著者
青柳 宏幸
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.205-219, 2008-09-12 (Released:2017-08-10)

マルクスが労働と教育の結合を主張したことは余りにもよく知られているが、この場合、教育と結合されるべきとされた労働は資本制的生産関係下における賃労働としての児童労働であった。本稿は、国際労働者教育協会ジュネーブ大会における教育論争に注目し、その中にマルクスを位置づけることを通して、労働と教育の結合が彼の当時の社会変革構想の要約的表現であったことを明らかにしたものである。マルクスは、イギリス工場法の歴史の分析を通して、労働者階級の中で最も弱い存在である子どもの保護の必要性が認められることが大人を含めた労働者階級全体の労働時間を制限することの出発点となることに注目していた。そして、その短縮によって生じた自由時間を有効に用いることによって労働者階級が政治的な主体形成を実現していくという社会変革の展望を抱いていた。マルクスにとって、賃労働としての児童労働は、かかる社会変革の構想を可能とするものとしてきわめて重要なものであったのであり、厳格に規制されるべきではあるがけっして禁止されてはならないものであったのである。
著者
青柳 宏幸
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-14, 2012-10-13 (Released:2017-08-10)

マルクスが「資本論」において「全体的に発達した個人」という表現を用いたとき、彼がその表現によって表現しようとしていたのはプロレタリアートという近代的な労働者のすがたであった。「全体的に発達した個人」という表現によってマルクスは富一般の創造手段としての労働の主体とされているプロレタリアートのすがたを批判的に把握しようとした。マルクスにおいて「全体的に発達した個人」とは機械制大工業の発展の結果として必然的に現れる人間像を記述したものであり、意識的にその実現をめざすべき教育目的などではなかったのである。マルクスは自由時間を享受した主体は労働時間においても単なる労働の主体ではない「別の主体」になると考えていた。そして、労働者の「別の主体」への転化すなわち人間の解放は、資本制的生産関係の下での機械の発展のなかで既に密やかに始まりつつあると考えていたのである。
著者
青柳 宏紀
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.679-686, 1994

日刊編集センターが開発·運用している「ラジオ·テレビ番組情報編集配信システム」の概要·特徴·運用について述べる。本システムは, 放送局から発表になる資料からラジオ·テレビ番組表と同解説記事を効率的に制作配信する事を目的にしたシステムである。このシステムで制作した情報は, 主に新聞や雑誌のラジオ·テレビ欄に利用されている。
著者
丸山 真佐夫 齋藤 康之 栗本 育三郎 渡邊 孝一 倉持 憲司 青柳 宏昭
出版者
独立行政法人 国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校
雑誌
木更津工業高等専門学校紀要 (ISSN:21889201)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.13-18, 2016-01-29 (Released:2017-02-10)
参考文献数
7

This paper shows a construction and operations of high performance computing servers. The servers which introduced in 2013 were funded in a revised national budget. This server system contains computing servers which contain many-core processors, a general purpose server which has very large scale memory, and a high speed file server. They are connected by 1 or 10 Gbps high speed networks. This server system can provide very effective computational environment, and is very useful for research and education.
著者
青柳 宏幸
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.93, pp.49-66, 2006-05-10 (Released:2010-05-07)
参考文献数
29

The purpose of this paper is to clarify the distinctive features of Karl Marx's educational thought. Many studies on Marx fail to distinguish Marxism from Marx. However, Marx's thought is different from Marxism and has distinctively historical meanings. This paper pays attention to Marx's criticism of Max Stirner in “Die deutsche Ideologie”. Because Stirner developed the criticism of pedagogy in “Der Einzige und sein Eigentum”, Marx's educational thought can be reconstructed by means of Marx's criticism of Stirner.Stirner assumed that the rule of the spirit by the concept of “Man” was a distinctive feature of modernity and that education was its means. He criticized the suppression of the individual by “Man”. Before Stirner's book was published Marx had envigioned “Communism as the real appropriation of the human essence by and for man”. Stirner' s criticism turned out to match this Vision of communism and awakened Marx from philosophical consciousness. Marx thus stopped regarding the human essence as the assumption of the discussion and came to understand it as “the ensemble of social relations” based on the materialistic view of history. He called the refusal of this human essence theory the settlement of account with philosophical conscience. Because Stirner's pedagogy was based upon the assumption of the human essence, it can be considered that the settlement of account with philosophical conscience implied the settlement of account with pedagogical conscience. Marx changed the way of viewing pedagogy of terms of the human essence theory by explaining how such an idea as “Man” was abstracted from material relations.
著者
青柳 宏亮 沢崎 達夫
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.13, pp.23-34, 2017-03-31

心理療法やカウンセリングをはじめとする心理臨床において,ノンバーバル・コミュニケーションの重要性は学派を越えて広く認知されている。本研究では,心理臨床におけるノンバーバル・コミュニケーションに関する実証的研究を,①セラピストとクライエント間のノンバーバル・コミュニケーションを構成する各要素に着目し,それぞれの影響を検討する要素還元的アプローチ,②セラピストとクライエントの相互交流そのものを研究対象とするアプローチ,に大別して概観した上で,臨床理論的研究との関連を検討し,今後の研究課題について検討を行った。
著者
青柳 宏亮
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.83-90, 2013 (Released:2016-03-12)
参考文献数
32

本研究では,心理臨床場面におけるカウンセラーのノンバーバル・スキルのひとつであるミラーリングの効果について検討を行った。実験協力者16人に対して,キャリア・プランについての模擬カウンセリングが実施され,カウンセラーのミラーリングと,クライエントの共感についての体験・評価との関連が分析された。その結果,カウンセラーがミラーリングを行った群は行わなかった群に比べてクライエントがより共感を認知しやすくなり,ラポールの形成につながるポジティブな印象・体験を有意にもたらすことが示された。これらの結果は,共感という現象の過程とミラーリングの関連をデータによって実証したものであると考えられた。