著者
須賀 潮美 須之部 友基
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.137-140, 2003

Abstract The habitat utilization by <I>Halichoeres tenuispinni</I>s and <I>Stethojulis in-terrupta terina</I> (Labridae) on a rocky reef at Izu Ocean Park, the east coast of Izu Peninsula, Japan is described. A total of 17 labrid species was observed by monthly observations from August, 2000 to August, 2001. <I>H. tenuispinnis</I> and <I>S. i. terina</I> were abundant, comprising 54% and 23% of the 3, 464 labrid sightings, re-spectively. Both species occurred equally over areas of boulders, rocky flat, rocky slope, rocky-sand and sand. However, observations on feeding behavior revealed significant differences between the species in their utilization of microhabitats on each bottom condition.
著者
須之部 友基 国吉 久人 坂井 陽一
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

単系統群を形成するハゼ科ベニハゼ属・イレズミハゼ属を用いて, 一夫一妻,一夫多妻を示す種について,繁殖行動への関与が知られるアルギニンバソトシン(VT)およびイソトシン (IT) の上流域を種間で比較し, 配偶システムとの関連を探索した. 配偶システムは5種で一夫一妻, 7種で一夫多妻であった.一夫一妻3種, 一夫多妻2種について, VT遺伝子及びIT遺伝子上流域の塩基配列を決定した.配偶システムと関連は見られなかったが,雌雄異体のカスリモヨウベニハゼと雌雄同体の他種の間に塩基配列の変異が認められた.これはVTが性転換に関係した転写調節機構を有している可能性を示唆している.
著者
川瀬 裕司 須之部 友基
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

海水温の上昇が沿岸性魚類の繁殖に及ぼす影響を解明するため,過去の繁殖記録の集約と現 在の繁殖状況のモニタリングを各地で行った.八丈島からはスズメダイ科7 属23 種の繁殖が 確認され,多くの種では春から秋にかけて繁殖行動が観察された.繁殖終了時の水温は繁殖開 始時より高く,繁殖の継続期間は水温以外の要因によって決定されていることが示唆された. 一方,水温が低くなる秋以降を中心に繁殖する種や,水温条件によってはほぼ年間を通して繁 殖する種も確認された.
著者
風呂田 利夫 須之部 友基 有田 茂生
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-23, 2002-06-30
被引用文献数
2

東京湾ならびにその近隣の干潟において, ウミニナ科ならびにキバウミニナ科に属する腹足類の地域個体群がホソウミニナを除いて消滅しつつある。埋め立てにより閉鎖状態で孤立化して存在する東京湾奥部の谷津干潟には, ウミニナ科のウミニナBatillaria multiformisとホソウミニナB. cumingiが生息する。この干潟でのウミニナ類の個体群調査結果から, ホソウミニナは新規加入による個体群の急激な増加傾向が認められたが, ウミニナは長年にわたり老齢個体がわずかに残るのみで, 絶滅が危惧される。ウミニナを水槽飼育したところ卵鞘を生産し, その中からプランクトン幼生が孵化した。谷津干潟は干潮時にはほぼ前面が干出するため, 干潟で孵化したウミニナのプランクトン幼生は東京湾水中に移送されると考えられる。東京湾ではウミニナの生息地である干潟は埋立により孤立的にしか残っておらず, また幼生が放出される夏期は底層の貧酸素化が著しい。したがって, 東京湾水に移送された幼生が干潟に回帰し着底できる可能性は低く, このことがウミニナの新規加入を抑制していると推察される。これに対して, 直達発生により親の生息場に直接加入できるホソウミニナ(Adachi & Wada, 1997)では, 親個体群が形成された後は同所的再生産により個体群は比較的容易に継続もしくは拡大されると推察される。これらのことは, 孤立化した干潟におけるウミニナ類の個体群維持において, プランクトン発生は不利に, 直達発生は有利に機能する可能性が高いことを示唆している。