著者
齋藤 路子 沢崎 達夫 今野 裕之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.60-71, 2008-09-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
29
被引用文献数
5 2

本研究では,自己志向的完全主義(完全欲求,高目標設定,失敗過敏,行動疑念)と攻撃性(身体的攻撃,短気,敵意,言語的攻撃)および自己への攻撃性(自己への身体的攻撃傾向,自己への敵意)の関連を検討するために,大学生444名に対して,質問紙調査を行った。その結果,高目標設定は言語的攻撃と,失敗過敏は短気,敵意,自己への身体的攻撃傾向,自己への敵意と,行動疑念は敵意,自己への敵意と,それぞれ有意な相関があった。さらに,自己志向的完全主義が攻撃性,自己への攻撃性に至るプロセスに関するモデルを構成し,共分散構造分析による検討をしたところ,(a)不適応的完全主義が強いほど,認知・情動的攻撃性が強まり,認知・情動的攻撃性が強いほど,自己への敵意が強まること,(b)不適応的完全主義が強いほど,ネガティブな反すうが強まり,ネガティブな反すうが強まるほど抑うつが強まり,抑うつが強まるほど,認知・情動的攻撃性,自己への攻撃性に影響を与えることが示唆された。最後に,自己志向的完全主義が攻撃性および自己への攻撃性に至る認知プロセスについて議論した。
著者
沢崎 達夫 小林 正幸 新井 肇 藤生 英行 平木 典子 岩壁 茂 小澤 康司 山崎 久美子
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.108-122, 2016 (Released:2018-06-03)
参考文献数
39

日本カウンセリング学会資格検討委員会は,その任期中に新たなカウンセラーの資格について検討を進めることになった。そして,公認心理師資格が実現した中,現在のわが国におけるカウンセリングの位置づけをより明確にし,また日本カウンセリング学会の発展に向けて何をすべきかを,さまざまな観点から議論してきた。認定カウンセラーに続く新たな資格は,将来的には「カウンセリング心理士」として実現される手はずであるが,そこに至る道筋の一端をここに示す。全体の構成は,「カウンセリング,カウンセラーとは(概念,定義,活動内容,領域など)」,「カウンセリング心理学と臨床心理学」,「学校におけるカウンセリングの将来展望」,「カウンセラー資格の現状と課題」,「国際資格について」,「カウンセラーとして学ぶべきこと」となっている。これらを踏まえて,日本カウンセリング学会として,カウンセリングをどのように捉え,どのようなカウンセラーを養成すべきかを明確にし,それを実現するための具体的なカリキュラムと養成方法を検討していくことが今後の課題となっている。
著者
青柳 宏亮 沢崎 達夫
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.13, pp.23-34, 2017-03-31

心理療法やカウンセリングをはじめとする心理臨床において,ノンバーバル・コミュニケーションの重要性は学派を越えて広く認知されている。本研究では,心理臨床におけるノンバーバル・コミュニケーションに関する実証的研究を,①セラピストとクライエント間のノンバーバル・コミュニケーションを構成する各要素に着目し,それぞれの影響を検討する要素還元的アプローチ,②セラピストとクライエントの相互交流そのものを研究対象とするアプローチ,に大別して概観した上で,臨床理論的研究との関連を検討し,今後の研究課題について検討を行った。
著者
齋藤 路子 沢崎 達夫 今野 裕之 Michiko Saito Tatsuo Sawazaki Hiroyuki Konno 目白大学大学院心理学研究科 目白大学人間学部 目白大学人間学部 Mejiro University Graduate School of Psychology Mejiro University Faculty of Human Sciences Mejiro University Faculty of Human Sciences
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.(4), pp.101-109, 2008

本研究の目的は,完全主義と帰属スタイルの関連の検討,および完全主義が抑うつに至るプロセスに関するモデルを構成し,共分散構造分析による検討を行うことであった。大学生444名は完全主義,内的安定的帰属スタイル,抑うつを測定する質問紙に回答した。その結果,完全欲求および高目標設定は成功場面でも失敗場面でも内的安定的帰属と関連する一方で,失敗過敏および行動疑念は失敗場面のみ内的安定的帰属と関連することが示された。共分散構造分析の結果,(a)適応的完全主義が強いほど,対人領域における成功に対して内的安定的帰属をしやすく,ポジティブ感情が強まること,(b)不適応的完全主義が強いほど,対人領域における失敗に対して内的安定的帰属をしやすく,抑うつが強まることが示された。最後に,完全主義が抑うつに至る認知プロセスについて介入方法も交えて議論した。
著者
山口 正二 原野 広太郎 沢崎 達夫
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.2-10, 1982-09-30

本研究は,自己強化基準や報酬量の自己決定を基礎とするいわゆる自己強化理論をさらに一歩進めて,誘因としてのゲーム行動を自ら行なうと,その行動自体がある行動試行期には強化因となって,次の行動を駆動する働きをするようになるという内発的強化説を検証することを目的とした。そこで,幼児のゲーム行動において,(1)被験児の行動をすべて子どもに委ねる内発的強化群,(2)被験児の行動に応じて予め外的に決定した基準に基づいて物質的報酬を与える外発的強化群,(3)統制群の3群を設定し,これらの条件下における幼児の自由なゲーム行動にどのような差異が見られるか検討した。最初に,各群においてスマートボール遊びに対する幼児の興味がオペラントレベルとして測定され,これを第1セッションとした。内発的強化群は第2セッションとして,1時間の制限時間丙でスマートボールのある部屋で自由に遊ぶように教示され,外発的強化群には第2セッションで強化が付与された。第3セッションは各群とも第1セッションと同じ教示と手続きで行なわれた。その結果,各群ともセッションを重ねるにつれてゲーム行動時間および試行数の増加がみられ,第3セッションにおいて,内発的強化群と外発的強化群のゲーム行動時間はほぼ等しかった。また,ゲーム行動の結果および成績が次のゲーム行動の駆動力となっているという結果は得られちかった。以上の結果より,たとえ外的強化が欠如しても,試行を重ねればゲーム行動が漸次増加することが明らかとなった。本実験で用いたスマートボールが,幼児にとって初めて経験したゲーム行動であることを考慮すれば,これはゲーム行動そのものに内在する内発的動機づけあるいは内発的強化になるものと考えられる。
著者
野澤 桂子 清水 千佳子 沢崎 達夫
出版者
山野美容芸術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、がん患者のQOLを向上させて治療意欲を高め、社会復帰を促進するための、「エビデンスに基づく外見関連の患者サポートプログラムの構築」を目的とする。具体的には、外見変化の実態と患者ニーズに関する数量的研究を通して基礎的なデータを収集するほか、外見のケアに関する先進国フランスの調査などを実施した。その結果をふまえて、段階的患者サポートプログラムの試案(成人患者版・思春期患児版)を作成した。最終年度には、プログラムをさらに改良し発展させるために必要な有用性の検証と普及に向けた研究にも着手した。
著者
沢崎 達夫
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-12, 2006

これまでに作成されたいくつかのアサーション尺度はいずれもアサーションが攻撃性と高い相関を示すことを報告している。このことを言語的攻撃性を測定する尺度を用いて再度検討することが本研究の第1の目的である。第2の目的はアサーションが自尊感情や自信と関連するというこれまでの見解を自己受容測定尺度を用いて確認しようとすることである。青年期女子134名を調査対象とし、青年用アサーション尺度、自己受容尺度、日本版BAQの言語的攻撃性尺度の3尺度を実施した。その結果、アサーションと攻撃性の間には.70の高い相関が見られ、アサーションの得点で低、中、高の3群に分けたときも、明確に3群間で有意な差が見られた。このことから、アサーションと攻撃性に共通の要因がかかわっていることが示唆された。また、アサーションと自己受容の間には.40の相関が見られ、各領域との間にも有意な相関が見られたので、アサーティブな人ほど自己受容的であることが示唆されたと言える。