイマツ材の場合では1年輪からの反射ごとに超音波の音圧は約1/3に減衰するので,13年輪を透過した超音波は(1/3)^<13>(124dB)に減衰し,市販の超音波探傷器の最大増幅度程度となる。超音波探傷器のパルスエコー検出限界の改善を行ったとしても,百年輪の検出には不十分であると予想されるが,1MHz程度の超音波の減衰定数の文献値には大きなばらつきがあるので今後は更に樹種の検討を必要とする。また,研究の方向の変更も考え,1本の木について各所で年輪を検出し,そのデータの総合の結果として樹齢を求めること,これまでの超音波による年齢計測で得られた蓄積を利用して木材(樹木)の物性研究に利用する方向を積極的に模索することを予定している。
著者
今田 晃一 木村 慶大 青木 務
出版者
文教大学
雑誌
教育研究所紀要 (ISSN:09189122)
巻号頁・発行日
no.14, pp.47-55, 2005

学習指導要領においても博学連携が求められている。博物館はモノを媒体とした教育機関であり、その展示資料は教育メディアである。学習者が博学連携の展示資料をどのような観点で評価しているかを明らかにすることは、博物館独自の学びのよさを学校教育に生かすための知見を得ることにつながると考え、調査を行った。結果、博物館、特にハンズ・オンにおける展示資料について中学生は、博物館の意図する視点とともに材料・触感性の観点からも評価していることがわかった。また博物館の学びに対して、モノに触れながらの観察を通して「モノとそのモノが使われている状況に思いを馳せる」という博物館独自の学びのイメージを適切にもっていることが明らかになった。
著者
青木 務
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

木管楽器としてクラリネットとリコーダーを用い.音の「聞こえ」の心理量と周波数分析などにより得られる物理量を関係づけることを試みた。すなわち.いつも一定の条件で楽器音が得られるように.まず簡便な吹奏装置を作製した。次に音色の管能評価実験を行った。最後に両者より得た物理量と心理量を関係づけるとともに.良い音色をだすリードとはどのようなものかを.吸水実験などから検討した。得られた結果は以下の通りである。(1)クラリネットの音色においては.響きのある豊かな音が好ましいとされた。一方リコーダーでは.豊かな音が好ましいとはされたが.響きや柔らかさには適度の範囲があるようであった。(2)両者とも,残響時間が長いほど.減衰速度が遅いほど「よく響く」音と評価されていることを確認した。なお.プラスチック管は木管と比べて.響きすぎるきらいがあると言える。(3)音の豊かさは.倍音当りのdb低下量と関係し.この低下の割合が少ないと芯のある良い音になることが確認できた。ただ.豊かさは柔らかさにも影響されることも明らかとなった。すなわち.低次寄数倍音が多くても.高周波成分の多いかたい音であれば貧弱に聞こえる。(4)リードが吸水するに伴い.音色は一度好ましくない状態になるが.一定時間後には好ましい方向に変化する。しかしそれ以降.再び好ましくない音色へと緩やかに変化する。このような変化は.吸水による材の軟化を水分吸収による質量増加の効果が組み合わさつて生じると考えられる。(5)ティップへの吸水は.材の軟化を重量増加を生じさせ.音を低周波側に移動させる。ハートへの吸水は.高周波側に移動させるが.軟化によりリードがたわみ.リードの開きが狭くなることに起固する。
著者
城 仁士 二宮 厚美 青木 務 白杉 直子 井上 真理 近藤 徳彦
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

3年間を通じて、以下の4つのアプローチを行った。1.生活環境心理学的アプローチ:集団ケアからユニットケアへの転換を試みた施設での移行研修プログラムの具体的な展開例を検討し、ケアスタッフの意識の転換を図るプログラムの検証を行った。2.社会システム論的アプローチ:「改正介護保険下の介護問題とユニットケア」をテーマに、2005年改正された介護保険のもとで、在宅ケアだけではなく、施設介護でもさまざまな問題が起こっている。それらを現段階で整理しつつ、ユニットケアに提起されている課題をコミュニケーション論から理論的に考察した。3.生活環境論的アプローチ:以下の3つの分野において実施した。衣環境:ケアを必要とする高齢者の日常生活に浸透しつつある様々なスマートテキスタイルの機能を紹介するとともに、開発現状の問題点を踏まえながらも、より豊かな生活のための利用方法についてまとめた。食環境:食の情報が氾濫する中で、健康や食の安全をどのように考え。食生活を楽しめば良いのかという観点から、緑茶、おやつの楽しみ、お漬け物、お味噌汁などを題材にして、高齢期の食生活の楽しみ方をまとめた。住環境:高齢者にとって住宅内がバリアフリーであればそれだけでいいのかという問題意識により、デンマークやスウェーデンで視察した住環境の資料を参考にしながら生活意欲を高める住まいの工夫を整理した。4.環境生理学的アプローチ:高齢期の温度環境への適応問題を取り上げ、寒さ・暑さへの備えと心がまえについての提言をまとめた。また高齢者の転倒について運動生理学的に検討し、転倒予防について具体的に提言した。
著者
城 仁士 岡田 由香 二宮 厚美 青木 務 杉万 俊夫 近藤 徳彦 小田 利勝
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は地域一体型の老人介護施設における利用者本位・住民主体の介護サービスがどのようなものであればいいのか提案し、さらにサービス機能の今後の方向性や評価方法を提言することを目的とした。平成13年度から15年度の3年間にわたって、次のような4つの研究アプローチを設定し、研究遂行した。1)社会システム論的アプローチ高齢者をとりまく社会システムを高齢者の発達及び自立支援という視点からアプローチした。特に介護保険によるサービスを個人の尊厳により選びとれる環境整備や制度的な問題点の洗い出しを行った。2)医療システム論的アプローチ高齢者を支援する環境づくりに向けて、地域医療の観点から実践研究を展開した。具体的には、高齢化率の高い過疎地域(京都市北区小野郷)における、住民が主体となって診療所を開設・運営するという新しい地域医療運動に、研究者も参加しながら、運動の経緯を検討した。3)生活環境論的アプローチ高齢者の衣食住環境を生活の主体者としての意識や生活意欲をひきだす環境づくりという視点からアプローチした。被介護者のみならず介護者、利用者の家族、スタッフのストレスを軽減するハード面とソフト面の機能を住環境学、食環境学、衣環境学から分析・評価した。4)心理行動論的アプローチ地域一体型施設における被介護者を中心としたスタッフ、介護者、地域住民の連携を促進する介護サービスの開発と評価を生活環境心理学、ストレス心理学、環境生理学の観点から行った。施設のサービス体系にもとづく調査結果を整理し、第8回ヨーロッパ心理学会や日本心理学会第67回大会に発表するとともに、今後の介護サービスの方向性やその評価方法について検討した。以上の結果に基づいて、今後は施設における集団ケアを少人数のユニットケアへ移行するとともに、個人の尊厳にもとづく新世紀型の施設介護のあり方を提言した。また、環境生理から研究からは、寒くなるとエアコンをつけるなどの行動性体温調節反応が高齢者ではどうなのかを検討した。この反応は自律性体温調節反応が衰えると大きくなり、また,高齢者では皮膚温度効果器の低下にも関係し、若年者より劣っている.このことから,高齢者の生活環境を支援するためにはこの反応も考慮する必要があることを明らかにした。最終年度には、本研究プロジェクトのこれまでの研究成果を実績報告書という形で公刊し、今後の施設ケアの方向性の参考として福祉施設関係者に配布した。